第75回毎日映画コンクールの表彰式が、2月17日に東京・めぐろパーシモンホールで開催された。
日本映画大賞には『MOTHER マザー』が選ばれ、受賞した大森立嗣監督は「内容的に厳しいストーリーなので、プロデューサーからは受賞は難しいだろうとも言われていました。それがこのような賞をいただけたことは感慨深いです。大きな賞をいただけとても光栄です。これまでの先輩たちにこれで追いつけたというわけではないですが、少しでも近づけるように頑張っていければと思います」と受賞の驚きと喜びを語った。
受賞式に駆け付けた、今作で周平を演じた奥平大兼は「初めての演技で何をどうすればいいのか分からないなかだったのですが、大森監督から“その時に感じたことを大切にして出す”ということを大切にしていました」と初の映画・演技となった今作の思い出を語った。
また、日本映画優秀賞・男優主演賞・撮影賞・録音賞の最多4冠を達成した『アンダードッグ』。武正晴監督は「丁度1年前、コロナの緊張感も出てきた中で最後のシーンを撮影しました。その中でこうして1年経って無事公開され、こうしてスタッフとキャストと再会できることは本当に幸運だと思います」と映画公開と受賞の喜びを語った。
スポニチグランプリ新人賞、女性部門は『37セカンズ』から佳山明が受賞、男性部門には『許された子どもたち』から上村侑が受賞。
佳山明は「大変名誉ある賞をいただけ大変光栄に思います。この作品を作るにあたって本当にたくさんの方に支えていただけ、その作品を多くの方に応援していただけました。改めまして感謝申し上げます」と受賞の喜びと感謝を述べた。
プロデューサーの山口晋は「プロデューサーという立場からは彼女の負担が大きいのではないかと不安もありましたが、明さんの声の中に強さを感じお願いすることにしました」と佳山明の持つ強さ・素晴らしさを述べた。
上村侑は「夢に見た景色に立っているのが嬉しいです。この作品は1年間という長い期間かけて撮影された作品で時には向き合うのが嫌になることもありましたが、たくさんの人に支えられたおかげで役の重みに潰されることなく演じることができました」と撮影時の思い、感謝を語った。
上村侑は「夢に見た景色に立っているのが嬉しいです。この作品は1年間という長い期間かけて撮影された作品で時には向き合うのが嫌になることもありましたが、たくさんの人に支えられたおかげで役の重みに潰されることなく演じることができました」と撮影時の思い、感謝を語った。
会場に来ていた内藤瑛亮監督は「セリフが少ない役なので彼の瞳に力を感じ掛けたところがあります。この作品は虐めをテーマとして選んでいて、撮影前にワークショップにも彼と参加したのですが、その中で誰もが陥る可能性のある加害者の可能性を深く理解していると感じたので作品を託すことができると思いました」と上村に託した思いを語った。
アニメーション映画賞を受賞した『魔女見習いをさがして』からは、佐藤順一・鎌谷悠の両監督が登壇。佐藤監督は「キッズコンテンツは大人になれば忘れてしまうものですが、20年経って賞をいただけたということは20年前からの取り組みを含めて評価していただけ励みになります」と今までの取り組みも含めて支持されたことへの感謝を述べた。佐藤監督とともに監督した鎌谷監督からは「20年前の作品を引き継いでということで不安もありましたが、私たちの出した答えが多くの人に受け入れてもらえたということで自信を持つことができました」とプレッシャーもある中で支持されたことへの喜びを語った。
大藤信郎賞は『音楽』が受賞。岩井澤健治監督は「アニメーションは長編になるとなかなか多様性・挑戦的な作品が生まれづらい分野ですが、7年半という長い時間をかけても諦めずに続けてよかったなと思います」とこの挑戦が評価されたことへの思いを語った。
ドキュメンタリー映画賞は『れいわ一揆』が受賞。原一男監督は「この作品はチームワークで作ったなという思いを強く持っています。制作スタッフはもちろんこのコロナ禍で映画館の方が一生懸命に上映していただいた関係者のみなさま、そのことも含めチームワークで支えられた作品になりました」と作品を支えてくれた多くの方への感謝の気持ちを語った。
脚本賞は『一度も撃ってません』の丸山昇一が受賞。「阪本順治監督からある時、石橋蓮司さんを主演にした何かありませんかといただいた時に言ったアイデアが形になりました。これだけの名優のみなさんとともに作品を制作でき、そこまでの高みに連れて行っていただいた坂本監督。みなさんにはもちろん、いつも支えてくれている妻に感謝しています」と家族への感謝とともに喜びを語った。
監督賞は『朝が来る』の河瀬直美監督が受賞。「このコロナの中で行き場を失ってしまう作品も多い中で上映され、この喜びをみなさんと共有できたことをとても嬉しく思います」と映画公開と受賞の喜びを述べた。
特別賞を受賞したのは大林宣彦監督の妻であり、公私ともに支えてきたプロデューサーの大林恭子。娘の大林千茱萸とともに登壇し、「戦争という悲劇にも負けず、この毎日映画コンクールを立ち上げられた強い映画への思いを持たれた先人たちに敬意と尊敬を抱いています。大林宣彦もこの会場の最前列にいると思います。いままで大林作品を支えてくれたみなさんに改めて感謝を申し上げます。このコンクールが100年、200年と続いて、映画の力が未来の平和のバトンの一つとなるように大林も私も願っています」と映画と平和に対しての思いを語った。
男優主演賞は『アンダードッグ』の森山未來が受賞。「4部門に選んでいただいたこと、嬉しく思います。僕の演じた末永晃はいろんな出会いがあってもう一度自分を立ち上げていくという役だと感じています。今は自分ではどうしようもないことで大変な時期を過ごされている方もいると思います。そういう方たちの後押しになる作品になればいいなと思っています」と作品に対する思いを語った。
女優主演賞は『喜劇 愛妻物語』の水川あさみが受賞。「映画が公開し、お客様の手に渡ると旅立ってしまったと寂しく思うこともあるんです。今回このような賞をいただけ、チカという役は忘れられない特別な役になりました」と役への思いを語った。
女優助演賞は『朝が来る』の蒔田彩珠が受賞。男優助演賞は『罪の声』の宇野祥平が受賞。蒔田は「この作品が公開されるのか不安に思う日もありましたが、公開され、賞もいただけて本当に嬉しく思います」、宇野は「本当にいろんな方々のおかげで私が演じた総一郎を作り上げられたと思います。今までいろんな方と出会い助けられここまで来られました。そのことに改めて感謝を申し上げたいと思います」と二人とも受賞の喜びを語った。
田中絹代賞は梶芽衣子が受賞。「これだけ光栄に思った賞はございません。日活の門をくぐって今日から俳優としてやるんだなと実感した時に映画を観あさっていた中で田中絹代先生の『流れる』に出会って、こういう芝居ができるまで女優をやっていたいと思いました。私の心の中の宝物の一つです。夢じゃないのよねと改めて喜びを噛みしめています」とこの賞に対しての思いを語った。
第75回毎日映画コンクール 受賞作品一覧
日本映画大賞 『MOTHER マザー』(大森立嗣監督)
日本映画優秀賞 『アンダードッグ』(武正晴監督)
外国映画ベストワン賞 『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)
男優主演賞 森山未來『アンダードッグ』
女優主演賞 水川あさみ『喜劇 愛妻物語』
男優助演賞 宇野祥平『罪の声』
女優助演賞 蒔田彩珠『朝が来る』
スポニチグランプリ新人賞(男性) 上村侑『許された子どもたち』
スポニチグランプリ新人賞(女性) 佳山明『37セカンズ』
監督賞 河瀬直美『朝が来る』
脚本賞 丸山昇一『一度も撃ってません』
撮影賞 西村博光『アンダードッグ』
美術賞 磯見俊裕、露木恵美子『ばるぼら』
音楽賞 渋谷慶一郎『ミッドナイトスワン』
録音賞 藤丸和徳、瀬川徹夫『アンダードッグ』
アニメーション映画賞 『魔女見習いをさがして』(佐藤順一、鎌谷悠監督)
大藤信郎賞 『音楽』(岩井澤健治監督)
ドキュメンタリー映画賞 『れいわ一揆』(原一男監督)
TSUTAYAプレミアム映画ファン賞・日本映画部門 『ミッドナイトスワン』
TSUTAYAプレミアム映画ファン賞・外国映画部門 『TENET テネット』
田中絹代賞 梶芽衣子
特別賞 大林恭子(映画プロデューサー)
(敬称略)