Rooftop ルーフトップ

NEWS

トップニュースプロパガンダが無邪気に明らかにする核の恐怖。伝説の「反核」ドキュメンタリー映画『アトミック・カフェ』が最新4Kレストア版で国内初ブルーレイ発売

プロパガンダが無邪気に明らかにする核の恐怖。伝説の「反核」ドキュメンタリー映画『アトミック・カフェ』が最新4Kレストア版で国内初ブルーレイ発売

2025.09.18

▲米国軍による核兵器実験の様子(『アトミック・カフェ』より)
 
1982年製作の米ドキュメンタリー映画『アトミック・カフェ』のブルーレイとDVDが9月26日(金)に発売される。
世論はどうやって作られるのか? プロパガンダが捻じ曲げる核兵器と戦争と世界の真実。全世界に衝撃を与えた黙示録ドキュメンタリーの金字塔が、最新リマスターで蘇る。
 

sub7.jpg

本作『アトミック・カフェ』は、1940年~50年代に米国政府・米国軍が製作した核兵器や戦争などにまつわる広報映画やニュースフィルムなどのフッテージ素材のみをコラージュして構成した、アメリカの戦後史をオリジナリティ溢れる手法と独自の視点で辿る革新的エディトリアル・ドキュメンタリー映画。
『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)でアカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画作家、マイケル・ムーアへも多大な影響を与えた作品としても知られている。
 
『アトミック・カフェ』というすごい映画を作ったケヴィン・ラファティに、映画の作り方を教えてもらった。彼なしでは自分の出世作は世に出ていなかっただろう。
──マイケル・ムーア 映画監督/『ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』(「アホでマヌケなアメリカ白人」柏書房刊より要約)
 

sub6.jpg

▲ビキニ環礁で行なわれた「クロスロード水爆実験」。島民たちは強制的に移住させられた。(『アトミック・カフェ』より)

トリニティ実験、そして1945年8月6日広島、8月9日長崎へ

現在においてもアメリカでは、原子爆弾は戦争を終結させた正義の兵器として認知されている。
その源流は何か? ビキニ環礁での水爆実験、東西冷戦、反共ヒステリー、ローゼンバーグ夫妻の冤罪事件、第五福竜丸事件、朝鮮戦争の勃発、核戦争の恐怖……。
ラジオ・テレビなど様々なメディアから流れるプロパガンダが、真実を大きく捻じ曲げ、覆い隠す。
 
本作の監督ケヴィン・ラファティ、ジェイン・ローダー、ピアース・ラファティは、米国国防省の倉庫や国立公文書館に保管されていた政府広報フィルムを5年もの歳月を費やして調査し、核爆弾に関するあらゆるフィルムを発掘。一切の説明ナレーションを廃し、フッテージを繋ぎ合わせて一つの作品を作り上げた。
 

sub8.jpg

▲広島に原爆を投下したB29「エノラ・ゲイ」と機長ポール・ティベッツ。ティベッツはインタビューで「投下地を広島に選んだ理由を、合衆国政府が爆発の影響と威力を研究したかったから」だと語る。(『アトミック・カフェ』より)
 
劇中に登場するのは、トリニティ実験の様子、広島と長崎への原爆投下を記録したフィルム、B29「エノラ・ゲイ」機長のインタビュー、当時のラジオ音声、トルーマン大統領の勝利演説、レッドパージ、核の安全性や放射能被害を低く国民に見積らせる広報フィルム、子どもたちへの教育アニメ、主婦向けの家庭向け核シェルターのコマーシャル、核をモチーフにした能天気なポップソングなどなど。その内容と数は膨大かつ多岐にわたる。
 
政府が核兵器や放射能、そして仮想敵国について国民にどのようなイメージと恐怖を植え付け、それがいかに政府にとって都合が良く、曖昧ででたらめだったか。第二次世界大戦後から現在まで脈々と続く米国政府のプロパガンダ戦略を、ブラックなユーモアたっぷりにシニカルに暴き出していく問題作だ。
 

sub1.jpg

▲家庭用シェルター:冷戦時代に主婦層をターゲットとした避難用核シェルターのコマーシャルが制作された。
 

sub2.jpg

▲教育用教材のキャラクター:「原子爆弾が落ちてきたら、“さっと隠れるんだよ(Duck and Cover)!”」とカメの「バート」が子どもたちに教える。
 

sub4.jpg

▲学校での避難訓練の様子:核戦争に備え、政府主導による避難訓練が実施された。
 

sub3.jpg

▲原子爆弾をモチーフにした「アトミック・カクテル」を嗜む人たち
 
日本でも本国公開の翌83年に公開され話題となった。本作の影響を受け、「音楽を通して反核・反原発を訴える」をテーマに「アトミックカフェ・フェスティバル」が1984年に日比谷野外大音楽堂で開催。数々のビッグ・アーティストが出演し、伝説的なイベントとなった。
一時期開催が途絶えたが、2011年3月11日の東日本大震災を受け、放射能を考えるきっかけとして「フジロック・フェスティバル」で復活。現在に至るまでイベントが開催されているほか、本作品の上映会などが定期的に催されている。
 

sub5.jpg

▲B29機内から見た広島に投下された原子爆弾の様子(『アトミック・カフェ』より)

商品情報

アトミック・カフェ

【製品情報】
ブルーレイ|品番:IVBD-1336 / 価格:5,800円+税
DVD|品番:IVCF-5910 / 価格:4,800円+税
【特典】作品解説ブックレット封入/オリジナル予告編収録
【発売日】2025年9月26日(金)
【発売】株式会社アイ・ヴィー・シー

amazon

【スタッフ】監督・製作:ケヴィン・ラファティ、ジェイン・ローダー、ピアース・ラファティ
【データ】1982年 / アメリカ作品 / モノクロ・カラー / 本編87分 / 原題:THE ATOMIC CAFE
【受賞】1983年ボストン映画批評家協会賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞 / 1983年英国アカデミー賞フラハティ・ドキュメンタリー賞ノミネート
©︎ 2018 Archives Project, Inc. All Rights Reserved. ©︎ 2025 Kino Lorber, Inc. All Rights Reserved.

このアーティストの関連記事

RANKINGアクセスランキング

データを取得できませんでした

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻