1970年代、日本のフォーク、ロックの黎明期を支え、後のJ-POPの発展に大きな影響を与えたレーベル「ベルウッド・レコード」。
キングレコードの社員だった三浦光紀がニューミュージックを手掛けるため、初のメジャー系独立レーベルとして立ち上げ、「はっぴいえんど」「細野晴臣」「大滝詠一」「高田渡」等の数々の名盤を世に送り出してきた。
そんなベルウッド・レコードの1975年以降の秘蔵タイトルとキングレコード品番の関連作品全20タイトルが今回ストリーミング初解禁となる。
ファンの間でも名盤と名高い佐藤博の『青空』や原茂の『オレンジ色の朝』、細野晴臣と大滝詠一が作品に参加した、知る人ぞ知る70年代のバンド、ホールド・アップの『島まで10マイル』等、10タイトルが本日より配信リリースされた。
12月4日(水)には第2弾タイトルとして、友川かずきや三上寛の作品、またはっぴいえんどの1st“ゆでめん”と同年に発表され、日本語ロックの歴史的傑作とも称される『切狂言』等、10タイトルがリリースする予定だ。
また、今回の配信解禁に併せて佐藤博からのコメントに加え、音楽メディア「SOUND FUJI」にて、音楽評論家・柴崎祐二による日本のフォーク/ロックの歴史を辿る曽我部恵一へのインタビューpart1が公開された。
曽我部恵一がセレクトした日本のフォーク/ロックを堪能するオリジナルプレイリストも必見の内容となっている。
撮影:松永樹
佐藤博コメント
「あの嬉しさ」
『青空』は当時の仲間たちにそれぞれ編曲してもらった僕の初めてのアルバムで、一曲ごとに色が違うビックリ箱になったのが面白い。
ともかくみんなに感謝だったけど、特に思い出すのは坂本龍一。朝比奈尚行の『自動座』に出演したときの生演奏で会ったのが最初だけど、僕のアルバムを作ることになったミーティングで、あれもこれも「オレやる!オレやる」と編曲を引き受けてくれたのだ。
そしてあがってきた編曲のスゴさ! 自分の歌なのに、坂本からキューを貰わないとどこで歌い出せばいいのか分からなかった(笑)
ただ、当時二人とも大好きだった番組のテーマ風にアレンジしたりもして、坂本は僕を喜ばせてくれたのだった。
ありがとう。(佐藤GWAN博)
2024年11月20日(水)配信作品紹介
佐藤博 -『青空』 1976年発売
収録曲:①かんしゃく玉 ②たんぽぽのお酒 ③忘れ物 ④かま猫のブルース ⑤時間がありすぎて
⑥ムーンライトジャグブルース ⑦青空 ⑧南風 ⑨ことば ⑩あんた ⑪3月31日 ⑫わたしの自転車
ガン(GWAN)さんこと、佐藤博のファーストアルバム。
坂本龍一がプレイヤーの他、5曲(③⑦⑨⑪⑫)編曲を担当。
細野晴臣、小原礼、村松邦男、斉藤ノブ、吉田健といった非常に豪華な面々がプレイヤーとして作品に彩りを添える。
シティポップ文脈としても輝きを放つ名盤が待望のストリーミング解禁。
ホールド・アップ -『島まで10マイル』1978年発売
収録曲:①パイナップル・ベイビー ②キャプテン・パラダイス ③オーガスト・ガール ④東京“あーぱー"ジルバ ⑤横浜ストローリング ⑥沖を渡る夏 ⑦コラソンDEデイト ⑧今夜はちょっと ⑨ローリング・プリンセス ⑩島まで10マイル
細野晴臣が②⑤に楽器で参加、⑦⑧は編曲、③に大滝詠一がコーラスで参加した知られざる名盤。
後に伝説的なフュージョンバンド パラシュートや工藤静香や中山美穂への提供等作詞家として活躍する安藤芳彦や、
チャクラなどで活動した横沢龍太郎らが在籍した職人集団のデビュー・アルバム。
Dr.バザーズ・オリジナル・サヴァンナ・バンドを思わせるトロピカルサウンドに実にポップな実験性を加えた、音楽ファンに今聴いて欲しい一枚。
原茂 -『オレンジ色の朝』1978年発売
収録曲:①夜の旅人 ②いつの日から ③私の家 ④ひとりごと ⑤ON THE BEACH ⑥夏の雨
⑦オレンジ色の朝 ⑧Nice Girl ⑨秋の陽ざしの中に
日本のフォーク、ロック黎明期の伝説的なグループ六文銭の元ギタリスト原茂の初のソロ・アルバム。
グループ時代とは異なり、鈴木茂、林立夫、村上“ポンタ”秀一、坂本龍一、浜口茂外也、ブレッド&バターが参加した、シティポップ色色濃いニューミュージックが展開されている名盤。
三橋誠(シバ)-『夜のこちら』1977年発売
収録曲:①スターダストソング ②いつでもブルース ③家路 ④グッドナイトブルース ⑤武蔵野回想
⑥埃風 ⑦星の明日 ⑧深い夜 ⑨バイバイブルース ⑩古典古典 ⑪四日目に見た夢 ⑫思い出
高田渡を中心としたフォークグループ“武蔵野タンポポ団”の一員として名を馳せたシバこと三橋誠の3rdアルバム。
全編弾き語りというシンプルな構成に漂う、ブルージーな音像が唯一無二の世界観を作り上げている。ジャケットは漫画家としての顔も持つ本人のデザインによるもの。
加川良(with 村上律) -『加川良、ウイズ、村上律。(A LIVE.)』1977年発売
収録曲:①北風によせて ②駒沢あたりで ③コスモス ④偶成 ⑤今晩はお月さん
⑥オレンジ・キャラバン ⑦祈り ⑧ばびぶぶべべ ⑨女の証し ⑩ゴスペル配信
フォークシンガーの加川良とスティールギター・バンジョーの名手村上律によるアコースティックスタジオライブアルバム。
加川良の特徴的な力強いボーカルにスティールギターが気持ちよく絡み、まるでライブを観ているような臨場感に満ち溢れた作品。
となりきんじょ -『ロマンティックマシーン』 1976年発売
収録曲:①生きているから ②六月の風 ③淡い恋 ④雨だれ ⑤青い眼の木馬 ⑥別離の足音
⑦原付バイクに乗って ⑧椅子 ⑨人形の夢 ⑩ロマンティックマシーン ⑪あやつり人形 ⑫君の夢の中に
毛塚昇、寺内仁実からなる宇都宮出身のフォークデュオ。70年代のポップ・シーンを象徴するような “フォーク歌謡” が魅力の作品。六文銭の初期メンバーであり、吉田拓郎やかぐや姫のバックギタリストとして活躍した石川鷹彦が全曲で編曲を担当。
V.A.-『jam(ジャム第10回コンサート jam・峠ライブ)』1975年発売
収録曲:①峠 ②月よう日のブルース ③すずめの眠るところ ④雨ふりの木曜日 ⑤漁場抒情
⑥とても長い橋を僕は ⑦日向のワルツ ⑧かま猫のブルース ⑨25年目のおっぱい
⑩忘れ物 ⑪あんた
[参加アーティスト]
①②朝比奈逸人 ③④守川妙子 ⑤⑥大津彰 ⑦朝比奈尚行 ⑧吉田日出子 ⑨中川五郎 ⑩⑪佐藤博
中川五郎、大津彰、佐藤博、吉田日出子他による音楽集団jamの1975年に中野文化センターで行なわれたコンサートを収録したライブアルバム。純粋に音楽を楽しむ会場の温かい雰囲気が印象的な、Jamが唯一残した活動の記録。
小原初美 -『優女…女ひとり』1976年発売
収録曲:①夜明けまで ②東京感情線 ③恋人達 ④たとえば ⑤白い回転木馬 ⑥ひとり寝づくし
⑦雨の坂道あかい傘 ⑧毬鞠つき歌 ⑨優女 ⑩比叡おろし
NHK伝説の音楽番組「ステージ101」で多くの才能あるアーティストを輩出した、ダンサー&シンガー集団「ヤング101」の一員として活躍した小原初美のソロアルバム。ブレッド&バターの岩沢幸矢や吉田拓郎が作曲で参加。
岩沢氏が編曲を手掛けた①はライトメロウな心地良いシティーミュージック。
『ザ・ルーキイズ』 - ザ・ルーキイズ 1977年発売
収録曲:①バスケットシューズ・ロックンロール ②彼女に会いたい ③君と二人で
④ブルースエードシューズ ⑤いつもの汽車にのって ⑥あの娘はゴキゲン ⑦あの娘はアイドル
⑧ジョニー・B・グッド ⑨ロックンロール・ミュージック ⑩わかってるはずさ ⑪心のきずな
⑫グッド・ゴーリ、ミス・モーリィ
高滋光、御園生涼彦などからなるリバプール・サウンド風4人組バンド、ザ・ルーキイズのロックンロール愛に溢れたデビュー作。タートルズの67年のヒット曲「あの娘はアイドル」のカヴァーを収録。
『ONE WAY TICKET』 - ザ・ルーキイズ 1978年発売
収録曲:①ハローキャンディー ②デビルにくちづけ ③白いカルマンギヤ ④最後のワイン
⑤チープギター ⑥片道乗車券 ⑦ロックンロール・ロックンロール ⑧アンナ
⑨ボニーモロニー ⑩あの娘にくびったけ ⑪千匹の羊 ⑫ハッピー・デイズ
ザ・ルーキイズ 78年の2ndアルバム。大木トオルが作曲、舘ひろしが作詞で参加。よりポップに進化し、アメリカン・ロックからの影響と50'sロックンロールへのリスペクトが垣間見えるバラエティに富んだ作品。
2024年12月4日(水)配信予定作品紹介
クニ河内とかれのともだち -『切狂言』1970年発売
収録曲:①切狂言(芝居小屋の名役者)②人間主体の経営と工事 ③タイム・マシーン ④おまえの世界へ ⑤恋愛墓地 ⑥女の教室 ⑦男から女を見た科学的調査
内田裕也がプロデュースし70年代アメリカのレーベルと契約するなど大きな評価を得たフラワートラベリンバンドの、ジョー山中と石間秀機と日本プログレの草分け的存在とされるハプニングス・フォーで、80年代以降中島みゆきやTHE ALFEE等々数多くのプロデュースで活躍したクニ河内チト河内による伝説のバンド。
はっぴいえんどの1st “ゆでめん”と同年に発表された日本語ロックの歴史的名盤。
友川かずき-『桜の国の散る中を』1980年発売
収録曲:①犬 ②闇 ③点 ④問うなれば ⑤赤子の限界 ⑥おどの独白 ⑦口から木綿 ⑧囚われのうた ⑨桜の国の散る中を(会田哲士君の霊に捧ぐ)
孤高のフォーク・シンガー友川かずきが1980年に発表した6th。
魂の叫びのような歌唱と圧倒的な演奏を奏でる稀有な存在で、『戦場のメリークリスマス』のヨノイ大尉役を最初にオファーされた人物として知られる(代役は坂本龍一)。本作品の録音には石塚俊明(頭脳警察/Drs)が編曲家として全曲参加。10分を超える表題曲の『桜の国の散る中を(会田哲士君の霊に捧ぐ)』は必聴。
友川かずき -『海静か、魂は病み』1981年発売
収録曲:①彼方 ②神様になれ ③一切合財世も末だ ④殺人と青天井 ⑤椿説丹下左膳 ⑥山頭火よ ⑦なあ海 ⑧餅紅の花 ⑨木々は春 ⑩苦海さあ
『桜の国の散る中を』と共に友川かずきの80年代を代表する傑作アルバムとして知られる本作。
弾き語りからバンドサウンドまで、軽快なドラムに絡むピアノのバッキングが印象的な③などバラエティ豊かな作風。録音・編曲は前作と同じく、頭脳警察・石塚俊明氏。
友川かずき -『犬/秋田コンサートライブ』1979年発売
収録曲:①サーカス ②寂滅 ③死にぞこないの唄 ④どじょっこふなっこ ⑤こんどの肉はてごわいぞ ⑥あいうえお狂歌 ⑦湖上 ⑧だがづぐ ⑨生きてるって言ってみろ ⑩明るい夜 ⑪坊や
地元秋田で行なわれたライブ盤(79年3月録音)。バックを盟友、頭脳警察のトシ率いるピップエレキバンドが担当。
秋田弁でのMCなど地元でのリラックスした雰囲気が良く伝わる、友川の絶唱と激しいギターに心奪われる一枚。
代表曲『死にぞこないの唄』を収録。
三上寛 -『負ける時もあるだろう』1978年発売
収録曲:①二度までのせりふ ②ストリッパーマン ③ふしだらの傾向 ④リゴー遺稿集より ⑤街で ⑥海男 ⑦負ける時もあるだろう
シンガー、俳優、詩人と幅広い顔を持つ、三上寛の最高傑作「負ける時もあるだろう」が配信解禁。
死と隣り合わせの美しい楽曲の数々は文学的かつ叙情性に溢れ、70年代音楽史に残る名盤。作品のラストを飾る表題曲は必聴。
クニ河内 -『愛はまだ氷りついたまま』1977年発売
収録曲:①いつしか人は ②君は気まま ③ひとり展覧会 ④ハテナの朝 ⑤あなたが欲しい ⑥愛はまだ氷りついたまま ⑦心に雨を ⑧時計 ⑨愛の住み家 ⑩夜の窓はあけたくない
ギターレスのGSバンドとして60年代に異彩を放ったハプニングス・フォーを結成し、その後布施明や西城秀樹など錚々たる歌手への楽曲提供などで活躍したクニ河内のソロアルバム。元フラワー・トラヴェリン・バンド石間秀機の怪しげなギターが冴えわたりながらも歌モノポップスにまとまっている聴きごたえのある一枚。
V.A -『WHO'S WHO IN ROCK'N'ROLL 春一番 '76』1976年発売
収録曲:①畑で一服 ②もうこの街じゃ ③憧れの町 ④うちわもめ~スウィート・アイスクリーム・サンデ ⑤THE WEIGHT ⑥そんなに言うのなら ⑦女の性 ⑧くそくらえ ⑨DIAMONDHEAD
[参加アーティスト] ①②③サザン・ブリード ④センチメンタル・シティ・ロマンス ⑤ごまのはえ・アゲイン ⑦⑧⑨メリケン・ブーツ
1971年から半世紀以上に渡って続き、2024年も奇跡的に開催されたフォーク/ロックを中心とした伝説の野外イベント『春一番 コンサート』。こちらの76年のコンサートを記録したライブ盤が配信解禁。
1度も解散をしていない日本最古のロックバンドとされるセンチ・メンタルシティ・ロマンスのフレッシュな演奏など、当時の空気感を存分に味わうことができる。
黒坂正文 -『茂道 メッセージ!』1976年発売
収録曲:①おれの手で ②小さな花の歌 ③明日のある街~亀戸9丁目 ④広場とぼくらと青空と ⑤げんげんばらばら ⑥茂道 ⑦あの子は愛していただろう ⑧おじさん ⑨もう二度と ⑩またいつか ⑪We Can Stand
コカリナ(木製のコカリナ)を日本に紹介した人物としても知られる黒坂正文のデビュー作。
1976年に二日間にわたり、高田馬場にて実況録音されたライブ盤で臨場感あふれる作品。
黒坂正文 -『なんじゃこりゃ -黒坂正文セカンドアルバム-』1978年発売
収録曲:①ガタギシ鉄道 ②おーい雲よ ③私の街に ④せり舟の唄 ⑤ガタギシ人生
⑥なんじゃこりゃ ⑦へのちから ⑧どうしようもない母親のうた ⑨けんかばっかりしているお父ちゃんとお母ちゃんの話 ⑩なぜ私は
フォークシンガー黒坂正文の2ndアルバム。コミカルかつ軽快な楽曲からメッセージ性の強いバラードまで、彩りを添えているベルウッド・オーケストラのアンサンブルも心地よいバラエティに富んだ一枚。
スカイ・ドッグ・ブルース・バンド -『北27西4 札幌へ来てから』1978年発売
収録曲:①旅から帰った夜 ②ふるさと ③夜汽車 ④四月の風 ⑤いっぱいのみ屋の唄 ⑥札幌へ来てから ⑦高円寺で雨やどり ⑧だけどそんな時は ⑨春嵐 ⑩国道8号線 ⑪悪酔い
札幌発のシカゴ・ブルース・バンドとしてデビューしたスカイ・ドッグブルースバンドの1st(URC・1976年)に続く2作目。
カバーなしの全曲オリジナルの構成で、重心の低いリズム隊が心地よい日本語ブルースロックの良作。
<プレイリスト>曽我部恵一セレクト 日本のフォーク・ロックの世界を堪能する“ベルウッド・レコード”