世界的作家・安部公房が撮影した本格写真集『安部公房写真集』が、本日8月9日(金)に株式会社新潮社より刊行された。
映画『箱男』(石井岳龍監督作品)公開間近、旧作の文庫化も続く日本最大の前衛作家は、自宅に暗室を作り、いつもカメラと共に行動していた。〈作家の余技〉を超えた写真群に切り取られたのは、都市、廃墟、雑踏、寂寥、孤独、自由……。
『箱男』『砂の女』『燃えつきた地図』『壁』『他人の顔』『方舟さくら丸』……世界を挑発し、前衛のトップランナーとして走り続けた作家、安部公房。その傍らには、いつもカメラがあった。
彼は、カメラという「箱」の中から、何を見ていたのか。本書は、小説に取り入れられたカットをはじめ、都市に生きる孤独や不安を撮った多くの作品群から厳選、現代写真家としての足跡を明らかにする、ファン必携、そして写真史の新たな扉を開く傑作写真集。生誕100年記念出版。
安部公房の全集や新潮文庫版を手掛け、その先鋭的なデザイン知られるブックデザイナー近藤一弥が、安部公房が遺したおよそ1万点の写真から厳選した、世界初公開作を含む約100点を収録。安部公房がインタビューに答えた「写真について」(『都市への回路』より)も併録。
【著者紹介:安部公房(アベ・コウボウ)】
©︎新潮社写真部
(1924-1993)東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。2012年、読売新聞の取材により、ノーベル文学賞受賞寸前だったことが明らかにされた。