沢田研二主演、松たか子共演の中江裕司監督最新作『土を喰らう十二ヵ月』が11月11日(金)より全国公開となる。
1978年に作家・水上勉が記した料理エッセイから、中江裕司監督が物語を紡ぎ出した本作は、人々がいつしか忘れてしまった土の匂いのする生活を思い起こさせ、人としての豊かな生き方を教えてくれる。
主演の作家ツトム役の沢田研二は、物語を凌駕する圧倒的な存在感を見せ、ヒロインの年の離れた恋人・真知子役には松たか子。料理をほおばる姿などチャーミングな魅力を十二分に発揮。
その他、火野正平、檀ふみ、西田尚美、尾美としのりら実力派俳優が脇を固め、演劇界の重鎮・奈良岡朋子も出演。
目も心も満たしてくれる旬の野菜で作る料理の数々。ほうれん草の胡麻和え、若竹煮、胡麻豆腐など、ツトムが寺で覚えた料理を具現化したのは、映画初参加となる料理研究家の土井善晴。食材は、撮影前に畑を開墾し育て収穫したものを使用するなど四季を撮るため、日本映画では1年6カ月に渡る撮影を敢行するなど“土を喰らう”本質に徹底的なこだわりが詰まっている。
自然を慈しみ、人と触れ合い、おいしいご飯を作り、誰かと食べられることに感謝する日々を送る男の姿を通して、丁寧な生き方とはどういうものか、真の豊かさとは何かを問いかける。
このたび、役柄では年の離れた恋人同士を演じる、沢田研二と松たか子によるふたりの晩酌シーンが解禁された。
▼『土を喰らう十二ヵ月』本編映像
家のツトム(沢田)は人里離れた信州の山荘で、犬のさんしょ、13年前に亡くなった妻の遺骨と共に暮らしている。畑で育てた野菜や山菜を収穫し幼少期に禅寺で習った精進料理を作る日々。食いしんぼうの担当編集者で恋人である真知子(松)が東京からやってきた。日が暮れて、皮を少し残して囲炉裏であぶった小芋で晩酌──。
静かであたたかな時間を過ごしていたが、突如、真知子の一言で、ふたりは恋人同士から、作家と編集者へと様変わりをする。
「原稿は?」「……ない」「もう締め切りよ」ツトムは頬杖をつき、「子芋さんでゆるしてくれないかな」と甘えた素振りをして見せるが、穏やかな口調ながらに真知子は、おもむろに立ち上がると、手に取ったのは他でもない原稿用紙。きっちり仕事をする真知子を目の前に、逃げ場がなく観念したツトムは思いを巡らせ万年筆を手に取ると……。
松が演じる真知子のキャラクターは、原案にはなく、脚本も手掛けた中江監督によるオリジナルキャラクターだ。中江監督は原案エッセイのあとがきの「ミセス編集局の女子連に、ひそやかな悦しみをのぞかれ、かくも、よしあしごとを書く始末になった。嗚呼」という一文を読んで真知子を作りだした。「水上さんの(他の)小説をもう一度読み直して、そこに出てくる女性たちを通じて真知子像を作り上げていきました」「(松さんは)素晴らしかったですね、沢田さんはそこにいるだけで役を成立させる役者さんですが、松さんはそういう沢田さんを細かくサポートしてシーンを作り上げてくれた。ただ脇を固めるだけでなく、瞬時に松さんが場の中心になることもある。その切り替えが見事なんです」と振り返る。
締め切り原稿の催促は、作家と編集者間でよく繰り広げられるやりとりであると想像に難くないが、穏やかな時間が流れる中、暮らす場所も年齢も離れた、一筋縄ではいかない作家ツトムと編集者・真知子の関係や多くは語らずも匂い立つ男女の機微を感じる印象的なシーンとなっている。この幸福感溢れる穏やかな時間に限りはあるものなのだろうか。
タイトルの「土を喰らう」とは、旬を喰らうこと。四季の移ろいの中で、自然が恵んでくれる食物をありがたく頂くこと、今この瞬間を大切に生きること。楽しくも厳しくもある里山の暮らしから何かを得ようとする作家ツトムとその周囲の人々の一年間の物語がここから始まろうとしている。
商品情報
映画『土を喰らう十二ヵ月』
出演:沢田研二 松たか子 西田尚美 尾美としのり 瀧川鯉八 / 檀ふみ 火野正平 奈良岡朋子
監督・脚本:中江裕司
原案:水上勉『土を喰う日々 ―わが精進十二ヵ月―』(新潮文庫刊)、『土を喰ふ日々 わが精進 十二ヶ月』(文化出版局刊)
料理:土井善晴
音楽:大友良英
製作:『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会
配給:日活
制作:オフィス・シロウズ
©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会
11月11日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座他にて全国公開
【物語】長野の山荘で暮らす作家のツトム。山の実やきのこを採り、畑で育てた野菜を自ら料理し、季節の移ろいを感じながら原稿に向き合う日々を送っている。時折、編集者で恋人の真知子が、東京から訪ねてくる。食いしん坊の真知子と旬のものを料理して一緒に食べるのは、楽しく格別な時間。悠々自適に暮らすツトムだが、13年前に亡くした妻の遺骨を墓に納められずにいる……。