唯一無二の世界観と幾重にも張り巡らされた伏線、 そして、 縺れ絡み合う因果の果てに浮かび上がる衝撃の結末。 読者を魅了してやまないミステリ作家・道尾秀介の最新長編小説『雷神』を5月26日、 新潮社より刊行。
道尾はこれまで「小説でしか味わえない魅力」「新しい読書体験」を追求されてきた。 なかでも本書で仕掛けられた“小説ならではの企み”は現時点におけるキャリアの集大成だと言う。 ミステリ評論家・千街晶之も「道尾秀介ならではの境地」と推薦のことばを。 快心の一撃、 ぜひご注目を。
「今回は物語の後半に、 ある一枚の画像が登場します。 その画像は、 密かにある真実を読者の前に提示します。 この仕掛けは、 物語自体が文章でつくられているからこそ成り立つものです。 小説は、 こうしていろいろなものを内部に取り入れることができるので、 やはり最強のエンターテインメントだと思っています。 中でも今回は、 昔の自分には絶対不可能だったと言い切れる、 自信作。 僕が理想とするミステリのかたちがいくつかあるのですが、 そのうちの一つが書けました。 」
タイトルに込めた思い、 テーマとして掲げる「神」。過去に発表した『龍神の雨』、 『風神の手』に続き、 今回は『雷神』。 なぜ「神」と名がつく作品を書き続けてきたのか、 そのタイトルに込められた意味とは。
「この世には人間が絶対に結果を計算しきれないものが無数にあり、 それらが複雑に絡み合って世界を形成しているという思いがあります。 それを「偶然」と呼ぶのか、 「運命」と呼ぶのか、 「奇跡」と呼ぶのか、 人それぞれかと思いますが、 僕はその現象を、 何か形として目に見えるものに託したくて、 誰もが一度は像を見たことがある三体の神様に託しました。 」
驚愕の声が続々
「現代に蘇った横溝正史的世界を通して、 何がひとの心に殺意を呼び込み、 何が運命をねじ曲げるのかを描ききった、 道尾秀介ならではの境地。 」 ――千街晶之さん(ミステリ評論家)
「隠し隠され、 探り探られ……。 蠢く黒雲のごとき「謎」のアラベスクから、 狙いすました雷撃が読み手を貫く。 道尾ミステリが到達した、 不条理劇の極み!」 ――宇田川拓也さん(ときわ書房 本店)
「終章のどんでん返しの先に読者を襲う哀しみ……。 あなたはそれに耐えられますか?」 ――三島政幸さん(啓文社 西条店)
「「世界が反転する」など生ぬるい。 この物語は、 読み終えたとき、 世界が砕け散る。 神も仏も、 身も世もなく、 奈落の底に叩き落とされる快感をあなたに。 」 ――新井久幸(新潮社出版部・副部長)
商品情報
道尾秀介『雷神』
【発売日】2021年5月26日
【造本】四六判(384ページ)
【本体定価】1,870円(税込)
【ISBN】978-410-300337-3
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人は、 「秘密」抱えていた。 それは、 一人娘の夕実には絶対に明かすことができないものだった。 ある日、 家の電話が鳴る。 声の主は幸人に、 家族の平穏を揺るがす衝撃の事実を伝える……。 運命に導かれるかのごとく、 再び自らの昏い過去と向き合うこととなった幸人は、 夕見、 幸人の姉・亜沙実とともに、 生まれ故郷の新潟県・羽田上村へ赴く。 しかしそれは、 新たな悲劇の幕開けに過ぎなかった。 三十年前、 村の伝統祭である〈雷鳴講〉が行われたあの日。 一筋の雷撃がもたらした惨劇の真相。 その後、 世間を震撼させた一通の手紙に秘められたメッセージとは。 父が遺した写真の謎。 そして、 再び殺意の渦中へと身を置くこととなった幸人たちを待ち受ける未来とは、 一体――。