小沢健二、26年ぶり3カ月連続シングルの第2弾である『エル・フエゴ(ザ・炎)』のフルバージョン初公開配信ライブが急きょ4月20日(火)20:00に決定した。
テレビ東京系で放映中、中村倫也主演のドラマ『珈琲いかがでしょう』でオープニングテーマとして流れる同作は、スペイン語で「ザ・炎」を意味するタイトルを持つ。ゆらめくような琥珀色の炎がイメージされるこのバラードは、あたたかな癒しを提供するかに見えて、深く苦い過去を持つ主人公を描いた『珈琲いかがでしょう』を体現したような作品。
この偶然のマリアージュに、小沢健二本人は「『エル・フエゴ(ザ・炎)』を書き終わった頃にこのドラマのお話をいただき、原作マンガを読み進むにつれて、本当に驚きました。『珈琲いかがでしょう』と『エル・フエゴ(ザ・炎)』は、怖いくらいテーマが似ていたからです。もしドラマのために曲を作っていたら、ここまで強烈にシンクロはしなかった気がします」と語る。
3月にリリースされた『ウルトラマン・ゼンブ』は小沢健二の4歳次男の発想が元になっていたというが、今作『エル・フエゴ(ザ・炎)』は7歳の長男が考えた想像上の人物がモティーフとなっており、『ゼンブ』と『フエゴ』は文字通り兄弟作といえる。
今作のシングルジャケットは『ウルトラマン・ゼンブ』MVを撮影した当山礼子による長男・凜音くんのポートレート。それに合わせて小沢健二のアーティスト写真も、トラッドな白いシャツに黒いネクタイという、息子と同じスタイリング、同じ構図のものに切り替わる。
2作続けて子どもに着想を得たシングルとなるが、決して子どもそのものを描いているわけではない。より普遍的な、広がりを持つものを描写しているのは2019年のアルバム『So kakkoii 宇宙』から共通する作品の特徴だ。小沢健二は「子どもを題材にするのではなく、子どもの時空に入りこんで一緒に書く、という手法です」と話す。
気になる配信ライブは、今回は録音や打ち込みは使わずにすべて生音で届けられる。「マイクロ魔法的」と題して短く凝縮されたライブの中で、1回目の演奏は小沢健二のギターのみ、2回目は読売交響楽団のソロ・チェロ奏者である遠藤真理が加わる予定だ。また、映像は前回の配信と同じく、ファッションフォトグラファーの守本勝英がカメラマンを務める。美しい音色と映像にしばしの間、身を委ねたい。
なお、このライブが『エル・フエゴ(ザ・炎)』フルバージョンの初披露となり、翌4月21日(水)0:00より配信解禁となる。新しい曲はリスナーの目の前で、生で届けたいという小沢健二の強い願いから実現したショート・ライブだ。チケットはローチケで4月12日(月)21:00より発売開始となっている。
また、『エル・フエゴ(ザ・炎)』は小沢健二の音源としては初めてのハイレゾ配信が行なわれ、96kHz/24bitという高音質で楽しむことができる。特別な機器が必要だと思われている向きの多いハイレゾ音源だが、実は一般的なPCでも対応したものが多く、iTunesなどのアプリケーションで再生可能である。細部までくっきりと鮮明に立ち上がる音像に期待していただきたい。
ドラマ『珈琲いかがでしょう』では、なんとストーリーに合わせて小沢健二自らが『エル・フエゴ(ザ・炎)』のうち、その回にピッタリのパートを切り出して編曲している。まさに物語とあざなえる一本の紐のように曲が現れ、回を追うごとにパズルのピースが埋まっていくような効果をもたらす。その意味で、冒頭から見逃せない(聴き逃せない)ドラマとなっている。配信ライブで曲の全体像をいち早く掴んで、ドラマの行方を想像してみるのも一興だ。