あらゆる表現に挑み続ける“プレイヤー”、 夏木マリがブルーノート東京に帰還した。 2017年に初登場し、 ジャジーでスタイリッシュなナンバーで綴る「MARI de MODE」の待望の4回目の公演が、 3月12日(金)、 13日(土)の二日間で開催される。 対策が徹底されたブルーノートは、 通常の50%以下というソーシャルディスタンスが保たれた座席配置という、 今まで経験したことのない贅沢な空間だ。 来場者たちはもちろんマスクを着用し、 控えめながらも食事を愉しみ、 夏木の登場を待っていた。 オンタイムになると、 バンド・メンバーが登場。 今回は、 天野清継(ギター)、 松本圭司(ピアノ、 キーボード)、 竹上良成(サックス)、 吉澤達彦(トランペット)、 川崎哲平(ベース)、 山内陽一朗(ドラムス)、 斉藤ノヴ(パーカッション)という豪華な布陣だ。 斉藤率いるリズム隊が軽やかにステージを飾っている中、 桜色の華やかなシフォンブラウスと黒のマーメイドスカート、 そしてスパンコール輝くピンクの手袋を纏った夏木がステージに登場。
そのまま小西康晴プロデュースの最終盤とも言われる名盤『戦争は終わった』から「きれいな顔の女」「セロニアス・モンク」の2 曲を歌い上げた。 「こんばんは。 会えたね!少し間が空いたけど、 4回目のMARI de MODEになります。 それでも、 来てくれた皆さんありがとう。 今日は、 90年代に小西康陽さんがプロデュースしてくれた作品を前半で、 後半は私が歌いたい曲を歌います。 楽しんでもらえたら嬉しいです」と語り、 「こんな時だから豪華なバンド・メンバーが集まりました」と、 メンバー紹介を行った。 軽快なウッドベースが心地よいイントロから「アルコール」「鎮静剤」「惚れぐすり」と続き、 今夜のスペシャルカクテル“Mimosa de Mode”で会場と乾杯。 そのまま「ミュージシャン」「ゴリラ」「港のマリー」と、 ジャジーにアレンジされた小西ナンバーを力強く歌い上げた。
そして、 名盤『パロール』から“バカな男”というフレーズが爽快な「二の腕」と「いいじゃないの幸せならば」を披露し、 昨年夏木がプロデュースしたというマスクシンガー「2020」(ドゥゼロドゥゼロ)を紹介。 近年の欧州でのシティポップブームを受け、 アシッドジャズの先駆者James Taylor Quartetとレコーディングを果たしたという彼女の楽曲を、 夏木が代わりに歌うという。 James Taylorアレンジによる「人生いろいろ」で、 観客の熱も最高潮へ。 続いて「わたしゃビルのおそうじオバチャン モップかついで仕事する」というインパクトある歌い出しで有名な憂歌団の名曲「おそうじオバチャン」でオーディエンスを大いに盛り上げた。
こんな時世だからこそ、 オバチャンのストーリーに笑いと元気をもらえたのだろう、 マスクの下でも笑顔で手拍子が響いた会場は、 この日一番の盛り上がりを見せた。 会場の熱気を夏木も感じたのか「私ね、 最近ブギにはまってます。 ブギの女王を目指そうかしら」と楽しそうに語る。 いよいよ最後のパート。 後半は夏木が歌いたい曲ということで「私は私よ」「私のすべて」、 「カウボーイ」と続き、 自身が愛するジャニス・ジョプリンの「CRY BABY」を夏木本人が訳詞した日本語版で披露。 「辛いこと、 悲しいこと、 私が抱いてあげる」「自分の夢をみつけて 何かひとつみつけて」と、 語りかけるように歌う姿に、 客席からは感動と希望の眼差しが向けられた。 夏木語録としては有名な「年齢は記号なの」と、 語るや否や自身の人生を謳った「60 BLUES」で、 「前に進まないとね。 本当にありがとう」と、 締めくくった。 拍手が止まない会場へ、 再びGUCCIの装いに衣装チェンジをした夏木が登場。 アンコールは、 軽快なスイングジャズのリズムとバンド・メンバー全員による極上のソロを堪能できる「It don’t mean a thing」。 「スイングがなければ意味がない」という、 まさにジャズの真髄のナンバーで圧巻のステージに幕を下ろした。
【セットリスト】
M-01 きれいな顔の女
M-02 セロニアス・モンク
M-03 アルコール
M-04 鎮痛剤
M-05 惚れぐすり
M-06 ミュージシャン
M-07 ゴリラ
M-08 港のマリー
M-09 二の腕
M-10 いいじゃないの幸せならば
M-11 人生いろいろ
M-12 おそうじオバチャン
M-13 私は私よ
M-14 私のすべて
M-15 私のすべて
M-16 CRY BABY
M-17 60 BLUES
EC It don’t mean a thing