蒼井優の主演最新作であり、黒沢清監督がメガホンをとった映画『スパイの妻』が、10月16日(金)より新宿ピカデリー他にて全国公開となる。9/9(水)、第77回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門の公式会見に、蒼井優、高橋一生、黒沢清監督がスペースFS汐留にてリモートで登壇。
新型コロナウィルスの影響により現地入りは実現できませんでしたが、映画祭の会場であるイタリア・ヴェネチアと中継を繋ぎ、世界に向けて本作への想いを熱く語り、併せて、日本のマスコミ向けの会見も行なった。
まず、監督からヴェネチア映画祭の会見や駆けつけたジャーナリストへお詫びの言葉が述べられた。
黒沢清監督(以下、監督):東京からリモートで会見をさせていただいていることを光栄に思うと同時に、そちらに駆けつけてくださったジャーナリストのみなさまに、イタリアにうかがうことができず、すみませんでしたと謝りたいです。
――このテーマを選んだ理由は?
監督:社会と個人が引き裂かれ、対立するわかりやすい職業・存在としてスパイがいました。それ以上に、スパイと聞いた瞬間、ある種の映画的魅力が発揮できるんじゃないか? と思うような、映画に撮って魅惑的な言葉のひとつだと感じました。
――仲が良いように見えつつも互いに秘密を抱える夫婦、聡子と優作をどのように演じたのか
高橋一生(以下、高橋):聡子と優作の関係性は非常に繊細です。互いに思い合う形が違う。表層的なものと、(実際に)内側で思っているもの違いを、黒沢監督が切り取ってくださった。優作を演じる際は、個人の主観やバイアスもあるでしょうが、脚本に忠実に、目の前にいる蒼井さんとお芝居を通して会話することを心がけていました。
蒼井優(以下、蒼井):優作さんがいるから、自分がいるという感覚だったのが、途中から優作さんと共に生きる喜び、一緒に何かを成し遂げようとする喜び、一心同体になっていく喜びを持つようになり、物語を動かしていると思い、その気持ちを大切に演じました。私は怠け者ですが(笑)、聡子の生命力に負けないように、衝動に置いていかれないように演じたつもりです。
監督、出演者への質問と共に、発表されたばかりのアカデミー賞の審査基準についてどう思うか、といった質問が出るなど、国際映画祭らしい議論の場となった。
日本マスコミ向け会見
――映画祭に参加できなかったが会見に参加してどうだったか?
蒼井:手塩をかけて作った作品がヴェネチアの観客に触れるという、とんでもない緊張感を含めての映画祭。そこに行けないことを実感するとともに、この状況でも映画は海を渡るという喜びを噛みしめています。こういう形で映画を喜ぶ瞬間があり、映画祭の灯が消えないようにつながっている。それが今年限りであることを祈っています。
高橋:外国語が飛び交う質疑応答で、内容の鋭い、意義のある質問をされる方もいて、改めてこれがヴェネチアの空気なんだと、感じていました(笑)。残念という気持ちもありますが、リモートであっても参加させて頂けることを光栄に思い、汐留からヴェネチアを楽しみました。非常にいい経験ができたと思っています。
監督:(中継が)繋がってイタリア語が聞こえてきた瞬間に『ヴェネチアだ』と思ったけど、(会見が終わって)通信が途絶えると『汐留だなぁ…』と(苦笑)。現地に行っていれば、会見が終わってもヴェネチアで、いろんな質問をされたり、熱気を感じたり、それが映画祭の醍醐味なんですが……。
と冗談を交えつつも無念さをにじませる。それでも、会見での現地記者からの鋭い質問に映画祭の熱気を感じたよう。「作品が難しい質問の一番良い答えになってくれることを祈るばかりです」と語っていた。
――高橋さんと蒼井さんについて、国際映画祭の場で世界に向けて誇れる魅力は?
監督:どこも素晴らしいけど、声が特に素晴らしい! 声が素晴らしい人は、後ろを向いてても、遠くにいても、場合によっては画面にいなくても存在感が強烈にこちらに伝わってきます。声のすばらしさに関しては、世界のどの人が見ても、『この人はどんな人なんだろう?』と興味がわく強烈な魅力を持っていると思います。
とふたりの俳優に賛辞を贈り、『スパイの妻』が世界に通じる自信をうかがわせた。質問の絶えない記者会見は夜遅くまで続き、リモート会見を行った会場は熱気に包まれた。
Live Info.
映画「スパイの妻」
10月16日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー!
太平洋戦争前夜。
愛と正義に賭けたふたりが
たどり着くのは、幸福か、陰謀か――。
1940年、神戸で貿易会社を営む優作は、赴いた満州で、恐ろしい国家機密を偶然知り、正義のため、事の顛末を世に知らしめようとする。満州から連れ帰った謎の女、油紙に包まれたノート、金庫に隠されたフィルム……聡子の知らぬところで、別の顔を持ち始めた夫、優作。それでも、優作への愛が、聡子を突き動かしていく――。
蒼井優
高橋一生
坂東龍汰 恒松祐里 みのすけ 玄理
東出昌大 笹野高史
監督:黒沢清
脚本:濱口竜介 野原位 黒沢清 音楽:長岡亮介
エグゼクティブプロデューサー:篠原圭 土橋圭介 澤田隆司 岡本英之 高田聡 久保田修
プロデューサー:山本晃久 アソシエイトプロデューサー:京田光広 山口永
ラインプロデューサー:山本礼二
技術:加藤貴成 撮影:佐々木達之介 照明:木村中哉 録音:吉野桂太
美術:安宅紀史 編集:李英美 スタイリスト:纐纈春樹 ヘアメイク:百瀬広美
VFXプロデューサー:浅野秀二 助監督:藤江儀全 制作担当:道上巧矢
制作著作:NHK, NHKエンタープライズ, Incline, C&Iエンタテインメント
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
配給:ビターズ・エンド 配給協力:『スパイの妻』プロモーションパートナーズ
2020/日本/115分/1:1.85