幅広い世代に人気を誇る直木賞作家・角田光代の新作小説「タラント」の連載が7月18日から、 読売新聞朝刊で始まる。 角田さんは「源氏物語」(河出書房新社、 全3巻)の現代語訳に専念するため、 2015年まで執筆した「拳の先」を最後に、 長編小説を書いていない。 今回が5年ぶりの長編執筆。 読売新聞で連載小説を手掛けるのは、 2005年11月~06年7月に連載した夕刊小説「八日目の蝉」以来、 2回目。
主人公は、 香川のうどん屋が実家で、 18歳の大学進学とともに上京した「みのり」。 映画関連の会社で働く男性と結婚し、 現在は洋菓子店で働いている。 間もなく40歳を迎えるみのりの日々の生活や、 中学2年生の甥や90歳代の祖父との交流などを描きながら、 戦争やパラスポーツなどのテーマを扱っていく。 タイトルの「タラント」は才能、 賜物の意味。
角田さんは、 2005年の直木賞受賞作「対岸の彼女」やベストセラー「八日目の蝉」などで、 現代女性の生き方を描く一方、 戦後に満州(現中国東北部)から引き揚げた一家を描く長編「ツリーハウス」(2010年)を発表するなど、 近代の歴史と等身大で向き合った作品を発表している。今作はこれらの流れを受けた、 細やかさとスケールの大きさを併せ持った作品となりそうだ。
挿絵を担当するのは、 イラストレーターの木内達朗。 重松清さんの小説「きよしこ」の装画と挿絵、 池井戸潤さんの「半沢直樹」シリーズ、 「下町ロケット」シリーズなどの書籍装画をはじめ、 数々の作品を手掛けてきたベテランの描き手。 角田さんの作品世界に、 毎日1枚ずつ彩りを添えていく。
連載は、 読売新聞のデジタルサイト「読売新聞オンライン」でも毎日更新。 バックナンバーのまとめ読みができ、 イラストもカラーで楽しめる。連載開始にあたり、 角田光代さんのロングインタビューも掲載。
角田光代 コメント
新約聖書の「タラントのたとえ話」を読んだときから、 神さまがしもべたちに与えたタラントはなんだろうと考えていました。 私はキリスト教徒ではありませんが、 私たちそれぞれに与えられたものについては考え続けています。 与えられたものは何で、 どうすればそれを生かすことになるのか。
小説を書くのはじつに5年ぶりです。 最後まで書き切れるか、 正直、 不安しかありませんが、 書くことで、 考えていきたいと思います。 よろしくお願いいたします。
木内達朗 コメント
角田さんの物語は、 リアルな世界が描かれている。 小説にある程度に忠実に沿いながら、 読者のイメージを膨らませるものを描いていきたい。