「まともに質問に答えない政治家への追及が甘い」「なぜ、 もっと食い下がらない」「記者は聞くべきことを聞いているのか」――。 首相会見や官房長官会見など政治家の会見がネット配信され、 可視化されたことで、 世間の注目が高まっている。コロナ禍での首相記者会見。 台本どおりに進む模様は「台本営発表」「劇団記者クラブ」と揶揄され、 その在りようが問われた。 記者会見の可視化で、 政治部はメディア不信の象徴とされ、 一種の社会現象にもなっている。 いま政治取材の現場で何が起きているのか。 政治記者として現場を知る新聞労連委員長の南彰氏が、 不信の核心に迫った『政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す』(朝日新書)が、 7月13日に朝日新聞出版から発売。
2019年11月から20年1月にかけて、 「桜を見る会」に関する疑惑追及のさなか、 首相と報道各社官邸記者クラブキャップ、 ベテラン政治記者らが「懇談」の名の下で会食したことは、 市民から失望と不信のまなざしが向けられた。記者は権力を監視する「ウォッチ・ドッグ」の役割を果たせているのか。 誰に向けて、 何のために記事を書いているのか。 いまメディア自身の存在意義が問われている。
本書はメディア側の問題を通じて、 権力者と記者の関係を考察。 また、 男性中心の旧態依然とした「メディアの体質」や「組織の論理」、 時に「ズブズブの関係」と癒着を疑われる取材相手との「距離感」、 記者クラブによる「フリーランスの排除」など、 この国のジャーナリズムが抱える課題も徹底検証。
もくじ
第1章 “台本営〞発表
プロンプター/暴露された事前調整/署名開始/福島からの疑問/排除されていた地元記者
記者たちの反撃/官邸の巻き返し/閉ざされた官房長官記者会見
●コラム 「会見はオープンであるべきだ」――畠山理仁さん(フリーランスライター)
●コラム メディアも押し返してこそ――阿部岳さん(沖縄タイムス編集委員)
第2章 政治部不信
スタートライン/内閣広報官/変わったルール/官房長官会見のツケ/相互監視の葛藤
「桜を見る会」で噴き出した政治部批判/なぜ会食をするのか/「解散はいつですか」/監視の目を乗り越え
●コラム 本質に迫る質問ができているか――望月衣塑子さん(東京新聞記者)
第3章 ボーイズクラブ
賭け麻雀/男女格差121位/「性差別ある」6割/声を上げる女性の抑圧/意思決定の場に女性を
大炎上した、 あるテレビ社員のnote/広がった「3・8」紙面/慰安婦問題での沈黙/再び切られる女性
●コラム 「異質な人たち」排除の理屈――小島慶子さん(エッセイスト)
●コラム 記者の妙な被害者意識――立岩陽一郎さん(元NHK記者・インファクト編集長)
第4章 表現の自由とテレビ
一転して不交付/「源に政権側の不快感」/萎縮するテレビ/報ステ派遣切り/沈黙する報道機関幹部
●コラム 毅然とした距離感を――安田菜津紀さん(フォトジャーナリスト)
第5章 共犯者たち
酷評されたアンケート/「事実と人権」という軸/「公正報道」を求めストライキ
メディア不信を直視/連帯の必要性/日本版ニュース打破