株式会社大和書房は『スゴ母列伝 ~いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける~』(堀越英美 著)を2020年3月12日に発売する。
「正しい母」になりきろうとするのではなく自分を貫いて独特な育児をする型破りな母親=「スゴ母」。自我を捨てて子どもに尽くす聖母も、 子どもの自我を自分の自我と同一視する毒母も、 母子一体型という意味ではいずれも日本的な母親像である。 ひるがえって「スゴ母」は、 強烈な自我を持つあまり、 子どもの自我と真正面からぶつかり合う。
作家の岡本かの子が、 息子である芸術家の岡本太郎を当時、 柱に縛って仕事に励んでいたという育児伝説はあまりに有名。 娘への手紙に「数学の問題」をしたためる、 日能研みたいなお母さんキュリー夫人。 婦人運動家・山川菊栄の母、 青山千世はおそらく当時、 「日本一頭の良い女の子」だった。
青山千世 は、 東京女子師範学校(現・お茶の水女子大学)開校当時の首席入学生。 明治初年代の幻のような男女同権の空気を目いっぱい吸って最先端の学問に目を見開きながら、 おてんばな女学生生活を満喫した。 明治政府の女子教育の方針が変わってからは、 千世も家庭に入って子育てと家計のやりくりに追われたが、 その教養と社会への問題意識は、 娘の山川菊栄に引き継がれた。
鳩山春子 は、 政治家の鳩山由紀夫・邦夫兄弟の曾祖母に当たる元祖・教育ママ。 子どものころから女子力よりも勉学一筋に生きたが、 「女に学問はいらぬ」という明治の空気の中でたびたび妨害に悩まされる。 結婚後は息子たちに、 早期教育を施す「良妻賢母」ぶりを喧伝することで、 女にも学問が必要であることを世間に訴えかけた。 当時執筆した育児書『我が子の教育』は女学校を出た新中間層の主婦たちの教育熱に火をつけてベストセラーに。
リリアン・ギルブレス 。 20世紀初頭に労働環境の合理化を求めたギルブレス夫妻は、 「1ダースなら安くなる」という”箱買い”精神で子どもを12人育てた。 リリアンは、 科学的管理を家庭に適用して、 つらい家事を時短化。 こうして生まれたのが、 現代では当たり前になった「フットペダル付きゴミ箱」「冷蔵庫のドアの内側の棚」「壁の電気スイッチ」などである。 お母さんになったからって、 家事が好きになるわけじゃない。
その他、 知的障害児や貧困層の子どもたちの教育の可能性に目を向け、 その能力を引き出すことに成功したカリスマ教育者 マリア・モンテッソーリ 。 モンスター級のコミュニケション能力を持ったアメリカ人文化人類学者 マーガレット・ミード 。 脳科学者養老孟司の母で、 女医の草分けだった 養老静江 。 息子の孟司が「いくつになっても壁でした」と恐れる母は、 子どもよりも恋と仕事を優先させ、 最後まで「わがまま」を貫いた。
自作の映像化の条件として長女・紅葉の出演を要求したという親バカエピソードで知られるベストセラー推理作家、 山村美紗 。 作家 アストリッド・リンドグレーン は、 「遊び死に」しそうなほど自由に遊んだ子ども時代の気持ちを生涯、 忘れなかった。 女らしさ、 母らしさの押し付けに抗い、 子どもの我が子と一緒に遊んで、 道徳や教訓抜きの楽しい児童文学『長くつ下のピッピ』を書き上げた。
いずれの母もとてつもない人物で、 育児の参考にはまずならないだろう。 が、 いかんともしがたく自分であり続ける彼女たちの姿は、 自分は自分にしかなれないということを私たちに教えてくれる。 どこにもいない「正しいお母さん」像を内面化して、 自分かかけ離れていることに落ち込んでいる場合じゃない。 そんな古今東西の「スゴ母」11人に注目したのが、 本書である。
武田砂鉄氏推薦
人間にとって最も大切なのは、 「私はこう思う」を邪魔されないこと。
そして、 邪魔しないこと。
ここに連なる母たちは、 それを信じ抜いた人たちだ。
豪華スゴ母たち
スゴ母1 岡本かの子
スゴ母2 マリー・キュリー
スゴ母3 青山千世
スゴ母4 三島和歌子
スゴ母5 鳩山春子
スゴ母6 リリアン・ギルブレス
スゴ母7 マリア・モンテッソーリ
スゴ母8 マーガレット・ミード
スゴ母9 養老静江
スゴ母10 山村美紗
スゴ母11 アストリッド・リンドグレーン