Rooftop ルーフトップ

NEWS

トップニュース【ライブレポート】ポール・ウェラー JAPAN TOUR 2012

【ライブレポート】ポール・ウェラー JAPAN TOUR 2012

2012.10.23

PAUL WELLER JAPAN TOUR 2012
2012年10月22日(月)Zepp DiverCity


テキスト:椎名宗之
写真:Chieko Kato

PW_001.jpg2009年春の単独ツアー、同年夏に出演した『フジロック・フェスティバル』以来3年振りとなるポール・ウェラーのジャパン・ツアーが昨夜のZepp DiverCityから幕を切って落とされた。
愛弟子であるスティーヴ・クラドックのギターを筆頭に、ベース、ドラム、パーカッション、キーボードから成る鉄壁の布陣に支えられたウェラーはステージに立つ興奮を抑えられないかのように終始アクティヴ。三つボタンのジャケットと細身のスラックスを身にまとってクールを装いながらも、燃え滾る感情とエナジーがどうにも溢れ出てしまうところが如何にもこの人らしい。
全英1位を獲得した最新作『SONIK KICKS』の収録曲中心のステージになるのかと思いきや、ザ・ジャムやスタイル・カウンシル、ソロ時代のフェイヴァリット・ナンバーと近年のライヴ映えする楽曲が実にバランス良く織り交ぜられたセットリストで、35年のキャリアを俯瞰するかのような音楽性の変遷を貫禄のパフォーマンスでまざまざと見せつけた格好だ。
個人的には、発表直後の来日が実現しなかったためにずっと生で聴けなかった『WAKE UP THE NATION』(2010年発表)からの切れ味鋭いナンバーが本編の前半から中盤にかけて随所に散りばめられ、程良いアクセントになっていたのが嬉しかった。
が、やはりファンが狂喜乱舞したのはジャムやスタカンの往年の名曲ということになるだろう。これから参戦する方も多々いると思うので詳しいことは書かないけれど、この日はいきなり2曲目にスタカンのあの曲が披露された。それ以降、ジャムのあの曲も、スタカンのあの曲も、もはやモダン・クラシックと化したソロ4作目辺りまでのあの曲も、とにかくこれでもかと言わんばかりの大盤振る舞いなのだ。
2,000人強のオーディエンスはその心憎い選曲とアグレッシヴなパフォーマンスに万雷の拍手喝采で応える。それを受けて、青筋を立てながら鉈を振り落とすようにテレキャスターを掻き鳴らすウェラーの歌声はさらに熱を帯びたものになる。日本のオーディエンスはこの御年54歳になるモッド・ファーザーを盛り立てるのが相変わらず上手い。

PW_002.jpgとは言え、まるでジュークボックスのように往年のナンバーを再演することばかりがこのツアーの醍醐味ではない。
『SONIK KICKS』がノイ!やクラフトワークを彷彿とさせるエレクトロニック・ポップやクラウト・ロックの要素を全面に出した作品だったように、ウェラーの関心は常にネクスト・ワンにある。
彼の信条であるモッズ=モダーンズとは臆することなく変化し続けていくことであり、パンキッシュなジャムからスタイリッシュなスタカン、ソロ転身後の武骨なUKロックへの変遷を例に挙げるまでもなく、絶え間なく目まぐるしく変化を重ねて自由奔放な創作活動を貫いてきた。
やむにやまれぬ創作意欲から発する前衛性と、ルーツ・ミュージックであるビートルズのDNAを身に宿した大衆性。その両面が無理なく共存しているのがウェラーの音楽性の魅力だ。
ツアー初日のセットリストもまた然りで、オーディエンスが求める大衆的なポップ・ソングと今のウェラーが志向する前衛的な楽曲のバランスがとても理想的だった。それがジャムの曲にせよスタカンの曲にせよ、過去のレパートリーにはそれ相応の年輪が刻まれたような風格が感じられ、しっかりと今のウェラーの音になっていた。彼の立脚点はいつだって“AS IS NOW”であり、彼こそが“THE CHANGINGMAN”そのものなのである。
とりわけ、スタカンの自然消滅という失意の淵から砂を掴んで立ち上がるきっかけとなったあの歌を最後のアンコールで聴けたのは嬉しかった。
七転八倒しながらも、それでもなお“明日へ向かって”第一歩を踏み出そうとするウェラーの強靱な意志は何ら変わらないこと、どれだけ音楽的な変遷を重ねようともソロとしての原点は依然としてあの歌なんだと思うとグッと来た。

PW_003.jpgなお、今回のジャパン・ツアーは各公演に配されたスペシャル・ゲストも趣向が凝らされている。初日は今や破竹の快進撃を続けるOKAMOTO'Sで、ありったけの熱量を惜しみなく出し切った堂々のステージを披露。
「高校生の時にジャムをカヴァーしていたので、こうして同じステージに立てるなんて光栄です!」というオカモトショウ(vo)のMCがとても微笑ましかった。また、ウェラーのファンを意識してか、ザ・フーの「THE KIDS ARE ALRIGHT」のカヴァーを織り交ぜるセンスも光っていた。
今日(23日)のZepp DiverCityにはthe HIATUS、25日のZepp NagoyaにはThe Birthday、26日のZepp Nambaには藤巻亮太、千秋楽の27日のZepp DiverCityにはくるりがそれぞれスペシャル・ゲストとして出演する。いずれもまたとない好カードなので必見だ。

一時はジャム時代のナンバーを唄うことを頑なに拒否してきたが、紆余曲折を経た自身の轍をすべて受け容れ、尖鋭さとしなやかさを携えながら飽くなき創作活動に邁進するポール・ウェラー。54歳の彼が奏でる珠玉のポップ・ソングの数々が未だ枯れることなく無垢なる輝きを放っていることを、あなたはこのジャパン・ツアーできっと実感するはずだ。
 

商品情報

SONIK KICKS/ソニック・キックス

通常盤:UICO-1235 ¥2,548(税込)
デラックス盤(DVD付・日本語字幕付き、ハードブック仕様):UICO-9062 ¥4,800 (税込)
制作:Pachinko Records
発売・販売元:ユニバーサル ミュージック合同会社

amazon

*全英アルバム・チャート初登場1位を獲得した、ポール・ウェラーの最新作。
1. グリーン
2. ジ・アティック
3. クリング・アイ・クラング
4. スリープ・オブ・ザ・シーリン
5. バイ・ザ・ウォーターズ
6. ザット・デンジャラス・エイジ
7. スタディ・イン・ブルー
8. ドラゴンフライ
9. ホエン・ユア・ガーデンズ・オーヴァーグローン
10. アラウンド・ザ・レイク
11. トワイライト
12. ドリフターズ
13. ペーパーチェイス
14. ビー・ハッピー・チルドレン
15. スターライト(デラックス・エディション・ボーナス・トラック)
16. ディヴォーション(デラックス・エディション・ボーナス・トラック)
17. ウィー・ゴット・ア・ロット(日本盤ボーナス・トラック)
18. レイ・ダウン・ユア・ウェアリー・バーデン(日本盤ボーナス・トラック)

Live Info.

PAUL WELLER JAPAN TOUR 2012

【東京】
■ 10月23日(火) Zepp DiverCity
GUEST:the HIATUS
OPEN 18:00/START 19:00
■ 10月27日(土)Zepp DiverCity【全席SOLD OUT】
GUEST:くるり
OPEN 18:00/START 19:00
1F立見・2F指定席 ¥8,000(税込)/2F立見 ¥7,000(税込)
*入場時ドリンク代 別途¥500必要
主催:TBS/J-WAVE/Inter FM
[問い合わせ]H.I.P. 03-3475-9999

【名古屋】
■ 10月25日(木)Zepp Nagoya

GUEST:The Birthday
OPEN 18:00/START 19:00
1F立見/2F指定席 ¥8,000(税込)
*入場時ドリンク代 別途¥500必要
主催:ZIP FM
協力:Zepp Nagoya
[問い合わせ]Zepp Nagoya:052-541-5758

【大阪】
■ 10月26日(木)Zepp Namba

GUEST:藤巻亮太
OPEN:18:00/START:19:00
1F立見/2F指定席 ¥8,000(税込)
*入場時ドリンク代 別途¥500必要
主催:FM802
後援:FM COCOLO
協力:サウンドクリエーター
[問い合わせ]サウンドクリエーター:06-6357-4400

関連リンク

このアーティストの関連記事

RANKINGアクセスランキング

データを取得できませんでした

RECENT NEWS最新ニュース

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻