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【ライブレポート】9月9日(日)下北沢GARDEN"9mm Parabellum Bullet presents「カオスの百年 vol.8」"

2012.10.10

■昼の部/女子限定 ライヴ

hiru_RUI6862.jpg 9mm Parabellum Bulletの自主企画“カオスの百年”vol.8が9月9日の自称「9mmの日」に下北沢 GARDENで開催された。今年は、昼間に女子の部、夜が男子の部に分けた2部構成。(当たり前だが)会場に着くとそこは女子女子女子!! いつもよりステージがよく見えるのも同じぐらいの背丈の女子しかいないからだろう。
 そして予定時刻の13時半をちょっと過ぎたところでフロアのライトが暗くなり、黄色に近い歓声を受けてメンバーが登場。ギターの滝は、前から後ろまで女子!! という光景にどういう表情をしたらよいのかわからないのか、少しはにかんだような照れたような笑いを浮かべながら登場。「9mm Parabellum Bulletです。こんにちは」という卓郎のひと言で、滝の超絶ギターソロが鳴り響き1曲目は『Mr.Suicide』だ。続いてギターのユニゾンを轟かせる『Supernova』や『Sleepwalk』と畳みかける。最初から強烈な先制パンチを食らったようなこのセットリストに、女だけだろうが容赦しない。対する女子だけのフロアにもモッシュが沸き起こる。ただ、『Sleepwalk』での卓郎が吐息を吐くように歌うところで、キャー! という歓声があがっていたのは聞き逃しはしなかった。
hiru_RUI6767.jpg 『The World』を歌い終えたところで、「よく来たわね。楽しんでいってちょうだいよ」と卓郎のオネエ言葉のMCでフロアに歓声と失笑をもたらしたところで、「いくわよ!」というかけ声でスカのリズムが新しい、新曲『ハートに火をつけて』、そして『ラストラウンド』へと続く。その後、「ここには女の子はいない!」というMCで卓郎が大ブーイングを浴びていたが(笑)、続くMCで「男でもなく、女でもなくDiscoだ!」と卓郎が石毛 輝のような甲高い声で絶叫するとthe telephonesのカバー『Urban Disco』を。カバーとはいえ、彼らの朋友の曲、フロアの手が挙がるタイミングもバッチリだ。続いて新曲『Scream For The Future』を披露し、「この後野郎どもが来るわけですけど、今は草食男子と言われる時代ですから。そしたら、かみじょう君が“女の子はお花だから草食だ”って言ってた」という卓郎のMCでフロアは笑いと歓声が上がっていた。
 今回このライブの応募フォームには「ライブで聴きたい曲」のリクエストを1曲書く欄があったそう。ここにいるお花ちゃんたちを含め投票された中の3位は血肉躍らせ開放感のある『Discommunication』、2位は『カモメ』、そして1位は中村がアップライトベースを奏で色気を感じる『キャンドルの灯を』を順に演奏。
 「女子力あがってきてるわよ」という再びのオネエMCから「最終的には混浴が良いと思うけれど、今日は女子力を上げる会ということで行くわよ!」と言って演奏されたのは、来た! 『Black Market Blues』だ。女子力がどういうものかはよくわからないが、この曲を聴いて体が動かないわけがないだろう。フロアはモッシュの渦がところどころに出来ていて、中村はベースを置いて卓郎の前に立ってポーズを取り、『Beautiful Target』では、滝&中村が楽器を弾かずに踊り(笑)、その後ろではかみじょうが涼しい顔をしてドラムを乱れ打つ。そして『sector』から、最後の『Vampiregirl』まで一気に飛ばしライブは幕を閉じた。16時前にライブは終了し、女子力があがったお花ちゃんたちは下北の街にそれぞれ繰り出していった。
 男子の部には入ってないので、結局混浴が良かったのか別々が良かったのかはよくわからないが、カオスで衝撃的な1日になったことは間違いないだろう。(やまだともこ)

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■夜の部/男性限定ライヴ■

_RUI5531.jpg 「基本的に、男湯と女湯は分かれていますよね。明日はひとつ風変わりな温泉にでも入るつもりで下北沢に来てください」
 ライヴの前日に菅原卓郎がブログでそう書いていた9mm Parabellum Bullet主催『カオスの百年 vol.8』、夜の部。
 男性限定ライヴだけあって、開演前からすでに尋常ならざる熱気と爆音に飢えた殺気みたいなものが場内を包んでいる。2分押しで客電が落ちてSEが轟くや、獣の絶叫の如きけたたましい歓声と怒号が響き渡る。女性に気兼ねすることなく存分に暴れ回れる無礼講の宴の始まりだ。
 「野郎ども! 行くぞーッ!」という卓郎の掛け声とともに『The Revolutionary』が掻き鳴らされた途端、バンドもオーディエンスもフルスロットルで一気にレッドゾーンへ突入。のっけから出し惜しみは一切なし。ステージにいようとフロアにいようと踊る阿呆に見る阿呆、持ち得るありったけのエネルギーを全身全霊でただひたすらにぶつけ合う。愛すべき野郎どもの意気に応えるべく、バンドは『Termination』、『Wanderland』、『Wildpitch』と一撃必殺のナンバーを畳み掛けるように連射。荒々しくも肝胆を砕いた熱演の応酬だ。これで心を射抜かれないほうがおかしい。
 とにかく場内の熱さと湿気が半端ではない。空調の機能、まるで効果なし。途中からフロアのドアが開け放たれ、冷気と酸素を求めるオーディエンスが何人も骨休めをしていたほどだ。時折「卓郎ーッ! 酸素!」と野太い雄叫びを上げるオーディエンスもいる。確かにフロアも煮え湯地獄だが、熱波と照明を一身に受けるステージ上の暑さはそれ以上だろう。そこを柳に風とばかりに毅然と至高のアンサンブルを繰り出すバンドが実に頼もしい。
 このただならぬ雰囲気のなか絶妙のタイミングで披露された、リリース目前の新曲『Scream For The Future』(ニコ生で生中継もされた)の瞬殺能力がまた恐ろしく高い。屋台骨を支える鉄壁のリズムに載ってうねりまくる鋭角ギターと暴力的な音圧がとにかく心地好いのだ。性急なテンポのまま一気に疾走する『ラストラウンド』も如何にも9mmらしい蒼き壮快さがあり、「新曲、いいじゃん」と思わず口をつく。
_RUI5694.jpg 「野郎の血をさらに滾らせるために」と選曲されたTHE BACK HORNの『刃』というまさかのカヴァーを挟み、鮮烈なスカのビートと胸を締めつける哀切のメロディが一体となった『ハートに火をつけて』、「まだレースは終わらないのさ」と高らかに人生航路の格闘続行を告げる『R.I.N.O.』と、4thシングル収録曲の出来がやはりすこぶる良い。すでにライヴの重要なレパートリー然とした風格があり、とりわけ表題曲の『ハートに火をつけて』は従来の切れ味の鋭さに加えてどこか妖艶な佇まいも感じられ、今後セットリストにおける肝心なフックとして重宝されるのではないか。
 この日の白眉はベスト3形式で披露された「オーディエンスが選ぶ9mmの好きな曲」だった。チケット申し込みの際に募ったアンケートの結果は第3位から順に発表。『Cold Edge』(卓郎いわく「総得票数=12億票」)、『新しい光』(卓郎いわく「得票数=15億票、もとい20億票」)、そして『Talking Machine』(得票数=発表されず)という納得のラインナップだ。どれもオーディエンスが求める最大公約数的楽曲にしてテッパンのスタンダード・ナンバーであるゆえ、ただでさえ白熱状態のフロアはさらなる狂熱の坩堝と化した。ほぼ密閉された空間のなかでオーディエンスの汗と体熱はすでに飽和、卓郎の言う通りフロアはさながら「風変わりな温泉」のようだった。
 それでも9mmはぬるま湯で半身浴を薦めるようなことはしない。高温浴化の手を緩めることなく、サビのロシア民謡風メロディが特徴の『Living Dying Message』、イントロから否応なく昂揚感が訪れる『Scenes』と人気の高いナンバーを矢継ぎ早に披露。本編最後の『Punishment』まで疾風迅雷の勢いで駆け抜けた。本編はレアなカヴァーを含めて全20曲、トータル約1時間半、『ハートに火をつけて』収録の4曲以外は「昼の部」とセットリストの重複なし。「女性には優しく、男性には激しく」をモットーとする9mmならではの、いや、9mmにしか為し得ない実に天晴れなライヴだったと思う。「男としてはやっぱり混浴がいいよね?」と卓郎は言っていたが、なかなかどうして、むせかえるような野郎まみれの「風変わりな温泉」もまた一興だと感じた。
「今日のことをずっと忘れないで欲しい」──ライヴの最後に卓郎が発した言葉だ。あんなに超絶特濃のライヴ、忘れっこない。終演後、床が水浸しになるほど全身汗だくになりながらも満足しきった顔をしていたオーディエンスのことも忘れられない。そして何より、特別な日の特別なライヴを精魂込めて楽しもうとしていた9mmの得も言われぬパフォーマンスを忘れるはずがない。
 祭り好きな彼らのことだから、遂にvol.9を迎える来年の『カオスの百年』も僕らの度肝を抜くような趣向を凝らしたものになるだろう。まだまだレースは終わらないし、まだまだ荒地を往く9mmの歩みが留まることはない。まだまだお楽しみはこれからなのだ。(椎名宗之)

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昼の部セットリスト
1.Mr.Suicide
2.Supernova
3.Sleepwalk
4.The World
5.ハートに火をつけて
6.ラストラウンド
7.光の雨が降る夜に
8.Urban Disco(the telephonesのカバー)
9.Scream For The Future
10.R.I.N.O.
11.星に願いを
12.悪いクスリ
13.Discommunication
14.カモメ
15.キャンドルの灯を
16.Black Market Blues
17.Bone To Love You
18.Beautiful Target
19.sector
20.Vampiregirl


夜の部セットリスト
1.The Revolutionary
2.Termination
3.Wanderland
4.Wildpitch
5.Scream For The Future
6.ラストラウンド
7.Keyword
8.刃(THE BACK HORNカバー)
9.ハートに火をつけて
10.R.I.N.O.
11.Sundome
12.命ノゼンマイ
13.Cold Edge
14.新しい光
15.Talking Machine
16.Living Dying Message
17.Scenes
18.エレヴェーターに乗って
19.(teenage)Disaster
20.Punishment



PHOTO BY:橋本塁
 

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