ベトナム・ハノイ『GO! GO! JAPAN! ロックンロール』
2011年12月3日(土)ベトナム・ハノイ市ザンボー見本市センター
文:石川 愛(web Rooftop)
写真:(c) Aidan Dockery
直行便で片道4時間ちょい、乗り換えは合計6時間弱。
ハノイの外気温はころころと移り変わる。
陽がさせば暑く、陰れば肌寒い。
日本人の多くが余震や原発を恐れる日々が続く中、
ある者はシュプレヒコールをあげ、ある者はデモ行進し、
そしてある者は詩を書き、バンドマンは演奏し、歌った。
そのおかげもあって、物理的にはでなく気持ちの問題として、ある程度持ち直した人が少なくないのも事実だろう。
芸術や音楽は、決して無駄なものではないという証拠だ。
震災直後の日本が一番欲していたのは、「笑顔」だった。
何もかも失った人が涙を枯らした後にその胸に沸き起こす感情は、喜びであってほしい。
『GO! GO! JAPAN!』は、ベトナム在住のヨーロッパ人イベンターC.A.M.Aのメンバーと、日本の国際交流基金が手を組み、
「少しでも多くの笑顔を。そしてその笑顔を世界中に伝えよう」というコンセプトのもと立ち上げられたイベントだ。
会場はハノイの中心部にあるGiang Vo Expo Centre、いわゆる国際交流センターの中。
文化庁のお役人と公安員に見守られながらのリハーサル。
「海外から来たそのバンドが、ベトナム国内のイベントにおいて演奏するにふさわしいかどうか」を審査するとのこと。
楽しい思いをするには、厳しいチェックもしなければならないのは仕方のないことだろう。
実際、ベトナム国内では政治的に批判する人もいるようで、
国の機関としては目を光らせていなければならないらしい。それは、正しいことだと思う。
ひとバンドずつ順番にリハーサルをこなし、無事、日本から来た全バンドの演奏許可がおりた。
MOLICE、ELECTRIC EEL SHOCK、OKAMOTO'Sの3組に加え、
ROSE WOOD、地元ベトナムのNGU CUNG、計5組によるロックフェスティバルである。
写真からもその熱意、温度が伝わるだろう。
何十年も前、忌野清志郎が歌っていたことが現実となったように、
これからの日本人はそれらを背負って生きて行くことを余儀なくされた。
しかし、日本そのものが終わったわけではない。
悲観している時間があるのなら、手を繋ぎ、目を瞑り、共に歌い、前へ進もうと思わされる。
またこのイベント、堅苦しいこと抜きにすごく楽しかったことも伝える必要がある。
骨の髄から楽しい人の顔がたくさん並んでいるのを見たが、何だか懐かしく思えた。
言葉ではなく、何か強い意志を感じた。
国を超え、音楽を通し、外の国から見える「日本の今」を考え直す時が来つつあるのかもしれない。
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