amazarashi 1st LIVE 「この街で生きている」
6月17日(金)渋谷WWW
衝撃の一夜だった。
“amazarashi 1st LIVE 「この街で生きている」”。初の全国流通盤『0.6』がリリースたのが2010年2月。その後、『爆弾の作り方』『ワンルーム叙事詩』『アノミー』と立て続けにリリースし、次はライブをと望まれていたが、『0.6』のリリースから1年半、ついにこの日を迎えることになった。
amazarashiは青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心とするバンドという公式発表だが、ライブではどんな編成になるのか。期待を胸に、渋谷にあるライブハウスWWWへと向かった。
会場に入ると、そこは同じくこの日を楽しみにしていた人で埋め尽くされていたが、どこか違和感を感じたことも事実だ。これだけの人がいるにも関わらず、喋り声がほとんど聞こえてこない。聞こえるのは、ライブハウススタッフによる「入りきれていないので、もう少し前に詰めてください」という声だけ。それだけ、会場全体は初めて見るamazarashiに対して密かに興奮し緊張していたのだろう。スタート予定の19時をしばらく過ぎ、客席が暗くなった時も大歓声があがるというよりは、全員が固唾を呑んでamazarashiを待ちかまえていた、と表現したほうが良さそうだ。
半透明のスクリーンの向こうで照明が当てられたamazarashiは、センターにギターを持った秋田ひろむが立ち、キーボード、ベース、ギター、ドラムの5名で構成されていた。1曲目は『ポエジー』。「僕らは順応しない 僕らは反省しない 僕らは戦争したい」という詩が静まりかえった会場に響き渡る。わずか1分半のこの曲は駆け抜けるようにして終わったが、終わって数秒の時間が経っただろう。どこからかパラパラと拍手が起こり、それで我に返ったように会場全体が拍手を始める。誰もが我を忘れていた。もちろん私も…であったが…。『ムカデ』でのゾクゾクするようなバンドの演奏、グルーヴ、メンバーの表情は見えないものの、ステージが演奏で高揚していると感じられる。その後、『飛べない鳥』の朗読を。スクリーンには真っ白い鳥が舞い、幻想的な世界へと誘う。誰1人として客席は声も音も発しない。秋田ひろむから発せられる言葉を一言一句聞き逃すまいとしているのだ。
中盤で演奏された『つじつま合わせに生まれた僕等』は歌詞をなぞるように、スクリーン中央に大きな木が現れ動植物の生死を表現した映像が映し出されて、ひとつの映画を見ているような感覚。『アノミー』の後に朗読された『生きている』というタイトルのポエトリーは、「何年経ってもあの子は結局生きている」という強烈な詩を放つ。歌詞もそうだが、胸をするどく突き刺す言葉が、amazarashiに中毒になるひとつだろう。『ワンルーム叙事詩』に挿入されている『奇跡』では、「命」「奇跡」「無駄」といった歌詞の断片が映し出され、視覚として言葉を捉える事により脳内が徐々に刺激され熱くなっていく。気付けば瞳孔を開き、秋田から放たれている言葉と、映し出される文字をただただ見つめていた。バンドサウンドをバックに従え『昨日以外の全てについて』を朗読後、イベントタイトルにもなった『この街に生きている』を演奏。東京の友達にあてて書いたというこの曲は、このライブで唯一温かな光を放っていたように思う。
そして、MCは一切していなかった秋田がついに言葉を発した。「今日はありがとうございます。次で最後の曲です」と。ここまでの13曲、秋田ひろむの歌声とバンド演奏、そして映像だけが、ライブハウス内で共鳴し続けていたのだ。最後に演奏されたのは『カルマ』。もともと1曲に対して言葉数が多いバンドではあるが、この曲もひたすらに希望・願望・絶望を訴え、言葉を畳みかける秋田の姿は、CDだけではわからなかった異様な空気を放っていたように思う。
あっという間に全14曲、1時間強のライブは終了した。アンコールはなく、客席の電気がついて流れていた曲は新曲だそう。ようやく正気を取り戻した客席は、この新曲に合わせて手拍子をしていた…。それほど衝撃的なライブだった。私もライブが終わり、しばらくは声も発する事が嫌だと思うぐらい放心状態になっていたほどだ。何かに取り憑かれたように、そして食い入るようにステージを凝視し、amazarashiの音を浴び続けた1時間。ステージと客席との言葉のコミニュケーションはなかったが、そこにいた誰もが彼らから放たれる言葉、サウンド、そして世界に入り込んでいた。バンドの後ろに映像が流されることはよくあるが、バンドの前に映像を出す事で映像もバンドのひとつとなり、より詞世界を想像しやすくさせていたように思う。
この公演は、チケットが先行発売地点で高倍率となり、一般発売にて1分以内にソールドアウトしたそうで、追加公演が9月19日に恵比寿リキッドルームで決定している。会場が広くなり、どう演出されるかも気になるところだ。(Rooftop:やまだともこ)
セットリスト
1、ポエジー
2、夏を待っていました
3、ムカデ
4、ポエトリー「飛べない鳥」
5、光、再考
6、つじつま合わせに生まれた僕等
7、アノミー
8、ポエトリー「生きている」
9、さくら
10、無題
11、奇跡
12、ポエトリー「昨日以外の全てについて」
13、この街で生きている
14、カルマ
Live Info.
amazarashi 1st Live「この街で生きている」追加公演
2011年9月19日(月・祝)恵比寿リキッドルーム
OPEN 17:00 / START 18:00
ADV. 3,000 / DOOR 3,500(ともにスタンディング/ドリンク別)
チケット発売:2011年7月30日(土)