モーニング娘。コンサートツアー2010〜ライバル サバイバル〜
亀井絵里・ジュンジュン・リンリン卒業スペシャル LIVE REPORT
(2010年12月15日 横浜アリーナ)
2010年のハロプロ系ニュースをふりかえると、5月3日にメロン記念日がその長い活動に終止符を打つ一方、期待の新人グループ、スマイレージがメジャーデビューしたことに象徴されるように歴史の区切りを感じる1年であった。そしてモーニング娘。にとっても2010年は何度目かの大きな転換点と言える年になった。12月15日に行われた「モーニング娘。コンサートツアー2010秋 〜ライバル サバイバル〜」ファイナルで、6期メンバーの亀井絵里、8期メンバーのジュンジュンとリンリンがモーニング娘。を卒業したのだ。ジュンジュン・リンリンは約3年半、亀井にいたっては8年近く在籍していたことになる。平日にもかかわらず横浜アリーナには約1万人のファンが詰めかけ3人の卒業を熱く見守った。
結成以来13年を越えたモーニング娘。は、1999年に「LOVEマシーン」でブレイクしてから数えても11年のキャリアを積んでいるわけで、女性アイドルグループとしては異例の長さを誇る。但し結成メンバーは既に1人もおらず、グループは常に卒業と新メンバー加入を繰り返すことで「モーニング娘。」という看板を守ってきた。もっともここ数年は(2009年の久住小春卒業はあったものの)メンバーが固定化されており、グループの成長は目を見張るものがあった。9thから11thの3枚のアルバムは音楽的にも成熟度を増し、それを披露するライブ・パフォーマンスもどんどん洗練されてきた。それゆえ、史上最強とも言われたメンバー8人中3人が卒業するというのは、グループにとって間違いなく大きな転換点だ。ここでさらなる変革を遂げるかどうかで今のモーニング娘。の真価が問われることになるだろう。
毎回、卒業コンサートはドラマティックに盛り上がるものだが、今回は3つの意味で今までになく印象的なものであった。1つは亀井絵里の卒業。亀井絵里・道重さゆみ・田中れいなの3人は共に第6期メンバーであるが、約8年間を一緒に過ごした同期の亀井が病気治療のために脱退するというのは、道重と田中にとっても大きなショックだったはずだ。3人でのMC中、いつもと違って何も言葉が出なくなってしまった道重。いずれは6期がモーンング娘。を引っ張っていこうという夢を持っているが、それを3人で叶えられなくなってしまったと告白した田中。同期という3人の間でしか決してわからない胸中の思いが、会場にいたすべての人達の心を振るわせた瞬間であった。
もう1つはジュンジュン・リンリンの卒業。2人とも「モーニング娘。は家族」だと語っていたが、故郷中国を離れて日本で暮らすジュンジュン・リンリンにとってモーニング娘。は文字通り家族の役割を果たしていた。もちろん以前からモーニング娘。には疑似家族的な側面があったが、文化/習慣も異なり、日本語もうまく喋れないジュンジュン・リンリンをグループ(=家族)に受け入れることは、モーニング娘。にとっても大きな試練だったはずだ。メンバーの何人かが「なかなかジュンジュンとリンリンを受け入れることができなかった」と告白していたように、必ずしも家族同士の仲がいいとは限らない。しかし、2人との別れがメンバー全員にとって本当の家族との別離と同じぐらい辛く悲しいことなのが見ているこちらにも痛いほど伝わってきた。発表当時は誰もが驚いたジュンジュン・リンリンの加入。その一番の意味は、モーニング娘。の家族性を一回り大きくすることにあったのではないかと今更ながらに思った。
そして最後に特記したいのはリーダー高橋愛とサブリーダー新垣里沙の成長だ。モーニング娘。の黄金期に加入した高橋、新垣ら5期メンバーは、スター揃いだった先輩達と否が応でも比べられ、多くの厳しい批判も受けた。そのような環境に耐え、必死にレッスンを繰り返し、今ではグループ史上最も長く在籍するメンバーとしてモーニング娘。を牽引するまで成長したのだ。この脚本なきドラマ、演出を遥かに越えた卒業コンサートがこれほど劇的に盛り上がったのは、2人がモーニング娘。として活動してきた10年間の日々の重みがあったからこそだ。
そして2011年はいよいよモーニング娘。に第9期メンバーが加入する(※1)。前人未踏の領域を開拓し続ける彼女達が今後どのような変貌を遂げ、自らの歴史を更新していくのか? アイドルグループ群雄割拠の時代にあって、モーニング娘。はいまだ一番目が離せないグループであることに変わりはない。(TEXT:加藤梅造)
(※1)9期メンバーは2011年1月2日「Hello! Project 2011 WINTER 〜歓迎新鮮まつり〜」で発表される。