Arisa(Gt/Vo)、レオ(Gt)、おの(Ba)、推定無罪中野(Dr)によるオルタナティブ・ロックバンド、國。同じ大学の軽音サークルに所属していた4人が2020年、東京を拠点に活動を開始。昨年リリースした1stアルバム『Kids Return』は、グランジやエモなどのシンプルでストレートなサウンドと、淡々としたクールなボーカルが、無色透明の美しい感情と葛藤を描いた純度の高い作品となった。下北沢ERAでの初ワンマンを皮切りに初の全国ツアーを行ない、今年3月に新代田FEVERでdowntを迎えツアーファイナルを終えた彼らが、5月16日(土)下北沢SHELTERで開催される「Oaiko pre.『これから』」でcephaloと2マンライブを行なう。独特の静けさを持つ國の曲や今後について、Arisaとおのに聞いた。(Interview:小野妙子)
初ツアー、初ワンマン
──初のツアーはいかがでしたか?
Arisa:去年、ワンマンを初日にやらせていただいて半年かけてツアーをやっていくって決まったときは、長いし、全国そんなに回れるのかなとか、ワンマン集まってくれるのかなっていう、正直、不安もあったんですけど、思った以上に来てくださって、思ったよりも國がいろんな人に聴かれてるんだなって改めて実感しました。結構、内向きなバンドで、自分たちのために曲を作っていて、この場が自分たちにとって大事なんだみたいな思いが強いんですね。自分たちのために長く続けるみたいなところを大事にしているバンドかなと思っているんですけど、やっぱり聴いてくださる人とか、支えてくれる、一緒にいてくれるバンドのみんなとか、そういう存在があって成り立つんだなっていう、本当に大事なことを学ばせてもらいました。大きなことが変わるかもとかちょっと思ったりもしたんですけど(笑)、いい意味であんまり変わらず。ツアーのMCでも言ったんですけど、日常の中に溶け込んでいる風景みたいなところがもっと大事になったツアーだったなって思いました。
おの:いろんなところに行けたのが楽しかったですね。岡山とか福岡とか、メンバーのゆかりがある場所だったから、行くついでに地元の観光をしたり、小っちゃいときに遊びに来てた公園とかをみんなで回ったり、そういうのも楽しかったし。アルバム出してツアーしてあちこち回るっていうのがバンドっぽいじゃないですど、そういうのを通してバンドとしての一体感が増したのかなと思います。
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──ツアーの課題やテーマはあったんですか?
おの:アルバムの曲だけでセトリを全部組んでいました。アンコールまで含めて全部。新曲をやったのはファイナルだけですね。東京でしかあんまりライブしていないんで、関西とか行ったときに「やっと観れた」みたいなお客さんとか、CD買ってくれるお客さんとかがいて、対面でそういうのを感じられたのは良かったですね。
──初ツアーの初日が初ワンマンってすごいですね。
おの:ツアーだと持ち時間40分ぐらいとかで回っていくんで、アルバムの曲を全部はできないし、ワンマンだけは昔の曲も入ってたんで、一旦ワンマンやりたいなっていうのはずっとあって。ツアーファイでやるか最初でやるか話し合った気もするけど、最初にやっちゃうかみたいな感じでした(笑)。
生活のループから生まれる音楽
──ツアーが終わって気持ちは先に向かっているかと思いますが、アルバムについて聞かせてください。アルバム以前のEP2枚は、クリーンで繊細なサウンドとハイトーンボーカルで透明感のある印象でしたが、「Huge Moon」からゴリッとした太いサウンドと淡々としたクールな歌い方に変わってかなり印象が違うのですが、ここの変化はなにかキッカケがあったんですか?
おの:それまでは結構、やりたいことや思いついたことを混ぜこぜでやってて。「Huge Moon」ができたぐらいで、こういうのやりたいみたいなのが明確になってきたっていう感じなんだと思います。ずっとアルバムを出したいなと思ってて、自分たちの活動でどういうことをやっていきたいか考えながらギターのレオが作ったのが「Huge Moon」なんです。それで「いいじゃん」ってなって。そこからその方向性で今回のアルバムはそれを深掘りというか、突き詰めていくみたいな形で作っています。
──「Huge Moon」は、おのさんが大きな月を見たときに衝撃を受けて歌詞を書いた曲とのことですが、そのときの衝撃が初めて音楽で衝撃を受けたときと重なったんですか?
おの:そのときにそう思ったわけではないんですけど、そういう体験ではあると思います。デカい存在っていうのに対面したときの「負けた」とかもなくて、「でっけー」っていうだけみたいな。重なる部分はあったんだと思います。
Arisa:圧倒されたっていう感じ。
──無色透明のピュアな部分と、そこが濁っていってしまうことへの葛藤が詰まっていて、その尊い部分を‟淡々”であることと、難しい歌詞で大事に守っているような印象を受けました。とても純度の高い作品ですよね。前半はピュアな勢いや格好よさがストレートに表現されているのですが、後半の「lack」からの感情の歪みみたいなものがすごく気になります。
おの:「lack」はアルバムで一番最後にできた曲ですね。結構追い込まれてて。12曲で出したかったんですけど、間に合うかどうかっていうギリギリの中で作ったから生き急いでるというか、ギリギリの歌詞になってるかもしれない。
──「プラスチックケースは変色して濁る」「透明を失った世界は白む」という歌詞に繊細さを感じます。大人になってだんだん汚れていってしまう、経年劣化というか。
おの:そうですね。そういうことばっかり考えてるかもしれないです。バンドメンバー全員仕事しながら音楽やってて、生活の部分も大事にはしたくて、でも音楽もやりたいみたいな。一方で、音楽に全振りの人たちもいるし。でも自分たちには今これが合ってるなとは思うんですけど、全振りの人たちを羨ましいなって思うときもあるし。逆に全振りの人たちも自分たち側の方が良かったなって思う瞬間があるかもしれないし。
Arisa:レオが過去に話していたんですけど、「この普段の生活があるからこそこの音楽は作れる」っていう。「そこが循環している」って言ってて、確かにそうだなと思う部分もありますね。私は正直言うと、大人の部分もだいぶうまくできるようになってきたところもありつつなんですけど(笑)。やっぱりそれに慣れすぎずに、ちゃんと子供のときに持っていた葛藤とか、純度が高いって言ってくださった部分を忘れないようにしたい気持ちはありますね。昔の曲を聴くとその当時の記憶が蘇ってくるとか、そういうノスタルジックな部分も日々大事にしたいですね。
──さらにそのあと、「hane ga haeta kotomo」辺りからその歪みが増していく感じがします。
おの:この曲は、アルバムのバランスとかも考えて静かな曲を作りたいっていうのがあって。YouTubeとかに落ちてる、外国の宅録の一人だけでやってるスロウコアみたいなのをめっちゃ漁ってた時期で、そのイメージで作りました。
──次の「Tiny Sun」のイントロでリセットされる感じがあるんですが、まただんだん様子がおかしくなっていくというか。ボーカルがループしながらフェードアウトしていって、ギターの一音だけ残るというアウトロはちょっとプログレ感もあって怖いんですよ。
おの:でも、歌詞とかも同じようなことを毎回言ってるような気もするし、自分が日常生きている中で思ってることとかを書いたり曲にしてるんで、そういうイメージが含まれてるのかなっていう感じなんですけど、作ってるときは別にそこまで意識してなかったかもしれないです。ハウリング好きぐらい(笑)。
──究極の表現というか。サウンドが変わっても表現というものが最初から根付いている人たちなんだなと思いました。「痛い」って叫んで歌うよりも心の歪みを感じます。
おの:それはありますね。
Arisa:でも、考え事ってそうなりますよね。考えて考えて終わっていく。意識せずに何かにかき消されて終わっていくみたいな。そういうことが多いかもしれないですね。「Tiny Sun」も歌詞の繰り返し、メロディの繰り返しで、歌はフェードアウトしていって、騒音に飲み込まれるみたいな。
おの:結構思い切ったアウトロだなとは思います。フェードアウト系のアウトロってだんだん盛り上がるし、フィルとかもどんどん入っていくイメージだけど、ずっと同じことだけやってフェードアウトしていくっていうのは、こだわりですね。
──ラストの「Kids Return」は映画の『キッズ・リターン』からきているそうですが、映画のメッセージが1曲目「root」の歌詞そのもので、アルバムの最初に戻っていくっていう、ここもループ感がありますよね。
おの:レオちゃんが北野武映画大好きなんで、アルバムのタイトルを『Kids Return』にしたいって言ってて。でも、「Kids Return」って曲を書いたときは自分はまだ映画を観ていなかったし、コンセプトアルバムではないんですけど。でも、今までの『MOMENTUM』っていうミニアルバムも最初「off」で始まって「on」で終わってて、ギターもキーだけ変えて同じこと弾いてるんですよ。通しで聴いて最初に戻るっていうのが好きなんです。だからその「ずっと繰り返し」みたいなことを常に感じているんですよね。
──日常がループしているということですか?
おの:そうですね。結局、だいたい同じようなことが来てそれがずっと繰り返しっていうのがあるんで、その意識は結構強いかもしれないですね。うんざりしてるわけではないんですけど、その中でちょっとずつ違うことに目を向けていくというか。
Arisa:おのさんは見えてる範囲がめちゃくちゃ広いんです。細かくて広い。新しく家を決めるってなったときに、駅近の家だと帰り道が短すぎてつまんないよねって話をして。毎日同じ道を歩くんですけど、道に咲いてる花とか見て、今日は何が咲いてるとか、そういう細かいところまで目がいって風景を大事にしているところがあるんです。それが曲にも反映されてて。私にはそういう歌詞は書けないなと思いますし、私が書いたらもっと感情重視、感情ベースの全然違うものになるだろうなとか思いながら楽しませていただいてます(笑)。

















