シンガーソングライター・片平里菜が「バンドやるよーーー!!」と発表したのは今年の2月末。『片平里菜バンドワンマンツアー』のタイトルと全国4カ所を周るツアー日程の発表から間髪空けずチケット発売がスタートしたものの、それ以降は全く動静が聞こえてこない。それもそのはず、片平は昨年春にワンマン公演を日比谷野外音楽堂で大盛況に終えてから休む間もないように『風の吹くまま』と題したツアーに突入、しかも当初の予定よりも増えた全73公演（！）がいよいよ6月下旬に完走予定、ではあるものの、現在もなおツアーの真っ最中なのだ。
そんなツアーの合間を縫って、片平里菜バンドが都内でリハーサルをするという情報が。現場にお邪魔して明らかになった気になるバンドメンバーは、IdolPunch／LEARNER BOYS／Riddim Saunterとさまざまなユニットに名を連ねる浜田将充（Ba）に、THOMAS MARQUARDT（トーマス・マルカート）という2人組のバンドであり渡辺俊美＆THE ZOOT16にも参加する高橋飛夢（Gt）＆マコトU.S.A.（Dr）。この3人に、片平里菜（Vo＆Gt）。4人のバンドメンバー揃っての写真は片平いわく「等身大でローカルバンド感ある、自分のバックグラウンドが見えるようなビジュアルにしたかった」。
メンバー全員が話してくれたインタビューの様子から、どんなライブを展開するのかが見えてきたり、推測できるはず。そしてこのツアーが、きっと楽しみになるはず。さぁ、片平里菜がいよいよ、バンドでやってくる！（Interview：高橋ちえ）
バンドで演奏することによって、自分の曲をもっと愛せそうな気がする
──まずは、このメンバーとなった経緯から伺いましょうか。
片平：（1人での弾き語りが）自由すぎて、人と合わせるということがとても難しすぎて。周りの人から「バンドをやったほうがいいよ」と言われながらも、私はなかなかやる気になってなくて。でもこれだけ弾き語りで全国を周った中で“もうそろそろ、やりたいかも！”って自然に思えるようになったときに、本当に真っ先に浮かんできたお三方でした。THOMAS MARQUARDT（以下、トーマス）はもともとライブも観させてもらっていたし、俊美さんのZOOT16でも観ていたりして、（トーマスの）ライブに突撃して「バンドをやりたいんですけど、お願いします」って直談判に行かせていただきました。そして浜さんとは、去年の3月に2人でセッションをやったことがあって。
浜田：うん、まさにこのスタジオでね。（補足：『幡ヶ谷ウヰスキー倶楽部』というイベント／片平里菜 with 浜田将充としてセッション）
片平：知り合って長いので安心感もあって、浜さんにはバンマスをお願いしたいなと思って。
浜田：バンマス……（笑）。「バンドメンバーになれるような人が、誰かいないかな」って里菜ちゃんから話をされた感じでね。ベースはいるとして、あとはドラムとギターがいればバンドになるからね、って話をしてて。
片平：そう、浜さんに相談してました。そんな中で、トーマスは2人なのにこんなにグルーヴ感が出せるんだ、っていうことに衝撃を受けて。今までもバックバンドをつけてやったことはあるんですけど、これまでと全然違うバンドにできそうだ！ って、浜さんに相談して。それでトーマスのライブに直撃、という流れになります。
──“直撃された側”のお話も伺いましょうか。
マコト：客席に、見たことがある人がいるな～ってまず思いました。いや、そっくりさんかな？ って（一同笑）。
高橋：横浜のThums Upだったよね。まさかいるとは思わないし、「何してんの？」っていう挨拶を最初にした気がします。そしたらそこで、バンドの話をもらって。
マコト：その場で、すぐ。「オッケーっす！」って。一呼吸もつかずに（笑）。
片平：二つ返事をいただきました、メッチャ嬉しかったです。それが去年の11月頃の話だと思います。
──里菜ちゃんとしては去年春に日比谷野外音楽堂でのワンマンがあって、それから全国ツアーに突入して。バンドをやるという発表もツアーの最中でしたし、そのツアーは今も継続中ですものね。
片平：はい……今もやっとの思いで息継ぎをしてます（笑）。6月にそのツアーが終わるので一瞬だけひと呼吸を置いてから、バンドをやろうかなと思ってます。今日は、（バンドの）リハに入った2回目で。リハに入ってみて、率直なご感想を皆さまからお願いします。
マコト：まだどうなるかが全然分からなくて、探ってる感はありますね。CD通りにはならないでアレンジも変えると思うし、どうするのが一番良いのかなって1曲ずつ模索してる感じです。前もって里菜ちゃんから「この曲はこういう感じにしたい」って聞いてる曲もあれば、スタジオに入ってからいろいろと、っていう曲もあります。（メンバーみんなで）音を出してみないと分からないところがあるから、試行錯誤をしてる感じですね。
浜田：1曲ずつやってみて「とりあえず一旦これで」っていうベース（＝土台）はできたかな、というところで次の曲やってみよう、という感じで。次にまた合わせてみるとき、さらに詰めていくという流れでやってますね。リハは2回目ですけど……なんとなく、良いです。みんなのセンスに委ねてる雰囲気があって、それも楽しいですね。
高橋：まだ（楽曲を）身体に入れる作業中で、リズム感もそれぞれみんな違うからそのすり合わせをしつつ。僕ら2人が呼ばれたのはたぶん、演奏をするということだけじゃなくてアイディアも買ってくれてるからだと思ってるんで（頷く片平）。里菜ちゃんの曲に意見して、僕らも演奏して楽しい状態にしたいし、聴いてる人も「こういう解釈なのか」って、たぶん聴いたことのない楽曲になると思うからお客さんを取り残さないように。一緒にちゃんと盛り上がれるアレンジにできたらいいなと思いながらやってはいます。この後、何回かのスタジオで形になっていくと思いますけど、みんな優しいから人の意見に対して「それは違う」みたいなことはなくて「こうしたら良いね」って言っている状況で。これってたぶん、最終的には良くしかならないと思うんですよ（笑）。
浜田：やってみないと分からないところが本当にあったので。1曲1曲、曲の雰囲気が違うから全曲をやってみて「こういうふうにまとまっていったら良いな」っていうイメージはできてきてるかな……という感じですね。
──皆さんのお話から察すると、既存の里菜ちゃん楽曲をこの4人のバンドスタイルで演奏すると？
片平：そうです。デビュー当初から新しいものまでフルコースで、リリースして世に出ている楽曲から選出して練習しているところです。今の自分によりアップデートして、自分自身も、そしてバンドとしても、お客さんに対しても楽しませられるようなものにしたいなという思いで（楽曲を）選びました。皆さんが仰る通り、今はまだ本当に探り探りで（笑）。すっごい昔の曲とか10年以上ライブでやっていない曲とかも押し入れから引っ張り出した状態なので、自分の曲なのに私自身も全く身体に入ってない曲もけっこうあったりして、“あれ？ ここのコード？”みたいな感じで（笑）やってたり。まだ2回目のリハですけど、このメンバーで探り探り、音を合わせながら。自分の過去の曲をもっと愛せそうな予感が……しました。今まではプロデューサーさんとかアレンジャーさんに音作りをお任せしていたり、バンドセットでやるときもおんぶに抱っこみたいな感じで音を作ってもらう曲も多かったんです。全てを自分で決めてやっていたわけではなかったので、自分の楽曲に対しての自信が、あまりなかったんですね。なので、そんな曲たちをいま一度引っ張り出してきて、スキルも経験値もある一流の（バンドメンバーの）皆さんと同じ目線で、納得しながら一緒に決めていけている感じが今はすごくあります。
──最新作『Redemption』（2023）の楽曲に関しては、おおはた雄一さんと一緒に作り込んだ感じがありますし、里菜ちゃんのテイストをちゃんと入れて制作できた楽曲でしょうけどね。
片平：そう。だから最近の曲は、自分の中にその曲の正解があるから（バンドアレンジも）早いですね。過去の曲は、自分の曲なのに自分で正解が分からない状態なので（一同笑）、皆さんも探り探りという状況になっていると思うんです。だから本当に大変だと思います。
高橋：いや、楽しいです。
片平：皆さん本当に……メチャクチャ優しいです。
浜田：みんな、このお姉さんにちゃんと引っ張られてますよ（一同笑）。
