映像も頑張らないといけないなと身が引き締まりました
――キャストのみなさんへはどういった演技指導をされたのでしょうか。通常の映画ではストーリーの流れは変わりませんが、今作では複数の分岐があるのでシーンごと感情を作るは大変だったのでは思いますがいかがでしょう。
辻本:その心配はしていなかったです。そこはプロの皆さんです、しかも8年目になる作品ということでキャラクターを熟知されているのでお任せしました。
中岡:みなさん百戦錬磨の方々なので、スムーズに進みました。演出面でいうと負けた時の方が大事なんです。
辻本:負けた後のやり取りではアドリブでお任せしたところもあります。みなさんがそれぞれで相談して作ってくださいました。その姿を見てこうやってキャラクターは出来上がっていくんだなと思い、映像も頑張らないといけないなと身が引き締まりました。
――LIVEパートだけでなく、通常の会話パートも音を先に録られたんですね。
中岡:ポリゴン・ピクチュアズでは、先に声を録って映像をつくっていくんです。そうやって制作をしても、セリフが足りなかったり、リテイクが出たりで追加収録が発生するのですが、今回は全くありませんでした。
辻本:録り直しとなるとみなさんのテンションも変わってくるでしょうしナシで行けるといいなと進めていたのですが、実際にそうなってビックリしました。みなさん素晴らしかったです。
――楽曲ごとの演出はどうやって進められたのですか。
辻本:最初にこういう組み合わせでというのはありましたが、どういう構成にするかは一度僕に振っていただけました。「最後に勝者が自チームの曲を歌う、それがご褒美だ」というのがあったので、そのことを念頭に置いて構成していきました。1回戦と2回戦では違う見せ方をしないといけないなというのが僕らの中であり、本当にラップバトルをガチンコでやっている感じを表現したいと思って進めました。
中岡:「トーナメントの山が3つになるから、2回戦はどうしてもパフォーマンスバトルになるね」という話はしていました。最後に全員でのLIVE空間を作るので、そこに向けてどうやって味付けを変えていきましょうかということを話し合っていきました。パフォーマンスバトルを自由な方向でとなったので、別の演出の方を連れてきた方がいいんじゃないかとなったんです。
辻本:最初は会場の中でパフォーマンスバトルが完結する形も考えていましたが、「ぶっ飛ばそう!会場という空間にこだわらなくてもいいじゃないか」とどんどん妄想が盛り上がっていました。さぁ始めるぞとなったときに中岡さんから「辻本さんが全部やると、負担が大きすぎるんじゃないか」とご提案があって。そこで僕も冷静になり、凄い数をコンテ切らないといけないことや、自分の引き出しにも限界はあるだろうと。気がついたら同じ演出になってしまっている、なんていうことにもなりかねないので、パフォーマンスバトルの部分はお願いすることにしました。
――楽曲を制作されているみなさんがまた豪華です。実際にいい曲ですし、ラップにそれほど馴染みが無い方でもわかるような方々が集まっていて。実際に曲を聞かれていかがでしたか。
辻本:意外と爽やかな曲もあって、こういうパターンもあるんだと驚きました。いただいた楽曲をキャラクターがどう歌うんだろうと想像しながら何度も繰り返し聞きました。そうすると脳内に映像が自然と浮かんできますので、それをコンテに落とし込んでいきました。
音楽として、映像とともにと2つの形で楽しめる
――今までにもヒプマイの楽曲を聞いたことはあったのですが、今回ほどガッツリ聞いたことはありませんでした。映画館という音響のいい環境で改めて聞いていい曲だなと発見がありました。今はヒプマイの楽曲をヘビロテしています。
中岡:ありがとうございます。1人ファンを増やすことが出来ました。
――映画館という音響環境が整った場所で聞くとさらに良さが分かります。
中岡:作中で使用された楽曲の配信が開始されていますが、映画館の音響で聞くということはまた別の体験でした。あの迫力は映画館ならではだなと思います。
辻本:ヒプマイを知らないという方は配信されている楽曲から気軽に触れていただけると嬉しいです。
――音楽作品はそういう入り方もありですね。
中岡:楽曲配信が始まって僕も今聞いていますが、音楽だけで聴くとまた新鮮です。映画制作を進めていく中で山ほど聞いていましたが、その時は映像とセットで聞いているんです。改めて楽曲だけで聞くとリリックの入り方など新鮮でした。音楽として、映像とともに2つの形で楽しめるのも『ヒプマイ』の良さですね
――そうやって映像と音楽の両方から深く作品世界を楽しめるのは音楽作品ならではですね。
中岡:そうですね。
――楽曲も含めて映画も楽しい作品でした。
辻本:ありがとうございます。映画の中には「このアングル・このポーズどこかで観たことある」といった過去のイラストをオマージュした要素も盛り込んでいます。今まで応援してくださったヒプマイファンには“自分へのご褒美”だと思って、ぜひ楽しんで欲しいです。
©ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- Movie
※辻本貴則の辻は、いってんしんにょうが正式表記