休みなく叩き続けるほうがラクだし、何十曲でも叩ける
──結果的に“ARB KIDS”なら間違いなく終始楽しめるラインナップと選曲になりましたね。
柳沼:今回は本当に苦労したけど、何とか形にできて良かったです。こうした顔ぶれなら、KEITHさんが当初から話していた「自分よりも下の世代と楽しくやりたい」というコンセプトと合致するし、レアな曲から王道な曲までバランス良く織り交ぜることができました。
KEITH:俺は全然苦労してないんだよ。難解なパズルは全部ヤギちゃんがやってくれたから(笑)。
──KEITHさんは最初から最後まで出ずっぱりですけど、体力的にキツくないんですか。
KEITH:ずっと出てるほうがラクなんだよ。最初はメインステージとBARステージに分けてやる話もあったんだけど、途中で休むと身体が冷えて、却って調子が悪くなる。休憩を入れずに出ずっぱりのほうがいいし、何十曲でも叩けるよ。ずっと叩きっぱなしのほうがラク。
柳沼:一度休むと気持ちがだれる部分もあるんでしょうね。それならその意気に応えて一気にARBソングを聴ける構成にしようと。この演目を一気に楽しめるのは凄いことだと思います。
──まもなく73歳を迎える今なお2時間以上のステージで休みなく叩き続けられるのは、絶え間ない日々の鍛錬の賜物ですか。
KEITH:そうだね。朝のウォーキングは欠かさないし、武道をやってみたり、2.5kgの鉄下駄を毎日履いてみたり。そういうことをしないと、当たり前のように体力は落ちていく一方だから。体力を維持するために週に何日かスタジオに入ってドラムを叩き続けてる。俺はもともとテクニックどうこうのドラマーじゃないから、地道に練習するしかない。
──各セクションのリハーサルは?
柳沼:これからです。これから全員のスケジュール調整という第二のピース作りが始まります(笑)。でも皆さん充分に弾けて唄える人たちなので、何の心配もありません。今度はNG日のピースを合わせるだけなので。
KEITH:楽しみだよね。自分でも楽しめる曲を選んだつもりだし、たとえばイントロが鳴ればお客さんがウワーッとなるような曲もあるはずだし、お客さんに「こんな曲もやるんだ?!」と喜んでもらえるのが一番だね。しばらくやってなかった曲、メンバーによってやらなかった曲もあったし、今回はそういう曲も入れたから楽しめる人がきっと多いと思う。
柳沼:なかなか聴けない曲を味わえる日になると思います。それと当日は、KEITHさんが一味違った試みをやるというミッションもあるんです。
KEITH:そうそう。今まで一度もやらなかったことをやりたくてね。長年温めてきたアイディアなんだけど、今度のライブでやっとやれる。凄く面白い試みだと思うし、それが結局のところ俺のドラムの本質っていうかさ。
柳沼:これを読んでいる人は何が起こるか見当がつかないでしょうけど、見たことのない至高のパフォーマンスを目撃できることだけはお約束します。その後にちゃんと見たことのある演目が控えているのでご安心ください(笑)。
──ARBのデビュー40周年記念ライブでKEITHさんが最後に「ARB、まだ続けます!」と高らかに宣言した通り、こうした形で有言実行されているのが嬉しい限りです。
KEITH:たくさんの仲間たちがこうして協力してくれるお陰だね。俺一人じゃ何もできないから。
──デビューから47年を経てもなおARBの楽曲が愛され続けているのはなぜだと思いますか。
KEITH:やっぱり、楽曲が古くならないからずっと親しまれ続けているんじゃないかな。何十万枚ヒットしたとかもの凄く売れたわけじゃないけど、みんな忘れずに覚えてくれている。本当に有難いことだよね。
柳沼:ARBの歌を聴くといろんな景色や場面と遭遇できるんです。僕は工業地帯で生まれ育ったので特に、ARBの“WORK SONG”を聴くと身に染みるわけですよ。自転車を漕ぎながら工場の煙突が吐き出す煙を見る画が浮かんでくる。
KEITH:(石橋)凌の詞がいいんだよね。いま聴いても古くないし、却って大人になってからのほうが深く染み渡るものがある。
──物価上昇は止まらず、実質賃金が30年近く下がり続ける今の日本では尚のことARBの“WORK SONG”に共鳴するところがありますよね。
柳沼:だからこそ今回のライブは必見だと思うし、バンドが残した楽曲を今に伝える新しい形かなとも感じるんです。
ARBの歌を残していくのが自分の役目
──古希を過ぎてもなお8ビートを主体とするロックンロールを叩き続けるKEITHさんの、今なお凄みのあるプレイを聴く・観るだけでも価値のあるライブですよね。
KEITH:去年もツアーを回ったし、ハコの大小にかかわらずお客さんの目の前で叩けるのが今は最高に楽しいもんね。
柳沼:全国の“ARB KIDS”がKEITHさんに会える機会があるのは嬉しいでしょうね。間近で見れるなら尚のことだろうし。
──今回の出演者から精鋭部隊を集めてツアーを回るのも面白いのでは?
柳沼:大型バスを借りて(笑)。それもアリだし、このライブを終えた後にまた新たな目標が生まれると思うんです。次は歴代のARBメンバーにお声がけしてもいいだろうし、もっと下の世代のバンドマンに参加してもらうのもいいだろうし。今回の各セクションを入れ替えてやるのもいいと思うし。さっきも話に出ましたけど、聴く人をこれだけ無邪気にさせるARBの楽曲を眠らせておくのはもったいないですよね。
KEITH:そうだね。今年は戦後80年でもあるので「××××××××」を、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとパレスチナの紛争がずっと続くので「×××××××」を今回の候補曲に挙げたんだよ。今の時代に意味のある曲をやっておきたかったから。テンポが速くて盛り上がる曲もいいけど、世相を反映させた曲もやっておきたくて。
柳沼:ARBの歌は時代とシンクロしたものが多いんですよね。唄い継がれるべき曲が多いし、色褪せず古びていないことを証明するライブにもなると思います。見る側はもちろん、やる側も楽しいライブになるでしょうね。
KEITH:出てくれるみんなにもぜひ楽しんでほしいし、俺としてはそれが一番嬉しいね。もちろんお客さんも一体となって楽しんでもらいたいし、終わった後にLOFTにいる全員が良かったと感じるライブにしたいよね。
──73歳を迎えるにあたって、KEITHさんの抱負を聞かせてください。
KEITH:これからもずっと元気にドラムを叩き続けていきたいね。この歳になってもたくさんの仲間たちが協力してくれるし、ヤギちゃんが言うように今度のライブをやり通したらまた一つの目標ができると思うし。やっぱり俺の役目というのは、こうしてARBの歌を残していくことなんだよね。新しい曲はできないけど、そこは開き直ってARBの曲しか叩けないってことでいいんじゃないかと思ってる。ヘンに色気を出してできないことをやるよりも、大切なARBの歌を残していくことを貫き通したい。
柳沼:その筋を貫き通すことは大変なことだし、KEITHさんにしかできないことですよね。
KEITH:でも、ARBは俺一人でやってきたわけじゃないからね。歴代のメンバーとスタッフがいたお陰でここまでやってこれたし、バンドの在り方に合わない人はやめてきたけど、俺はまだやめるつもりはないからまだまだ残していきたい。
──僕らがいまだにARBの歌に胸躍らせ、無邪気でいられるのは、KEITHさんがARBの看板を一度も下ろさずにいてくれるからこそです。これに尽きますね。
柳沼:まさにその通りです。KEITHさんがずっとARBの看板を下ろさず、ずっと上にいてくれることで僕らを含めた下の世代を引っ張ってくれるし、ロックの文化的地層に広がりを持たせているんだと思う。
──では最後に、今回のバースデイ・ライブへお越しになるお客さんへ向けて一言ずついただけますか。
柳沼:KEITH先輩から直々に制作を依頼されてこんなに光栄なことはないし、お客さんと一緒にみんなでKEITHさんのお祝いをする良い一日にしたいですね。
KEITH:とにかく一緒になって楽しんでほしいよね。その時代に戻って唄ったり踊ったりしてさ。最高の仲間たちと一緒にARBの歌を届けるので、ぜひ楽しみにしていてください。