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トップインタビューひかりのなかに - 音楽の神様を信じ続けるヤマシタカホが新メンバーを迎え、新生ひかりのなかにを始動させる意図とは

音楽の神様を信じ続けるヤマシタカホが新メンバーを迎え、新生ひかりのなかにを始動させる意図とは

2025.01.08

 2024年は周りが見ても本当に"一生懸命に"活動をしてきた、ひかりのなかに。活動再開以降は"ヤマシタカホが一人、がりごり進めているプロジェクトでありロックバンド"として、バンド形態のライブはサポートメンバーと共に、弾き語りでは一人ギターを抱えステージへ。昨年は活動再開後は初となるCDもリリース、ひかりのなかにという音楽を届けるべく日々、邁進してきた。
 そして2025年、新年早々の発表に嬉しさを覚えた方もいらっしゃるだろう。これまでサポートとしてドラムを叩いてきたサディスティック天野が、ひかりのなかに・新メンバーとして1月1日付で加入したのだ。新体制・ひかりのなかに、今年のライブ初めは1月11日(土)新宿LOFT。『ミューズをしんじてる』のタイトルでワンマン公演を行なうが、チケットはもう本当に残りわずか。同タイトルの会場限定盤もこの日にリリースがあり、年始早々からお楽しみをいっぱい持って、ひかりのなかには活動がスタートする。年始のライブへの意気込みから、"CD"というパッケージに対する思いまで。世代は関係なく誰しもが、共感できるポイントがどこかに必ずあるに違いないインタビューだと思う。(Interview:高橋ちえ)

リスナーの皆さんと一緒に歳を重ねながら、今までとは別の角度から生まれた楽曲も収録した『Charm』

──駆け抜けるように2024年は動いていたような印象ですが、『Charm』というEPをリリースしたことも大きかったですよね。

ヤマシタカホ:そうですね。振り返るとスケジュールがタイトになりながら制作したという印象ですけど、出せて良かったです。活動を再開した2023年は、バンドをやっていたときのことを思い出しながら(自分を)立て直すために必死で頑張って、だんだん感覚が戻ってきて余裕が出てき始めた頃に「リリース、やらなきゃ」と思って。少しずつですけど曲も溜まってきてデジタルリリースはする中で、そういう(配信等の)やり方の方がもしかしたら広がりがあるのかなと思いつつ、自分はやっぱり、CDを作る・形に残すということを大切にしていきたいところがあって。でも自分一人でやらなきゃいけないので正直、お金の面とかリアルなところをどうしようかなと思ったり、壁はあったんですけど、それでもやっぱりCDを作りたいと思って。結果として、すごく良い作品になったなと自分でも思っています。

──CDという、形に残したかった。

ヤマシタカホ:自分の音楽との出会いって、ストリーミングじゃなくてCDだったんですよね。それは時代もありますけど、たとえ時代がどう動こうとも、自分の好きなものが手元にあるという感動が、必要なものだと私は思っているんです。同世代のバンドもCDを作らなくなったりしているけど、私のバンドはCDを作ることを大事に思っているよ、ということで。CDができて店頭に並んで、足を運んで買いに行って、もしかしてその先でプレイヤーに入れて音が流れるところまでは行かなくとも。グッズという扱いになっても良いから、私の音楽が好きな人には、自分が好きだという音楽の一つの思い出になれば良いなと思って。それだけを考えて作りました。

──ご自身の原点として、手元に残した最初のCDって何でした?

ヤマシタカホ:母がCDをたくさん持っている人で、そういった意味では母が持っていたものが最初の1枚目になるかも、と思ったりもしてよく覚えてないんですけど…中学生のときに塾に通いながら、本当にわずかなお小遣いを持ってディスクユニオンに立ち寄って(笑)、ただ(CDやレコードを)見るだけでも楽しかった記憶があって。それで、PerfumeとかユニコーンのCDを買ったりしたあの体験が、私にとっては宝物を見つける…じゃないですけど、思春期ど真ん中に「他の皆が持ってないものを私は自分で見つけた!」って一生懸命探して買って帰るのが楽しかったし、その体験が自分を作っていったと思っていて。母の収集癖が私の人生が決まる瞬間だったのかもしれないんですけど(笑)、食卓とかでもCDをプレイヤーに入れて音楽を流すということがありましたし、だからCDというものが私にとっては今までの思い出もあって、愛着があるものになっているんだなと思います。

──なるほど。そういう意味で『Charm』は、見つけたら手にしたくなるようなジャケットですね。

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▲2024年6月にリリースされたEP『Charm』

ヤマシタカホ:ありがとうございます。うめはらももさんというイラストレーターの方を(SNSを通して)見つけたとき、愛着が湧くような可愛いイラストを描いていらっしゃるなと思って。自分たちらしいものが作れて、部屋に飾っても馴染むようなジャケットを目指して、今回も絶対にお願いしようと思いました。

──そしてアルバムのタイトルにしても、持っていたいと思うようなタイトルだと思います。

ヤマシタカホ:タイトルはすごく悩んだんですよね。今までの作品も、曲名にしてもほとんどそうですけど、英語のタイトルって出したことがなくて。『放課後大戦争』(2019)っていうEPから始まって、日本語でパッと見て分かるものにしたいっていうこだわりがあって。日本語のロックをやっていて、同じタイトルのものが世に少なければ少ないほど良いなと思いながら、日本語で見える形に統一することで芯が通ってるように見えるかなと思っていたし、意味を持ちつつ埋もれないように頑張ってました。バンド名も平仮名だし続けていきたいなと思ってましたけど、活動休止を経て再開するタイミングで、曲に初めて「pray」(2023)という英語タイトルをつけて。そのときにこだわっていた部分を一つ崩したし、今回は一番前に出るアルバムのタイトルも英単語でやってみようかな…って。それで『Charm』と名付けてみたら、単語一つとってもいろんな意味が勝手についてくる(笑)、そんなところも意外と気に入って。これから柔軟にやっていける一歩になって良かったなと思ってます。

──EP『Charm』の紹介には「魅力 お守り おまじない というメッセージを込めている」と書いてあって、確かにいろんな意味がありますよね。でも、日本語で統一してきたものを止める勇気も必要でしたでしょう。

ヤマシタカホ:そうですね…迷ってしまって、だから全然タイトルが決まらなくて。思い返してみればこれまでのどの作品もなかなかタイトルが決まらなかったんですけど、今回は特に時間がかかったと思います。アルバムの曲が全部揃ってから何回も何回も通して聴いて、どうしようどうしようって悩みながら、やっと決まったタイトルでした。

──そんなEPは、ひかりのなかに、の今をぎゅっと詰め込んだEPでした。

ヤマシタカホ:サポートメンバーのことも尊重したい、というのが最近のテーマになっていて。シューゲイザーのバンドをやっている女の子が(サポートに)入ったら、シューゲイザーっぽいセクションがある。実際に「pray」という曲のパートにあるんですけど、その子がいなかったら生まれなかった音楽だと思いましたし、それが(バンドの音楽性として)ブレてると言われたらそれまでですが、私の音楽というものがある上で、私の音楽を彩ってくれるメンバーがどんな音楽を通っているのかというのを尊重したいと思っていて。なので『Charm』は、ひかりのなかににとって、とってもバリエーション豊富にできたなと思って。私も知らないひかりのなかに、が急に出てくることもあったので、私の音楽って変わっていけることもあるんだっていうのも、制作の中ですごく楽しんでいたところでした。

──サウンド作りにおいても柔軟性が出てきて、とても良いのではと思います。全6曲の中で個人的には「タウン・オブ・メモリーズ」が新しい境地かなと感じましたね。日常をとてもナチュラルに、歌う声にもとても柔らかさを感じて。

ヤマシタカホ:ありがとうございます、日常を書くということは私にとってちょっとした挑戦でもあったんですよ。“がむしゃらに必死こいて頑張る”みたいなところが魅力だと言われたりする中で、頑張ろうっていう気持ちを受け取った側も、それを自分の言葉として“頑張らなくちゃ”って思えるエネルギーになる。リスナーと私の間にそういう関係性があるものだと思ってバンドを続けてきたんですけど、ふとした幸せな瞬間とか、この時間を大事にしたいなという柔らかい気持ちみたいなものは、ひかりのなかにで考えたら果たしてどれぐらい必要なんだろうか…と、実は考えたりもして。でも、私が暮らしていく中で感じたことに変わりはないし、ひかりのなかにの良さを別の角度で増幅してくれるんじゃないかと信じてこの曲を書いたんですね。書いてみて、ひかりのなかにのイメージを私が気にしすぎだったんだなと思ったし、「今までの曲の中で一番好き」って言ってくれる人もいて、ひかりのなかにを勝手に決めつけていたのかな、と思って。「タウン・オブ・メモリーズ」とEPの最後に入っている「彼女」の2曲は、リスナーの皆さんと一緒に自分も歳を重ねているということで、魅力の一つとして出ていたら良いのかなと思っています。

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会場限定盤
『ミューズをしんじてる』

2025年1月11日(土)発売
100枚限定
ジャケットイラスト:うめはらもも

【収録曲】
「あたし」
「すてきなひとりぼっち」
「pray」
【特典】
「あたし」制作メイキング映像

LIVE INFOライブ情報

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ひかりのなかに 主催公演『ミューズをしんじてる』
【出演】ひかりのなかに
【日程】2025年1月11日(土)
【時間】開場11:00 / 開演11:30
【会場】新宿LOFT(BAR STAGE)
【チケット】前売¥2,000 / 当日¥2,500(共にドリンク代別¥600)
LivePocketにて発売中|1月11日(土)11:30まで受付
【問い合わせ】新宿LOFT 03-5272-0382
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