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INTERVIEW

トップインタビューフレッド・ヘッキンジャー(俳優/カラカラ帝 役) - 『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』俳優にとっても没入型の現場

俳優にとっても没入型の現場

2024.11.15

2000年に多くの観客を魅了した『グラディエーター』から24年、多くの人が心から待望していた『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』が公開される。本作でも描かれた生命の尊さ・引き継がれる意思・人間としての尊厳。重厚でその場に居るかの如くスクリーンから伝わってくる熱量はどのように紡がれたのか。実在し本作では主人公ルシウスに相対したカラカラ帝を演じ華を添えたフレッド・ヘッキンジャーに話を聞いた。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]

やりがい・挑みがいがある役柄

GL2_21712Rre.jpg――『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』は素晴らしい映画でした。カラカラ帝も凄く魅力的なキャラクターで魅入られしまいました。
 
フレッド・ヘッキンジャー:ありがとうございます。
 
――日本の映画ファンは悪役を演じるのが上手い俳優は、優れた俳優だという認識を持つ方も多いです。まさに今作のカラカラ帝も素晴らしいキャラクターでした。俳優として悪役・敵役を演じることの面白さと難しさはどういったところにありますか。
 
フレッド:映画の素晴らしいところの1つに人間があまり見たくない部分もエンタテインメントとして楽しみながらダーク世界にいざなってくれるところがあり、そういう部分も映画の魅力的なところなのだと考えています。私は悪役の方が、多面的で人間らしさ・人間臭さが出ることが多いと思っています。
 
――悪役の方が人間の持っている欲望やダークな部分を表に出すことが多いので、観客としてもそう感じることは多いです。
 
フレッド:悪役は自分で演じていて次に何をしでかすのか分からない、どうでるのか分からないといったスリルを感じることがあります。演じるのはもちろん難しいですが、俳優としてやりがい・挑みがいがある役柄で楽しかったです。
 
――カラカラ帝は怖さのなかにも可愛らしさがありました。
 
フレッド:そう言っていただけ、すごく嬉しいです。悪役のもつ人間臭さは双子の弟・ゲタ帝を演じたジョセフ・クインとともに出していきたかった部分です。カラカラ帝・ゲタ帝の双子兄弟はもちろん極悪非道で残虐ですが、子供っぽく、内面的な部分で未発達な部分があります。どれだけの富と力を得ようと、彼らにとって一番大事な存在、お手本になるような大人、一人前の大人になるよう育ててくれる親が不在なんです。その心に空いた穴という部分を出していきたかった所です。
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――彼らは人間味があるので、怖さの中にもどこか理解できる部分もありました。カラカラ帝・ゲタ帝は双子の兄弟です。似ていながらそれぞれのキャラクターを立たせなければいけない部分もありますが、どのようにお互いのキャラクターを共有していったのでしょうか。
 
フレッド:通常の映画では自分ひとりで演じるキャラクター像を作り上げていき、共演者のみなさんとは現場で初対面ということが多いです。今回は恵まれたことに撮影の数週間前から二人でじっくりとリハーサルが出来る機会を設けていただけました。二人でそれぞれの役を作り上げる中、一番軸になったのはコロセウムなど公の場で見せる顔とプライベートの顔にメリハリをつけることです。公の場に二人で並んで登場するときはある種のエンターテイナーのような雰囲気もあり、皇帝としての姿を演じている部分があります。ひとたび公の場を離れると全く違う独自の二人の性格・人間性を表現することを意識しました。シーン・セットからその場に合わせた内面を作り上げました。
 
――確かに振り返ると公的な場と宮廷内のプライベートな二人は違うキャラクターかと思えるほどコントラストがあって、凄く面白かったです。
 
フレッド:ありがとうございます。

興奮ややる気は伝染する

GL2_07404R3re.jpg――リドリー・スコット監督はどのような方でしたか。
 
フレッド:元々リドリー・スコット監督の大ファンで、子供のころから『ブレードランナー』『エイリアン』『テルマ&ルイーズ』もちろん『グラディエーター』も観ていました。これは本当に同じ人が撮った作品なのかと驚くくらい幅広いジャンルを監督されていて、毎作品観るごとに驚かされます。娯楽超大作であり、非常にキャラクター重視で、人間性を深く掘り下げていくということにかけて右に出るものがいない非常に素晴らしい監督です。そんな名監督の作品に出られたということは、私自身のキャリアにとってとても大きな意味を持ちます。実際に一緒に仕事をして驚いたのは、あれだけのベテラン監督でありながら初監督作品を撮っているかのようなはしゃぎっぷりで、誰よりも楽しそうで、誰よりも元気いっぱいなんです。そういう興奮ややる気は伝染するじゃないですか、そういった気持ちを持ち続けるのは素晴らしいと思います。
 
――その熱量がスクリーンから伝わってきました。撮影時に驚かれたことはありましたか。
 
フレッド:通常の撮影ではカメラ1~2台で、1つのアングルを撮ったら次のアングルと変わっていき、それを繋ぎ合わせるということが多いんです。リドリー・スコット監督がほかの監督と違うのは、常に10台くらいのマルチカメラでありとあらゆるアングルから一斉に撮っているという点です。長回しのように途切れることなくその場で起こっていることを撮り続けていました。例えばコロセウムのシーンではCGではないリアルなセットの中に居て、シーンごとに感情を爆発させて、耐えず演じ続けなければいけない。しかも数百人の群衆が騒いでいる中なので、それを上回るボリュームで話さなければいけないんです。
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――それは俳優側も臨場感が違いますね。
 
フレッド:俳優にとっても没入型の現場でした。ああいった撮影は初めてだったので、とても刺激的でした。先ほどは「初監督作を撮っているようだった。」と言いましたが、さすがベテランだなと思うこともありました。
 
――それはどういった部分ですか。
 
フレッド:彼は常にカメラの横に座って、葉巻をふかしながらそれぞれのカメラの画を映しているモニターを一斉に観ているんです。そこで彼は「いいかみんな、10台のカメラを与えられたら回すことは誰にでもできる。それを正確にどこに置くかというのを頭の中で完全に把握しているのはおそらく俺だけだ。」と言うんです。確かに、その通りでした。
 
――本当にどのシーン・カットも美しく・迫力がありました。完成した『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』を観られていかがでしたか。
 
フレッド:まだ感想をまとめ切れていない部分はありますが素晴らしい映画です。本作は映画館の大きなスクリーンで多くの観客と一緒に観てこそ本当の良さを体感できる作品です。私が観たのは試写室で1人という環境だったので、本作の真価を発揮する映画館で改めて本当の魅力を感じたいと思います。
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©2024 PARAMOUNT PICTURES

LIVE INFOライブ情報

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
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日本公開日:11月15日(金)
全米公開日:11月22日(金)
 
-staff-
原題:『Gladiator II』
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・スカルパ
キャラクター創造:デヴィッド・フランゾーニ
ストーリー:ピーター・クレイグ、デヴィッド・スカルパ
 
-Cast-
ルシアス:ポール・メスカル
マクリヌス:デンゼル・ワシントン
アカシウス:ペドロ・パスカル
ルッシラ:コニー・ニールセン
ゲタ帝:ジョセフ・クイン
カラカラ帝:フレッド・ヘッキンジャー ほか
 
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