自身のバンドでもあるメレンゲとしての活動のみならず、ソロとしてもライブ含め多角的な活動を続けているクボケンジ。3月11日に自身の主催イベント『クボノヨイ』、そして3月27日には田中ユウイチ(藍坊主)らとイベント出演、4月12日にはメレンゲとして新宿LOFTへでの公演が決まっており、2024年早々アクティヴに動き始めている彼に自身のイベントへの抱負と今年歌舞伎町移転25周年の新宿LOFTへの想いについて話を伺ってみた。(Interview:鈴木ダイスケ)
ライブがしたいなと思ったのが、やっぱり単純な思いなんですけど
──クボくんとはだいぶご無沙汰なんですけど、今回はよろしくお願いします。
クボ:ですよね。でもたまにX(旧Twitter)を開いたら、KANさんのことをけっこう書いてらっしゃったりしてるのは時々見てますよ(笑)。あれはすごく共感してました。
──ほんとですか。ありがとうございます(笑)。
クボ:ああ、ちゃんと聴いてた人なんだなあって。僕も世代的にも好きなミュージシャンだったので。
──ちなみに話すのは20年ぶりぐらいですね。僕がLOFTでイベント(『てぃーんずぶるーす2001』)をやらせていただいてた頃ですから。
クボ:そうですよね。まだインディーズで活動してた頃だったと思います。
──今回あらためて近況を調べてたら、昨年末ぐらいにネットでアップされてた曲(「winter ride」)を聴かせていただいてめちゃくちゃいいなと。
クボ:ほんとですか。ありがとうございます。去年の12月とかだったんで、クリスマスも近かったし季節感みたいなものは狙いましたね。
──曲調的にもストレートなポップソングな方向で。
クボ:はい。アップしてるのはデモなので、ドラムも生ではないんですけど。ライブはああいう形ではないですよ。ちゃんとバンド編成でやりますし。
──で、今回はライブの話を中心に伺いたいんですけど、まずは3月に2本やられるじゃないですか。
クボ:ですね。3月11日に『クボノヨイ』って、これはずーっと続けているイベントでもあるんですど。
──山本健太(key)はオトナモードの方ですよね。メレンゲよりもちょい世代が下に当たると思うんですけど。
クボ:ですね。世代的にはあんまり被ってないんですけど、僕が彼らの演ってる音楽が好きだったんですよ。ライブも観に行ってたし。それで声をかけたんです。
──もともとこのイベントをやり始めた経緯って覚えてますか。
クボ:うん、まずライブがしたいなと思ったのが、やっぱり単純な思いなんですけど。僕の場合、(メレンゲ名義で)バンドで動かすとなるとけっこう何カ月も前から決めたりとか、半年前からいろいろと大変なこともあるんで。プロジェクト自体が大きくなってしまうことで腰が重くなるのもね。
──なるほど。もうちょっとフットワーク軽くやりたいって感じだったんだ。
クボ:ですね。弾き語りの延長だとLOFTの樋口(寛子)さんもいるんで相談もしやすいし。「できるかな?」って言ったら、フットワーク軽くやらせてもらえたりするんで。
──LOFTともメジャーデビュー以前からの付き合いですもんね。
クボ:あと、もともと僕たちって他のバンドに比べてそんなにライブしてこなかったんですよね。それもどうかなって思ってたので、数年前からこのイベントをやるようになったんです。
──僕の主観ですけど、今までライブをそんなにやってこなかったっていうところに関しては作家体質っていうか、そういうところってありますよね。きっとね。
クボ:作家体質というか、レコーディングとかスタジオ作業が好きだったというのはありますかね。
──楽曲の世界観っていうのをすごく重要視するというか。うん。それ故に何カ月も前からの下準備とか、そういうふうな部分もあるかと思うんですけど。
クボ:あとは時間がないからじゃないですかね(笑)。
──中堅、ベテランの作曲家なりアレンジャーの方々ってある時期を越えるとライブモードに走る人って多いと思うんですよね。バンド編成とかそういうところにこだわることなく人前で演りたがる傾向って僕はあると思ってて。
クボ:そこは僕もあると思うし、否定できないですよね。あとはさっきの時間がないってところにつながりますけど、この先の人生を逆算して考えると「どこまで自分はやっていけるだろう?」って問題はありますよ。
──それはちょっと早い気もするけど(笑)。
クボ:いやいや、早くないですよ。KANさんじゃないですけど、やっぱりね…自分がいつどうなるかなんてわからないですし、後悔は残したくないじゃないですか。
──確かにそうだ。
クボ:だから『クボノヨイ』に関してはちょっとでも人前で演る機会を増やしていこうかなっていうのはありましたよね。
“ポップス”に対しての憧れは人一倍ある
──アコースティック編成で人前で演るとなると、レコーディングでスタジオ作業してるのとはだいぶ気持ちの上でも違うでしょう?
クボ:はい。僕の場合、自宅でレコーディングもやりますけど最後まで納得したことがないんですよ。いや、作業終わってそのときは「いいな」と思っても聴き返すと「この部分を直したい」とか「もうちょっと詰めたいな」とかキリがなくて(笑)。
──ベテランのソングライターでも見切りの悪い人は多いですからねえ。
クボ:そうやって楽曲に対してエネルギーを注入できなかったぶんの悔しさをライブでは少しでも反映したいってところはあるのかもですね。
──作ってる側の宿命なのかもしれませんね。
クボ:必ず思いますからね。結局満足はいってないんですけど、「このフレーズ入れたほうが良かったかな」とか「こっちのバージョンのほうがわかりやすかったんじゃないかな」とか。日々葛藤ですよね。
──そんなクボさんがこれまでのキャリアの中で一番満足してる曲ってどれなんでしょうか。
クボ:メジャーデビューしていろんなサウンドプロデューサーの方々と仕事させていただいたんですけど、島田昌典さんと一緒にやらせていただいた「うつし絵」って曲ですかね。
──aikoさんやYUKIさん、秦基博さんとのワークスが有名な方ですよね。
クボ:そうそう。僕はaikoさんの曲が好きだったので。やっぱり島田さんとやったときの…自分の中で鳴ってるものに対しての答えを出してくれたときはすごい良かったと思いましたね。やっぱり自分だけで突き詰めると迷ってしまうときもありますし。
──なるほど。前にドラマの主題歌(『同窓会』)もやられてましたけど。あの曲はどうだったんですか。
クボ:「楽園」って曲ですね。あれ、実はわりと好きなんですよ。レコーディングをやってるときはやっぱバンドっぽくないような感じにどんどんなってっちゃって、うん。でもそれはそれでいいのかな? みたいな感じで。
──僕もあの振り切りはありだと思いました。
クボ:それをライブで再現してみたりしたりしたときに「こういう作り方でもけっこういいんだろうな」って思いましたね。それまではわりと自分らが置かれていたロックシーンを意識して作ってたりした部分もありましたしね。
──島田さんって僕からするとaikoのサウンドプロデューサーってイメージが強いですからね。わりとその、ポップ職人っていうか。でも、クボくんと狙いは一緒なのかもしんないですよね。目指す方向的には。
クボ:仕事をした機会は一回だけでしたけどね。いや、機材とか、もう僕が知る限り、いろんなサウンドプロデューサーと仕事してきましたけど出会った限りでは一番オタクでしたね。古い機材とか楽器の揃え方がもう半端なくてすごいなと思いました。
──クボくんってやっぱりそういうポップ職人みたいなとこに憧れてる部分ってあるんじゃないですか。間違いなく。
クボ:間違いなくありますよ。やっぱりポップスって本当いろんな人と組んで作っていくべきだと思うし。なんて言うんですかね…一人で作れるもんじゃないみたいな。
──マニア受けだけで終わらず、一般大衆を巻き込んでこそのポップスですからね。
クボ:ですよね。自分の性格的な部分としてクローズになっちゃったり、一緒に音と合わせる機会がそれほど多いタイプではないんですけど、“ポップス”に対しての憧れは人一倍あるほうだと思います。