ミニアルバム『Parallel Wind』から5年。スピアメンが新作『Fragment Of Time』をリリース! 結成40年目に完成した『Fragment Of Time』は、ぶっとい骨格がありつつスリリングでアッパー。緊迫、躍動、そして解放。結成40年だからっていぶし銀という言葉など全く似合わないアルバムとなった。
メンバーはKOHJI MIZUSAWA(G,Vo)、RYUTA YANAGIHARA(B)、JUNICHI SHINOHARA(Ds)の3ピース。初期のドラムのメンバーチェンジを経て30年以上メンバーは変わらず。活動を休止することなく、スタジオに入り続け音を鳴らし続ける。常に新しい音を探し、探し当てた音を身体に落とし込み身体の一部のようにして、そして放つ。東京ロッカーズの流れを汲み、ジャンク、ハードコア、ニューウェイヴ、サイケ、オルタナと様々な音を感じさせる。しかし、そんなジャンルで分けられるはずもなくロックとしか言いようがないスピアメン。『Fragment Of Time』は、常に音を探し続けモノにしてきた、40年という時間の結晶だ。(Interview:遠藤妙子)
どこかにあるような曲も過去に作ったような曲も絶対やりたくない
──新作『Fragment Of Time』がリリースされました! 遂にというかやっとというか。前作のミニアルバム『Parallel Wind』が2018年、フルアルバムにいたっては1995年の『Ⅲ』以来ですからね(笑)。
KOHJI MIZUSAWA:ですね(笑)。
──新作『Fragment Of Time』、凄いアグレッシブです。前作『Parallel Wind』はしなやかさもあり新たな面を感じたけど、今作はそれを踏まえて、ある意味スピアメンの王道な面をバーンと。
MIZUSAWA:前作は若干名刺代わり的なとこがあって。なんせもう20年以上単独作を出してなかったんで(笑)。自分たちが持ってるいろんなもの…、キャッチーな面やポップな面も程よく出そうという意図があったんで。
──前作はバラエティありましたよね。
MIZUSAWA:だからミニアルバムでちょうど良かった。
──まずスピアメンのサウンドを言っとかないとね。特にライブではぶっとく硬質で緊迫感があり。ジャンクでハードコアでオルタナでサイケと様々なジャンルを含みつつ、ロックとしての王道感がある。
3人:ほぉ。
KOHJI MIZUSAWA(G,Vo)
──で、新作『Fragment Of Time』は前作以降の曲?
RYUTA YANAGIHARA:断片とかは以前からのものもあったけど、まとめたのは前作以降で。
MIZUSAWA:うちは1年に2、3曲しか曲ができないんで(笑)。
YANAGIHARA:調子が良くてそのぺース(笑)。
MIZUSAWA:スタジオは毎週ずっと常に入ってるんだけど。
──そりゃ、音源もなかなか出ないわけだ(笑)。
MIZUSAWA:自分たちが納得できる曲じゃなきゃ出したくないもんね。スタジオでも納得できるまでやりたいっていうのが当たり前でしょ。だから時間がかかる。そのぶん今回は全部の曲が納得できるし、アルバム全体としても納得してる。自信はあります。
JUNICHI SHINOHARA:ま、40周年だしタイミング的にもバッチリで。40周年じゃなかったらCD作ろうってならなかったかもしれない(笑)。いろんな意味で全てにおいてタイミングがよかった。
──放っておいたらずっとスタジオに入ってて(笑)。
MIZUSAWA:あり得る(笑)。
──曲作りはどんなふうに?
MIZUSAWA:スタジオでセッション。以前はリフとかを俺がまず作ってきて、そこからセッションが多かったんだけど、今はもう最初から3人でセッション。3人でグルーヴを作って、フレーズが出てきて、繰り返して、進んでいく。新しいものを見つけるっていうのが第一で。既にどこかにあるような曲は絶対やりたくない。自分たちが過去に作ったような曲もやりたくない。そうすると新しいパターンの曲っていうのは難しくなってくるじゃん、さすがに40年もやってると(笑)。でもスピアメンとはなんなのか、自分たち自身でわからないとこがあるし、スピアメンが持つ新しい何かを探してる感じ。まだまだ見つかると思う。
自分では思いつかないようなものが出てきたほうが面白い
──あぁ、私はスピアメンを初期の頃から見ていて、当時はループする曲が多かったじゃん。ループしてグングン上がっていく感じだったり、ループする中でパッと景色を変えていく感じだったり。それって今言ったようなスタジオでの音作りからきてるんだね。
MIZUSAWA:かもしれない。スタジオでも繰り返し繰り返しやってるしね。
──そうやって何度も試すことで、自分たちの身体から出てくる音になっていくんだろうね。
MIZUSAWA:そうだね。何度やっても飽きないしね。
YANAGIHARA:でもやっぱり、KOちゃん(MIZUSAWA)が言うように既にどこかにある曲はやりたくないし、何々っぽい音になったら途端につまんなくなってテンション下がるんだよね。頭で考えることじゃなく、身体が反応しちゃう。
SHINOHARA:だから道なき道を行く、みたいな感じで。
MIZUSAWA:それが楽しいのさ。昔は俺がこんな感じでって言って始めるパターンが多かったけど、今は何も言わないで、むしろ俺が2人の音に合わせていく。自分が作ってきた曲をやりたいんじゃなくて、新しい刺激があるものをやりたいんだからね。自分の頭の中で作ったものなんかたかが知れてるじゃん。それより自分の頭では思いつかないようなものが出てきたほうが面白いじゃん。
──じゃ、スピアメンは東京ロッカーズから影響は受けてるだろうけど、どういうふうな影響の受け方?
MIZUSAWA:東京ロッカーズが始まったのが1978年頃だとして、俺たちは80年代前半に見て。うちらも周りのバンドも何らかの影響は東京ロッカーズから受けてたて思う。俺は日本のバンドで最も影響受けたのはLIZARDだし。でも当たり前だけどLIZARDになりたいわけじゃないから。あんなふうになりたいっていう影響の受け方は、どのバンドにも全くしてない。そうこうしてるうちに、海外のいわゆるジャンクとかノーウェイヴとかを知って影響受けて。
SHINOHARA:俺はじゃがたらも好きだったな。
MIZUSAWA:あとE・D・P・S。新宿ロフトでE・D・P・S見た時、ドーンって凄い気持ちいい音しててさ。立ち姿も惚れぼれするほどカッコよくてさ。ツネマツさん、バニラ、ボーイ。ルックス的には一番カッコイイと思ってた。
──その頃のE・D・P・S、見てない。羨ましい!
MIZUSAWA:東京ロッカーズのバンドを見られて良かったと思うのは、ライブハウスという自分にとって身近な場所にいる、身近な場所で見るができる。そこに凄く感動してさ。
──うんうん。自分と同じ場所にいるって、なんか凄いことだよね。
MIZUSAWA:そうそう。
RYUTA YANAGIHARA(B)
──1stアルバム『LOST』はLIZARDのモモヨさんプロデュース。
MIZUSAWA:レコーディングはライブと同じことをやらなくていい、何やってもいいんだって教わった。ライブに縛られなくていいっていう。口にして言われたわけじゃないけど。
──そして1992年にミニアルバム『MOONFLOWS』をリリース。
MIZUSAWA:『MOONFLOWS』は『LOST』でできなかったことをコンパクトにまとめた感じ。『Parallel Wind』と同様、当時の自己紹介的な。
──表題曲の「MOONFLOWS」はメロディアスで展開も多い。それまでなかったタイプの曲だよね。
SHINOHARA:「MOONFLOWS」はKOちゃんがソロでやって曲だよね。RYUちゃん(YANAGIHARA)が一時期スピアメンを抜けた時期があって。KOちゃんはソロで弾き語り的なことをやってた。
MIZUSAWA:あぁ、そうだ。
SHINOHARA:それをバンドとしてやって。
──そしたら新しいパターンができた。
SHINOHARA:そうそう。