全国ツアー中のロックバンド・藍坊主。hozzy(vo)と田中ユウイチ(G)がロフトを訪れ、今ツアーの手応えや8月27日(日)に控える新宿ロフトでのツアーファイナル公演に向けての思いを語ってくれた。結成15周年を数えた2015年に自主レーベル・Luno Recordsを立ち上げ、順調にリリースを重ねライブを続ける中、コロナ禍に突入しその渦中にドラマーの脱退などもありながら、バンドとしてはLuno="月"の下で歩みを止めることはなかった。「太陽は自分で輝けるけど、月は太陽が発する光を受け反射しているだけで自分から光っていないところが良くて。自分たちの音楽が聴く人の心にも何かを反射させられることができたら、そういう在り方が自分たちに合ってるのだと思ってる」...インタビュー中に語っていたこの言葉も忘れず記載しておきたかった、彼らが見せる世界は美しい。(interview:高橋ちえ)
ステージに向かいながら聴こえてくるお客さんの声に泣きそうになる
──今回のツアーは小田原からのスタートでしたよね。
田中:そうですね。全国を回るツアーはコロナ禍が明けてからは初なんですけど、コロナ禍はライブが全部できなくなってしまって、自分たちで配信機材を用意して“配信をやってみようか”って。そのとき、地元(=小田原)にある姿麗人っていうライブハウスが配信の場所として貸してくれまして、バンドや弾き語りのライブを一緒に配信でやらせてもらって大変お世話になっていたこともあるし、まずはやっぱりここからだなというのがありましたね。
──現在、ツアー真っ最中のタイミングで残すはファイナルの新宿ロフト公演ですが、ツアーの手応えはいかがでしょうか?
hozzy:ムッチャ良いです。ドラムが抜けて(2021年)から、都内のファンの方だと今サポートで入ってくれているHAZEさんが叩くドラムでのライブも見ていただいていたり、あと配信では見てもらえていても、地方を周ることで直接目の前で、生で、ライブを見てもらえることができていて。体制が変わったらどうなるんだろう、ってファンの方も思ってたと思うんですけど、絶対に“前より良い”って思ってもらえてる手応えを毎回どこの箇所でも感じてますね。ただバンドを続けるだけじゃなくて、バンドとしての形をもう1回、今まで以上に良くしたいって皆、思ってたので。それは簡単な気持ちじゃできなかったですけど、(キーボード含めた)サポート・メンバーの力も借りつつ皆でいろいろと相談しながらできているのが功を奏して、バンドとしても良くなってるなと思ってます。
田中:東名阪だけは去年ツアーをやってるんですけど、札幌から福岡まで地方にも行くのは4年ぶりになりまして。最近は(コロナ禍)以前のライブと同じように声を出す準備がお客さん側もできてて。そんなライブも久しぶりですし、ライブが始まるSEが鳴ってお客さんの声が上がるだけでもう泣きそうな気持ちになってますね。以前と同じようにライブができるというだけでまず感慨深いものがあるし、4年前と同じぐらい集まってくれる所も多くて。この4年間、待っててくれたんだな…というのを感じて、それでまた感慨深くなって。だから(バンドの)音を出す前からノっちゃいまくってるので(笑)、それだけで毎回もう、すごいライブができてるなと思いますね。フロアからの声が聴こえるライブって、やっぱり良いものなんだということを新鮮に感じて感動してるということは、(声を)忘れちゃってたところもあるんだなぁ、と。
hozzy:コールがあるというのは、すごく良いものなんですよね。(声出しが)ないならないなりに、その場に集まってくれたということに対して最大限何か良いものをと考えてライブをやってきたんですけど、少しずつ規制が緩和されていく中で最終的に声が出せる、それが緩和されたのは一番デカかったですね。声を聞いて、本当に震える気持ちになって。演奏して音が鳴っているものに対して声で投げ返してくれる、お互いのフィードバックで高まっていくっていうのは(コロナ禍以降)感じられてなかったんだなって。それを今回のツアーですごく感じてますね。
──お2人の表情を見ても充実感がすごく伝わってきます。コロナ禍を経ての今ですが、お2人がこのコロナ禍で感じたことなどを少し聞かせてもらっても良いでしょうか。
hozzy:やっぱり生活というものをしなくてはいけないので、“こうやってお金を稼げるんだ”っていうこととか、今まで見向きもしていなかったことでの発見とかがすごくあって、それはそれですごく面白かったですよね。バンドができなくてただ苦しいというだけではないたくさんの発見があったし、今のツアーはリリース・ツアーなんですけど、曲を作るアイディアとか原動力をずいぶん良い方向で影響を受けたなと振り返ってポジティブに捉えてます。これはいろんな方も言ってると思うんですけど、一対一の繋がりみたいなものがコロナの前よりも…会って飲むとかはできないし、遠方の親戚とかはなかなか会えないけど、逆に連絡を密に取るようなことができて良かったと思いますし。それと自分は怒りっぽいところがあったんですけど、そういうのがちょっとずつ減ってるかもしれないです(一同笑)。単純に歳を取っただけかもしれないんですけど、許せる範囲が広がった感じですね(笑)。イライラしててもソンするだけだな、って。
田中:確かに最近、怒ってるところは見たことない気がするな(一同笑)。いろんなことって本当に当たり前じゃないんだなっていうのを身に染みて感じて、物事の捉え方が…それは誰もがそうだと思うんですけど、それこそライブ1本にしてもその1本に対する感謝の気持ちがより強くなったというのはすごくありました。バンドの運営の大部分を今、自分たちでやっていて、コロナでライブも音源も出せないという中で、お金の管理も含めて何とかバンドがうまく回っていくようにと普段よりも頭を使って考えていて、コロナ禍はそこにかける時間が本当に多かったように思います。