音楽の話を通して、感心するばかりです(和田)
──両バンドも3ピース且つ、和田さんも菊池さんもギター&ボーカルと全く同じですが、ギターの部分で菊池さんが和田さんに感じたりすることなどはどうでしょうか?
菊池:僕もけっこう、ギターを弾くほうなんですよ。楽曲志向で曲を作ってたら弾かざるを得ない感じになっちゃって(笑)。本当はもう少しシンプルにしたいなと思ってるんですけどね。今の時代としても3ピースというバンドの、シンプルなカッコ良さっていうのはすごくウケてる気がしてるので、This is LASTというバンドとしてもそこを目指していかなきゃいけないなとすごく思ってます。(楽曲を)華やかにすることはできてきているので、今度はギター1本のみで勝負するとか。
和田:素晴らしいですね。若いときは、コードや和音を鳴らすのも僕しかいないし、常に音が足りない感じだから、演奏するのも大変なのに音をギャーンと歪ませたり音の壁を作ったりとかしてたけど、最近はミニマムなアレンジっていうものにわりとハマってて、隙間があるアレンジのほうがすごく好き。海外(のヒット曲など)もそうだから、今になって3ピースで良かったかなって思うし、ギターも全部鳴らさないで単音での音作りとか。そのほうが1個1個の楽器も目立ってくるしね。
菊池:僕らも「カスミソウ」(2022年)とか「#情とは」(2023年)といった楽曲で盛った音楽を作ったので、現在進行形で作っている楽曲はけっこう、今仰っていたことを考えながら、引き算をしながら作ってますね。
和田:でも若いときになかなかできないと思うけどね。さらにライブだと、冷静に、クールにって思っててもどうしても力が入っちゃって。ギターってPAを通して大音量で聴けばジャーンって1回やればそれで充分なのに、ジャーン、ジャッ、ジャーンって弾いてる自分がいてさ(笑)。大人になれてないな〜って、どうしても思っちゃうんだよね。
菊池:それ、メッチャ分かります!(笑)
▲TRICERATOPS
──それはお客さんを前にしたライブの魔力でもあるのではないでしょうか?
和田:人前に立つとね、やっぱり力が入っちゃうっていうのはしょうがないっていうところもあるんですけど、でも僕の最近のテーマっていうのはなるだけ力を抜いてやるということで。本当にね、なかなかできない。
菊池:多分そっちのほうが難しいんですよね。ライブの現象として言えば、僕も気持ちとして前に行くことのほうが起きやすいだろうと思っていて。そうなったときに僕は歌に表れるタイプで、ちょっとこってりした歌い方になっちゃったりとか。気づかないうちにけっこうそうなっていたりするので、だから敢えて俯瞰して見られる自分を一人用意しておかないと駄目だなと最近すごく考えてます。フロントマンとしてはその場を掌握しなきゃいけないと思ってるので、支配する人間として頭の中で考えながら、燃えてる部分っていうのも計算しながらライブをやってます。
和田:偉い! ついトゥーマッチになることがあるからね、ライブに入りすぎちゃうと。
菊池:そうです、トゥーマッチ! この言葉に僕、1回病んだことがあって(笑)。ライブを作っていく上で、これはトゥーマッチなのかトゥーマッチじゃないのかを意識しすぎた結果、どうしたら良いのか分からなくなってしまったことがあったんです。
和田:そう、だからどこかでクールな視点を持ってないと。見てる側の人たちにちょっとくどいな、って思われたら最後なんで、そこは僕もなるだけ気をつけたいし、今でもテーマですね。たとえば大御所の人でもどんどんトゥーマッチになっていくとかあるでしょ? 声を必要以上に伸ばしたりとか、溜めて溜めて遅れて歌う歌い方とか。
菊池:それ、思うときがあります。ノリがちょっと後ろになっていくんですよね。
和田:どんどんアダルティーになるって言えばいいのかな(笑)。
菊池:それをレコーディングでも意識するようにしてます、叩くノリとかで“ちょっとアダルティーすぎるぞ!”って言ったりとか、逆に若々しくなりすぎてるとか。それをジャストでいかにやるべきかとかはレコーディングのときに話しながらやってますね。
和田:菊池くんの話を聞いて、感心するばかりです。(一同笑)
<後編に続く>