『一騎当千』を監督した中では一番新入り
――『血風録』は完全オリジナルで『真』は原作のアニメ化になりますが、監督する際に違いはあるのでしょうか。
久城:抑える場所が違う感じです。『血風録』は倉田英之さんに各キャラクターの性格は抑えた脚本を書いていただいて、今作はこれで行きましょうという形でした。『真』は原作の物語があるので、もととなる物語をどうアニメにするかという形で脚本など作っていった形になります。
――オリジナルであれば世界観が共通していればという形ですが、原作にある物語だとより外してはいけないポイントがありますから。それを三話でまとめるというのもなかなか大変来変な作業ですね。
久城:そこは本田さんが頑張ってくれました。特に今作は孫権でスタートし、孫策にバトンタッチし、さらに新たなバトンタッチをしてと、物語の中心となるキャラクターも変わるので大変だったと思います。
――確かに、話数ごとに中心となるキャラが変わっていっていました。
久城:フューチャーするキャラを変えていかないと縦軸が成立しなかったんです。
――このコロナ禍で直接会っての打合せが難しい中、どうやって構成や世界観を共有されていったのでしょうか。
久城:対策に気を付けながら可能な範囲で対面の打合せもしましたが、そこもみんなが頑張ってくれたから成しえたことですね。特に大変だったのはアフレコだったと思います。
――『一騎当千』はキャラクターが多い作品ですから人数制限がある中でのアフレコは大変ですね。キャストのみなさんも今までの作品に参加されている方も多く、作品を熟知されている方も多いと思います。『真』が始まるということでお話しされたことなどあったのでしょうか。
久城:『WW』の後のお話であるということはお話ししました。私が『一騎当千』を監督した中では一番新入りで、わかっていない部分も多い監督だと思っています。今まで作品に出演されてきた皆さんの方が自身の演じるキャラクターについて深く知っていらっしゃるので、基本はお任せしました。新キャラクターを演じていただく方には、ほかのキャラとのバランスを取りながら演出をさせていただきました。
――信頼をされてお任されたということですね。
久城:とはいえ、孫権を演じた大橋(彩香)さんは大変だったと思います。第一話では中心のキャラクターだったので、「孫権は主人公の妹じゃなかったの」と思われていたんじゃないかな。
――そうかもしれませんね。第一話は主人公なので作品を引っ張ってほしいということなど大橋さんとお話しされたのでしょうか。
久城:第一話でフューチャーされているのは孫権であることは間違いないので、そのことはお伝えしました。大橋さん自身も元々その自覚はあったみたいです。ただ、孫権は基本的に成り行きに流されているキャラクターなので、引っ張るという感覚ではなかったと思います。
オーソドックスに戻したイメージ
――『一騎当千』はアクションも魅力的な作品です。アクションについてはどのような点に気を配り演出されたのでしょうか。
久城:バトルの見せ方・テンポは気にしました。物語を見せるためとバトルを単純に短くしてしまうと淡白になってしまうので、バランスは確認にしながら進めました。私はアクションで大切なのはメリハリだと思っています。速い・速い・速いだけでは観ている人がついてこられなくなってしまいます。また、『一騎当千』の特徴でもあるパンチラとかも見えないですから(笑)。そこはメリハリを利かせて、止まるときはきちんと止まる、動くときは動くという感じにしています。私個人の感覚になりますが『真』ではよりオーソドックスに戻したイメージです。
――激しい動きだけでは逆に緊張感が出なくなってしまいますからね。
久城:『血風録』の時に倉田さんから竜の力を使っていても空を飛ばないでほしいと言われたので、その名残もあると思います。原作でもそういう描き方をされていて、基本は打撃・剣撃のバトルで飛んでビームを放つということはない作品ですから。
――肉弾戦だからこその重量感がなくならないようにということですね。
久城:はい。
――それでも、あんな服の破れ方しないだろうと個人的には思ってしまう部分も個人的には。それを言ってしまうと原作否定になってしまうことになりますけど(笑)。
久城:逆です、破れるモノなんです(笑)。
――そうなんですね(笑)。
久城:はい。
――アクションシーンに上手く馴染んでいるので過度にエロく見えないというのも不思議だなと思いました。
久城:彼らは心情・信念があって戦っているからそう感じられたんだと思います。
――恥じらいとかに気を配っている状況じゃないと。
久城:そうです。それが『一騎当千』らしいんじゃないかと考えています。
――一番の新人ですと言いながら、これだけ作品を熟慮して制作されているのは素晴らしいです。今回のアニメを観るのがさらに楽しみになりました。
久城:ありがとうございます。今までずっと見ていただいている方は今作も楽しんでいただける作品になっていると思います。『真・一騎当千』で新しく『一騎当千』シリーズに入ってこられる方にも入ってきやすい作品になっているので、ぜひ多くの方に観ていただければと思います。
©2021 塩崎雄二・少年画報社/真・一騎当千パートナーズ