『真・一騎当千』が新たにアニメ化。『一騎当千』シリーズとしては22年、映像作品としても最初のアニメ化から19年と長く多くファンに愛されている本シリーズ。今回のアニメ化のバトンを受け取った久城りおんは、最新作にどう向き合ったのか。本作に対しての思いの一端を伺いました。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
映像作品としての説得力を出せる形に
――『一騎当千』は原作が2000年から、アニメ作品も2003年から何度も映像化されている作品です。久城(りおん)監督も以前にOVA『一騎当千 集鍔闘士血風録(以下、血風録)』を監督されていて、『真・一騎当千(以下、真)』で久々に『一騎当千』シリーズに監督として帰ってこられた形ですが、今作を監督されることになった経緯を伺えますか。
久城(りおん):私自身も監督依頼が来ることは意外でした。新作は別の方が監督されるのかなと思っていたので、ビックリしています。
――『一騎当千』との縁が巡ってきたということなんですね。
久城:そうですね。またできることになったのは嬉しいです。
――『一騎当千』シリーズは永く愛されている歴史もある作品ですが、改めて監督されることにプレッシャーはなかったですか。
久城:プレッシャーだけでいうとタイトルに『真(シン)』がつくことにプレッシャーがありました(笑)。
――庵野秀明監督の『シン』があるから。
久城:そうです(笑)。私もお客さんとして『一騎当千』を観ていた作品なので、『血風録』の話が来た時にもビックリしましたね。そこから何度も間を空けつつアニメ化しているシリーズなので、ファン目線で言うともっと短いスパンでアニメを観たいなと思っています。そこは、スタッフ集めなどいろいろ制作環境を整える必要がありますから簡単にもっとアニメ化してくださいと言うのは難しいですけどね。
――元々ファンとして作品を観られていたということですが、『一騎当千』シリーズに対してはどういったイメージを持たれていましたか。
久城:美少女バトルモノです。その印象は今も変わらないですし、監督する際にもその点は徹しています。
――『真』のシリーズ構成をされている本田(雅也)さんは『一騎当千XTREME XECUTOR』や前作『一騎当千 Western Wolves(以下、WW)』なども脚本を書かれています。脚本をつくられる際に改めて本シリーズをこうしようなどお話しされたことはあったのでしょうか。
久城:『真』になったからこうしようという話はしていません。今作で『真』と付いていますが、物語は前作『WW』から続いています。本田さんは前作もシリーズ構成されていたこともあって原作を熟知されているので、映像化するのに最適な形で構成していただいていきました。アニメにするにあたって漫画とは変わっている部分もありますが、映像作品としての説得力を出せる形にしました。
――メディアが違うと同じことをやっても逆に混乱してしまうこともあるので、そこは大事な部分になりますよね。
久城:そうですね。
――塩崎(雄二)先生とは今回のアニメ化に際して、リクエストなどあったのでしょうか。
久城:メディアが違うと見せ方が変わるということは塩崎先生も熟知されているので、「やりやすい形で進めてください。」と言っていただけています。もちろん構成や脚本など確認はしていただいておりますが、基本任せていただけていて、分からないことが出てきた際に答えていただくという形で進めています。
――それも長年アニメ制作をされてきた中で信頼関係ができているからこそですね。
久城:そうですね。現場を支えているスタッフと塩崎先生の中で出来ている信頼関係に助けていただきました。
――そこは久城監督にも信頼があるからです。でないともう一度監督してくださいとはならないですから。
久城:そうだと嬉しいですね。
――物語を構成する中で気を付けられたことなどあったのでしょうか。
久城:『真』は原作が連載中の作品なので、制作に入るにあたってまず今作の着地をどこにするかを考えて物語を構成しました。着地する部分を決め構成を進めていくと尺がパンパンになってしまうなということに気づきました。なので、尺を心配しながらシナリオを書いていただいた覚えがありますね。1話目は私以外のみんなに「これは絶対入らないよ。」と言われていたので、編集で綺麗に収まってみんな喜んでいましたね。
――物語を入れるために調整しているということは感じなかったのでさすがの手腕ですね。
久城:ありがとうございます。物語の面で言うと『WW』で孫策(伯符)は東北に行き、『真』で最初に出てくるのが孫権(仲謀)になるので、リセットをかけることができたんです。なので、孫策は一度忘れて孫権の視点にという意識を持ちました。