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INTERVIEW

トップインタビュー八木戸マト(漫画家)- 実力に伴った反応が出て光が当たって飛び立ってくれれば

八木戸マト(漫画家)- 実力に伴った反応が出て光が当たって飛び立ってくれれば

2021.12.23

 WEBを中心として多くの話題作を執筆されている漫画家・八木戸マト氏。自身の作品についてはもちろん、WEBだからこその難しさと可能性について、作家としてだけではない漫画業界に対しての思いをお話ししていただきました。。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]

自分の漫画が面白いのかなと思う事も

kokuhaku.jpg――小説やイラストはもちろん今は映像作品を気軽に発表できますが、何故漫画を描こうと思ったのですか。
 
八木戸(マト):趣味で絵を描いていた絵をTwitterにあげていたら、「漫画を描きませんか。」と出版社からメールをいただいたんです。その時は漫画を描いたことが無かったので、「漫画の描き方がわからないんです。」と返信したのですが、「描き方教えます。」とお返事いただいたので教えてもらえるならと描き始めました。その時は学生だったので不定期での掲載でしたね。Twitterをやっていく中でコミケという存在を知ったくらいで、昔から目指して描いていたというわけではなかったです。
 
――オタク系のコンテンツに関しても疎かったんですね。
 
八木戸: Twitterも大学生になってから知ったくらい遅かったです。
 
――これだけ活用されているのに意外です。そのまま漫画を描き続けられているのは何かきっかけがあったのですか。
 
八木戸:知り合いに漫画家の人がいて「もったいないし、やりなよ。」言われて、コミケにも参加するようになっていく中で気がついたら漫画家になっていました。
 
――気づいたらなっていた漫画家で今はTwitterのフォロワーも50万人を超えていますが、怖くないですか。
 
八木戸:1万人・10万人の頃はソワソワしましたね。1,000いいねとかつくとウワーッとなって最初は楽しかったんですけど、今は数字が大きすぎてよく解らなくなっています。ただ、これだけ大きいとネットリテラシーとかちゃんとしないといけないなと発言には気を付けるようになっています。
 
――そうなりますよね。
 
八木戸:個人的にはTwitterをメインで作品を発表している作家は純粋な作家じゃないんじゃないかなと思う事もあるんです。
 
――それは何故ですか。
 
八木戸:読者の事だけを考えて物を作らないからです。今までは作家が面白いものを描いて、編集がそれを売り出すというものでした。今はその境が曖昧で個人が力を持つようになっていて、出版社が担っていた物流・宣伝を作家個人が出来てしまう段階に移りつつあるので、作家は作品が面白いかだけでなく物流を見ないといけなくなっているんです。そうなると、純粋な作家というより商人的な要素も持たなければいけないんです。
 
――今はそうならざる負えないのかもしれないですね。
 
八木戸:そうなると面白さが正義じゃないこともあるんです。なので、自分の漫画が面白いのかなと思う事もあります。
 
――ジャンルが色々ある中で、なぜラブコメを選ばれたのですか。
 
八木戸:短編に向いているコンテンツだからです。Twitter漫画というのは掲載できるページ数も限られているシンプルなコンテンツなので、テーマが突飛でないありふれたものがいいんです。
 
――そうなると描くものが似てしまうので、作家性を出すのが難しそうですね。
 
八木戸:どこで作家性を出すかというとシーンの切り取り方で出すことになります。演出や構成、絵柄など、ストーリーとは別の部分で違いを出すことになるんです。SNSの漫画はガチガチに設定を構成したものではなく、逆にジャンキーなものでないといけないと思っています。
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――八木戸さんはそういう欲求はどこで解消しているのですか。
 
八木戸:商業で解消しています。マガジンポケットで連載している『300年封印されし邪龍ちゃんと友達になりました』で、ストーリーや演出に対しての欲求を満たしています。

選択肢を与えられるようになったら良いなと思っています

――八木戸さんは自身で描かれているだけではなく、小龍さんとの『ニートくノ一となぜか同棲はじめました』でネーム協力をされていますが、どういったことをやられているのですか。
 
八木戸:本当に編集的なことをしています。小龍さんとはコミケ関係で知り合ったんですけど、私が先にオリジナルをやっていたんです。そういったこともあって「ネームの添削をして、手伝ってもらえないか。」と相談を受け、お互いに得意な分野でタッグを組んだ形です。
――編集みたいなことという事ですけど、実際はどのようなことをされているのですか。
 
八木戸:小龍さんが描いてきたネームを見ながら、「ココをこうした方がセリフ回し良くなりますよね。」とか赤ペンを入れたりしています。今は単行本単位の構成をしていて、「1冊に入る話数がこんなものだから、このお話を入れましょう。」とかです。
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――本当に編集じゃないですか。他でもそういったことをされているのですか。
 
八木戸:そこまでの事はやっていないませんが、株式会社ナンバーナインという会社で新人作家を育てる若手支援のような事はしています。やってみて感じるのは、私が出来ることはそんなに多くないんだなという事でした。そもそも漫画はその人に能力がないとやっていけない分野ですね。
 
――クリエイティブなお仕事はそうですよね。
 
八木戸:その人の中に光るものがあって、その良さを出せるようにというお手伝いは出来るんですけど、そこのハードルは低くはないです。
 
――今は特に誰でも発信できてしまいますからね。
 
八木戸:今はよく解らない構図になっていて、漫画家になるハードルは低いんですけど稼げるようになるハードルはとても高いんです。
 
――デビューと食べれるようになるというのはまた違いますから。そこは商業でも変わらないと思いますが。
 
八木戸:商業ではそのハードルは更に高いです。そこのギャップを何とかできないかというのが今やっていることのキッカケです。おっしゃる通り今は誰でも発信できるので、作品が増えすぎて本来はもっと評価される作品が押し流され光が当たるべきところに当たらなくなっているんです。
 
――目立ったもの勝ちという部分も今はありますから。
 
八木戸:本来の漫画家は面白いものを描くという事を目指していればいいと思うんです。それが自然な状態でそうあるべきなんです。自分の売り出し方を考えられる人と自分の作品のこと以外は考えられないというのは良し悪しではなく個々の適正になるので、自分の作品を宣伝・販促するのが苦手なのであればそこをサポートできる仕組みは必要だなと思っています。商業だと間口が狭すぎるので、そこを支援できないと漫画業界としてどうなのかなと。
 
――才能があっても宣伝が苦手で消えてしまうというのは、とても悲しいことです。
 
八木戸:話を聞いていると過去に大手で連載していたけど打ち切りになって、漫画恐怖症のようになって筆が持てないという人が居るんです。才能があっても一度の失敗でそうなってしまうんです。そういう人たちは一つの目標に向かって努力をしてきた人なので、目指してきた目標以外の選択肢を持てなくなってるんです。
 
――確かに、視野が狭くなって他を知らないという事もありますね。
 
八木戸:そういう所に選択肢を与えられるようになったら良いなと思っています。王道を突き進んで勝ち取るのはカッコいいことではあるんですけど、1つの選択肢だけでやり続けて失敗したら諦めてしまうというのは勿体ないですから。
 
――今は作家それぞれにマネージャーが必要な時代なんですね。
 
八木戸:そうですね。電子版のやりかたを知らない作家さんもいるので、プロとしてやっていくのであればそういう事にも目を向けていかないといけなくなっています。そのノウハウをナンバーナインの編集さんにもレクチャーしているので、そういう輪が広がっていけばいいなと思います。
 
――漫画業界に全体に視野を広げてらっしゃるのですね。
 
八木戸:みなさん私が持っていない才能があるので、それを如何にちゃんと把握してそれぞれの良いところをちゃんとよりよくしようという事を考えています。伝えることは難しいですけどね。
 
――自分ではわかっていない部分もありますからね。
 
八木戸:私の目から見たら才能があるんですけどこの企画に参加している人は自信を失っている人も多いので、その人の実力に伴った反応が出て光が当たって飛び立ってくれればいいなと思っています。今は初期段階ですけど、今後もっと大きな流れになればいいですね。
 
――実際にいま売れている作家さんでも、打ち切りを経験してから新たな活躍の場で見つけて跳ねる人もいますからね。商業は特に雑誌ごとの色があって、そことの相性もありますから。
 
八木戸:商業は光が当たっているところしかみないので、それが氷山の一角すぎないんです。掲載できる作品数もページ数の都合上、限りがあるのでしょうがないですけど大変な世界です。

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