繋がることが難しくなってしまったいま、改めて人との繋がりの素晴しさ、支え合うことで不可能と言われたことが実現できるという力強さを描いた『ブルーヘブンを君に』。本作で由紀さおり演じる冬子を支える正樹を好演された本田剛文にこの作品にかけた思いを語っていただきました。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
意識せずに演じられたのが良かったのだと思います
──どこか懐かしい気持ちになる心が癒される映画でした。
本田:ありがとうございます。
──今作が由紀(さおり)さんの映画初主演作になるんですね。
本田:意外ですよね。記念すべき作品に出られたことは自慢です。
──(恩田)正樹は由紀さんの演じられた(鷺坂)冬子の孫になりますが、スムーズに役に入っていけましたか。
本田:本当にすんなりと入っていけました。由紀さんは大先輩でご一緒できること自体が凄く光栄なことですが、由紀さんご自身は壁がなくチャーミングに感じてしまう方でした。撮影現場の雰囲気が良かったのは由紀さんのお人柄によるところが大きかったと思います。
──作品を観ていて本当に祖母と孫なんじゃないかと感じました。
本田:由紀さんのおかげで変に意識せずに演じられたのが良かったのだと思います。由紀さんは僕たちの本当のおばあちゃんなんだと思わせてくれる佇まいで、そこに包み込まれたから自然に観えたんだと思います。
──兄である(鷺坂)蒼太を演じられた小林(豊)さんは本田さんと同じBOYS AND MEN(以下、ボイメン)メンバーですが、撮影に入る前に打ち合わせされたことはあったのでしょうか。
本田:お互い素に近いキャラクターこともあって、特に話し合いを持つということはなかったです。映画はキャストの方々と作り上げていく中で起きる化学反応の良さがあると思っているので、必要以上に話さないように敢えて意識した部分はあったかもしれないです。
──この作品は舞台である岐阜の方も多く参加されているということですが、現地のみなさんとの思い出があれば伺えますか。
本田:岐阜の皆さんの優しさ・バックアップがあって完成した作品でもあると思います。地元のお母さんたちが朝ご飯を作ってくださったり、出演以外の部分でも支えていただけました。身も心も岐阜に浸って染まっていくように感じました、そこが作品にも出ているんじゃないかと思います。聖地巡礼も出来ると思うので、地方創生という点でも貢献もできればと思います。
観ていて気持ちがいい
──物語としても人との繋がりの良さを感じる作品でした。冬子の夢をみんなで叶えていく、その輪が広がっていくというのは観ていて心が洗われる気持ちでした。
本田: 夢や家族といった、どなたも人生を歩んでいく中で通るテーマが含まれているので、多くの方に響くところ・共感するところがある作品だと思います。この映画を観ることで皆さんの追い風になることが出来ればと思っています。
──秦(建日子)監督はどのような方ですか。
本田:本当に穏やかな方です。現場に自然体で入れる空気感を大事にしてくださる方で、キャストの演技プランを尊重してくださる方です。
──秦監督はどのような演出をされたのでしょうか。
本田:演技に関しては基本的に僕らに任せてくださいました。演出面で言うとこの作品はカット割りが多くないんです。
──確かにそうですね。言われて気付きました。
本田:そのカット割りの少なさがこの物語をリアルにしていて、キャラクターたちの息遣いを感じられるんだと思います。
──観客としてもその場にいるような一体感を感じたのはその演出があるからこそかもしれませんね。
本田:この物語にはあっている演出だと思います。
──作中でのお気に入りのシーンはありますか。
本田:“孤独のポンポン”のシーンです。
──“孤独のポンポン”とは。
本田:柳(ゆり菜)さん演じる(鈴木)夏芽に怒られている時の車の中で名城線ゲームを1人でしているところです。
──お気に入りの理由を伺えますか。
本田:自分が出ているシーンはどうしても自身の演技に意識が行ってしまうんですけど、あのシーンは面白いなと客観的に見れたので気に入っています。あとは、ハンググライダーのための予算集めをした後の正樹と夏芽のシーンも好きなんです。
──寺脇(康文)さんもいい味が出ていましたね。
本田:迫力とお茶目さを兼ね備えたキャラクターですよね。この作品は嫌なキャラクターが居ないです。だから観ていて気持ちがいいんだと思います。考え方の違いはあってもみんなが温かくて、誰かのため・夢のために一生懸命で愛したくなるキャラクターばかりですよね。
──そうですね。正樹たちのお父さんも冬子に夢をあきらめるように説得するんですけど、それは冬子を本当に大事に思っているからで。説得のシーンも感動的でした。
本田:僕もあそこが一番泣けました。
──応援したい正樹たちの気持ちも勿論なんですけど、お父さんの気持ちもわかるんです。
本田:答えがある物ではないですよね。そこは作品の伝えたいことの1つでもあるんだと思います。