皆さんに面白いと言っていただけることが意外なんです
――出ていらっしゃる皆さん、名優の方ばかりですね。
内田:Vシネにはあまりなじみがない方が多くなりました。
――確かにそうですね。皆さん、はまり役だから全然気にならなかったです。このギャップのある脚本を読まれた際のみなさんの反応は如何でしたか。みなさんのコメントを拝見すると、戸惑いを感じられた方も多くいらっしゃったようですが。
内田:役者として楽しんでいらっしゃいましたよ。意外なんですが小沢さん以外の方はヤクザ役をあまりやったことが無かったそうで、自分なりのヤクザ像を提案していただけました。アウトローというのは一度はやってみたい役なんでしょうね。
――フィクションだからこそ出来ることがありますからね。キャラクターでは笹野(高史)さんの演じる笹森(修蔵)がヤクザなのにプラモオタクなので、「こっちもコメディ要素あるのかよ」って思いながら見ていました。その描写があるので、キャラクターに人間味を感じました。この見せ方は新鮮でした。
内田:あのキャラ付けは僕の好きな本が元になっているんです。中国の皇帝の話なんですけど、石集めという設定があるキャラクターで、なら日本はプラモだろということでプラモオタクにしました。
――確かにプラモデルは日本のイメージがありますね。役者さんからも提案があったということですが、どういった提案があったのでしょうか。
内田:笹野さんからは主に銃の演技に関して提案いただきました。昔のギャング物に詳しい方で、色々と楽しんでおられました。リアルであんなに銃を撃ちまくる人が居たら秒で捕まりますよね(笑)。
――確かに(笑)。
内田:アクションに関しては小沢さんのアイデアが凄かったです。最初に聞いたときは「本当に実現できるのかな」と思うんですけど、アクションセンスが凄くて実現可能なのでビックリしました。アクションアイデアは小沢さんに助けていただきました。セリフに関してはみなさんと現場で意見交換しながら進めていきました。
――若旦那こと新羅(慎二)さんはいかがでしたか。本職はミュージシャンですが。
内田:役者がメインではない方だから変化の幅が普通の役者の10倍くらいあるので、その姿を見ているのが面白かったです。
――あんなに役者としても映える方なんだとビックリしました。演じられた片岡(皇成)のキャラクターも良かったです。やっと夢を叶えられるとなった時に、当の宇佐木は刑務所で出会った若造と一緒に合唱という。
内田:チャラい弟分が急に現れてね。
――その弟分・大林拓海を吉村(界人)さんもザ・チンピラという感じが出ていて良かったです。
内田:あんなに喧嘩が弱そうなヤクザもなかなかいないよね。
――この3人の関係性が良かったです。
内田:実は皆さんに面白いと言っていただけることが意外なんです。
――そうなんですか。
内田:コメディと男の世界がミックスされていますし、要素が多い作品じゃないですか。なので、コメディが観たい人にとってバイオレンスは嫌、バイオレンスが観たい人にとってコメディはいらない。そう感じられるかもしれないという懸念があったんです。そういったことがなく、観てくれるみなさんもジャンルミックス作品として楽しんでいただけたので、上手くいって良かったです。
――作中で合唱道を歩まれた小沢さんは歌うことに関してどうおっしゃられていましたか。
内田:小沢さんからは「だから、俺は下手っていったじゃん。」と毎回言われました。歌が苦手ということにコンプレックスがあるみたいですね。
――そこから宇佐木の人間味が出ていますからね。
内田:それは僕も現場で感じていました。好きなことを一生懸命やるという姿は可愛いですよね。可愛くないとキャラクターとして愛されないですから。
――分かります。合唱に対して一生懸命な姿が愛らしかったです。
内田:任侠一辺倒の極悪ヤクザというのは僕も好きじゃないんです。今回はそういうヤクザは出ていないので、比較的広く楽しめるんじゃないかなと思っています。
――人間ドラマとしても楽しめる作品でした。各キャラクターから人間臭さを感じられるので、それぞれが考えていることが何となくわかるんです。それが無いと物語に入っていけないですから。
内田:そうですね。
――宇佐木と拓海の関係性はこれからどうなっていくのでしょうか。親子的なものになるのか、師弟関係になるのか、それとも拾ってきた子犬の面倒を見ている感じなのでしょうか。
内田:形式美じゃないですけど、兄貴が居て使えない弟が居るという昔ながらの関係性をやりたかったんです。だから、新羅と小沢さんのオーソドックスな関係だけではなく、あえて拓海というキャラクターを入れました。
――この2つの関係性の対比、それがどちらも宇佐木を絡めている点が面白いです。
内田:そういう所で遊ばないと作っていても面白くないですから。僕もさんざんVシネを観てきたので、観てきたものをやってみたいなというのもあります。
――その懐かしさが観ていて心地よかったです。ここから先も楽しみにしています。
内田:是非、宇佐木たちの物語を楽しんでください。