彼女たちをリスペクトする気持ちを持っている
──スタッフのみなさんはTVシリーズと同じ雰囲気を出すことを意識されたとのことでしたが、ラブパトの4人にとっては劇場版という事で力が入ったという部分はあったのでしょうか。
三池:彼女たちも劇場版だからという気負いはなく、自信を持って演じていたように思います。同じスタッフで撮っていますし、1年やり通したということで彼女たちがやればそれが正解・本物なんです。
──そこも安心して任せることが出来ていたんですね。
三池:その自信は元々持っていたというわけではなく1年やったという事から来ているもので、自身の性格を通して演じればいいんだという事を彼女たちもわかっているんです。僕たちもいつもと何も変わらないようにやれる雰囲気をつくりましたが、そういった気遣いも必要ないくらい堂々としていました。
──1年を通して成長を感じられた部分はありましたか。
三池:例えば、前後のシーンで感情を繋げたりということが出来るようになったりと、現場での立ち振る舞いは成長していますが、根っこにあるキラキラした部分は変っていなくて、いい意味で失われていない魅力もあります。
──良くも悪くも知ってしまうことで失ってしまうことはありますよね。
三池:それが全然ないんです。そこが魅力ということに本人たちは気付いてないんですよね。例えば、はにかんでふっと笑う一瞬が良いんです。本人が意識していない無垢な部分、そこから抜け出そうと大人になろうとしている部分の両方を持っているんです。経験していくとどんどん無垢な部分が薄れていって、女優として表現しようというところが上手くなっていくんですけど、それも寂しいですよね。
──1年いっしょにいると余計にそう感じてしまいますよね。
三池:彼女たちが普段から先輩たちを見ていて、歌のトレーニングをして、リハーサルをしているから保てている部分かもしれないですね。どこまでも先生・先輩が居るわけですから。僕らから見るとよく踊れているなと思えても、本人たちはまだまだと感じているみたいです。そういう意味では僕らよりも厳しい中にいるんだと思います。そういう所からも僕らスタッフみんなが彼女たちをリスペクトする気持ちを持っているので、その輝きを保っているというところもあるのかもしれないですね。
──劇場版では家族愛を強く描いているように感じたのですが、いくつもの愛の中でも家族愛を前に出したのは何故ですか。
三池:最初はそこまで家族愛を意識していたわけではなくて、シンゴ署長に子供がいるという設定もなかったんです。
──そうなんですか。
三池:ラブを失うと地球が破壊されるというのは、見方によっては自然破壊という事でもあるだろうし、戦争にも繋がるかという事ですけど、そこに嘘はないと思うんです。
──確かにその通りですね。
三池:ラブが無くなるという事はそういう危険性も含んでいるということだと思うんです。人間は怖い部分も持っているけど、ラブを取り戻せば解決に繋がる。それは立派なテーマですがあまりにも漠然としていて、言葉でなんとくなくはわかるんだけど目では見えてこないことですよね。
──心で感じることですから、具体的に何かというのは難しいですよね。
三池:シンゴ署長の話で言うと、実は凄く気が弱いお父さんが子供の前でそんな姿を見せられないとがんばる。一見すると何の役にも立たない空回りしている姿ですが、前に進もうとするお父さんの姿を見てやっぱり凄いと思う。それは全然スケールは違いますが、地球を守ることと同じだけの価値があると思うんです。何かをしようというのではなくそれぞれの場所で1つでも愛情をもって接することが出来れば、きっと地球は大丈夫なんだと思っています。地球を守るという漠然としたものだけではなく、小さなリアルも入れるべきだよねと脚本を作っていく中で考えたんです。それをキャラクターを通して表現してもらったという事です。
──本当に大事なことだと思います。
三池:『ラブパト』は家族で観に行く人の方が多いと思うんです。そこも意識にはあったかもしれないですね。友情の話は4人がやるので、ゲストにはお父さん・お母さんとも共鳴しやすい人たちということでキャラクターを寄せた形です。
──本作で4シリーズ目という事で、三池監督が『ガールズ×戦士シリーズ』を撮り続けてきた思いやこれからの思いについて伺えますか。
三池:続けられているのは作品の結果によってなので僕たちで決めることが出来るわけではないですが、自分たちからもう終わらせる理由は何もないのでこれからも続けて行ければいいなと思っています。でも、続けたい気持ちが勝って、撮り続けるための作品作りとなってしまうとそれは不純なのでそうならないようにとは常に気を付けています。
──その気持ちを保ち続けられているのが素晴らしいです。
三池:子供たちが「日曜の朝は楽しいよね。」となればいいなと、漠然とした使命をもってみんな頑張っています。
──それがこの作品にとっても大事なものの1つだと思います。
三池:僕たちも凄く楽しいんです。何かが発信できたらいいなとは思っていて、それは観てくれている人たちはもちろん、出ている子供たち、一緒に作っているスタッフたちの中にあってもいいなと思っています。このシリーズを続けていくことによって何かに気づいたり、喜びを感じたりという、近辺に対するエンターテイナーでもあらなければいけないということはいつも考えています。そう考えながらも僕たちは、シリーズに出演してくれている彼女たちによって癒されていて、与えられてばかりなので、返せるものがあるはずだと常に思ってます。それが続けていくモチベーションになっています。
──本当に『ガールズ×戦士シリーズ』に対する熱い思いを伺わせていただきありがとうございます。映画はもちろんですがこれからのシリーズも楽しみにしています。
三池:今回は「心の中で」となりますが、ぜひ劇場でも応援してください。