挫折や清濁を受け入れて強くなる姿が洗練されて見える人
――昔の『オーフェン』から繋がるものはありましたか。
杉田:昔の『オーフェン』を観たいたのが無駄じゃないというのはありがたかったですね。
――無駄じゃないというのは。
杉田:過去を捨てて新しい『オーフェン』がリブートするから、それだけを観ろという事は言っていないんです。過去があるから今がある、オーフェン役も森久保さんのまま変わっていないですし、そこは個人的には嬉しかったです。過去を否定されてしまうと、その時代に生きていた自分まで否定されてしまう気になってしまって辛いんです。そういうことがないので良かったなと思っています。
――確かに歴史ある作品で過去作を否定しないで受け止めたうえでリブートというのは凄いことですね。
杉田:キチッと尊敬の念をもっているのを感じられたのが良かったです。そんな中でも観ている方には新鮮に映ったらいいな、とは思っています。今、周りで面白い現象が起きていて、“なろう系”や今のライトノベルに慣れた若い子たちが次に手を出すのが『ロードス島戦記』だったり『スレイヤーズ』だったりするんですよ。
――そうなんですか。
杉田:リアルタイムで見ていた我々世代からすると「そうなの!?」と驚きの事態なんですよ。若い世代がレコードを買ったり、ファミコンにハマったりするのと一緒ですね。『オーフェン』も今の子たちに刺さってくれると嬉しいです。
――それだけ、魅力のある作品という事ですよね。
杉田:オシャレといってもこのファッションが許される主人公って他にいないですよ(笑)。
――そうですね(笑)。そうはいっても、このビジュアルが変えられるのは嫌ですよ。
杉田:今風に直しましたとなったら、やっぱりショックですよね。最初に目に入るビジュアルですから、それだけ重要なんだと思います。それでもなかなかないファッションで、当時もこれが似合う人って誰なんだろうと思っていました。そう思いながらラジオの収録に行ったら「よう、スギ」って、一人いたわ(笑)。
――森久保さんにはそれだけの説得力があると(笑)。それだけ説得力があるというのは凄いですよね。
杉田:そこはオーフェンの生き様も含めて醸し出されていると思います。清濁を受け入れながら強くなる姿が洗練されて見える人って少ないんですよ。森久保さんの声と芝居はそれをオーフェンへ与えていると思います。
――ただの努力・熱血というわけではないということですね。
杉田:そうなんです。「最強」となると多くは最初から完成されていて、そもそも成長という概念そのものがない。物語の中でその役割をただ全うするだけの存在になりがちなんですが、オーフェンは挫折もして成長もする。そういった展開がこの『キムラック編』でも待っているので、それを楽しみにしてほしいです。オーフェンがスランプになりながらも乗り越えていく姿は必見です。
――四半世紀を超えて愛される作品というのは少ないですが、『オーフェン』がそういう作品の1つになった魅力は何故だと感じられていますか。
杉田:僕からお答えするのがなかなか難しいですね。逆に当時から好きな方に僕も聞いてみたいです。20年以上愛されている『オーフェン』が今の子たちにも愛されるといいなと思っていますし、昔から好きだった僕たちからすると新作がまた見れるという事が嬉しいという気持ちもあります。もしかしたら今の時代にこそ期待されている作品なのかもしれないですよ。
オーフェンの存在の大きさを感じました
――作品から少し離れてしまうのですが、今はコロナ禍ということでアフレコが止まってしまったり、収録で集まる人数も制限がかかってしまったりというのをお聞きしています。そういうことがあった中で改めてマイクの前に立つということで感じたことがあればお伺いできますか。
杉田:特に変わってはいないです。収録方法は確かに変わった部分がありますが、マイクの前に立つことができる幸せは変わりませんし、それについて特別悲観的になる必要はないなと感じています。
――そんな中でも森久保さんと現場でご一緒になる機会はあったのでしょうか。
杉田:何回かですがご一緒させていただきました。特に最終回は激突し戦うシーンだったので、是非一緒に録らせてくださいと森久保さんとスケジュールを合わせました。
――実際に戦ってみていかがでしたか。
杉田:オーフェンの存在の大きさを感じました。それは単純な物理的な強さだけからきているものではなくて、清濁を飲み込んで成長した、挫折を乗り越えたオーフェンに対峙するからこそ、これを倒そうとするなら普通の戦い方じゃダメだな、という事は常に考えていました。
――オーフェン第2期、古くからのファンもそうですし、新シリーズから、この2期から入られる方もいらっしゃると思います。ファンの方に向けてのメッセージをお願いします。1ファン『オーフェン』としても是非。
杉田:自分が最初のアニメシリーズを観たときに感じた、「オタクに寄り添ってくれるオシャレと音楽」というものをこの時代でも変わらずやってくれています。収録中に音楽は流れなかったので、放送を観る際はそこも視聴者の視点に立って楽しめたらいいなと思っています。森久保さんの主題歌『LIGHT of JUSTICE』も注目です。僕も放送を楽しみにしています。
Ⓒ 秋田禎信・草河遊也・TOブックス/魔術士オーフェンはぐれ旅製作委員会