「どうにかなる日々」がアニメ映画化。18年の時を超えた今なお色褪せない名作。様々な形の恋愛を描いたオムニバス作品をどのように映画として描かれていったのか。今回の映画化について原作者の志村貴子さんに語っていただきました。[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
好きなエピソードを選んでいただき映像化
――「どうにかなる日々」18年前の作品なんですね。志村(貴子)先生は連載中の作品をはじめ多くの作品がありますが、今回この作品が映画化ということでびっくりしました。
志村:私もビックリしました。
――映画化オファーはいつ頃から来ていたのですか。
志村:2018年の秋ごろです。
――ですと、すぐに制作に入られたんですね。
志村:そうなんです。お話を頂いてからトントンと進んだイメージです。ほか作品でも映像化の話って来ることがあるんですけど、立ち消えになることも多いんです。今回もそのパターンかなと正直思っていたので、こんなにしっかりとお話が進んでいくのでビックリしました。
――突然お話が来たという事なんですか。
志村:本当に突然でした。何年か前にお話を頂いてからいよいよねというわけではなく。私も今なぜと思ったくらいで(笑)。プロデューサーの寺田(悠輔)さんからすごいプッシュをしていただけて。寺田さんが「どうにかなる日々」を以前から好きだったそうで、今の時代に合った作品という事で選んでいただけたと聞いています。連載中ではない作品を映像化するのは難しいと思うんですけど、お話を頂いた時点で佐藤(卓哉)監督をはじめアニメスタッフのご提案もいただけていました。18年前の作品を今もこれだけ愛していただけるのはありがたいです。
――それだけの名作という事ですよ。ただ、もう1点ビックリした点があって、それは「どうにかなる日々」はエロティシズムもある作品ということなんです。
志村:そうなんですよ。
――オムニバスなので映像化するエピソードもレーティングを気にされて選ばれていたのでしょうか。
志村:確かにR指定が入ってしまうと限られた人しか見ることができないので、どうしようかという事もありました。ただ、今回はそこを意識するのではなく、まずは好きなエピソードを選んでいただいた形です。私の好きなエピソードも入っていました。多くの方に楽しんでいただきたいです。
私以上に原作を理解していただけている
――私も好きな作品なので、今回の映画は多く人に見ていただきたいのでそれを聞いて安心しました。映画化にあたってエピソード選択の件以外もスタッフのみなさんとお話もされたかと思うんですけど、どのようなお話をされましたか。
志村:そこまでガッツリと裏設定をというよりは、キャラクターのフルネームなど基本的な部分をお話したくらいで。自分からこうしてくださいとリクエストという事もなかったです。
――現場のみなさんを信頼してお任せした形なんですね。
志村:はい、お任せしました。皆さんからは「余白があることがいい作品で、そこを掘り下げるのは野暮になります」と言っていただけました。
――これだけ原作に対して愛があるみなさんに制作していただけるのはありがたいです。今回、監督をされた佐藤卓哉さんはどのような方ですか。
志村:アフレコの時のことが印象的で、演技指導の際に「この作品はこういう作品だから、あまりやりすぎないで」など細かくこだわって指導されているのを見て熱い方だなと思いました。
――佐藤さん自身、熱いファンでもあるんですね。
志村:監督が「このキャラクターのバックボーンはこうだと思うから、こういう事は言わないと思うんだよね」とおっしゃられているのを見て、私がなるほどねと思うくらいでした。私以上に原作を理解していただけているように感じたくらいです。深く考えていただけたのはありがたかったです。
――実際にそれだけ熱く向き合っていただける現場を見れるとさらに信頼も持てますね。
志村:はい。こんなに丁寧にかかわっていただけ本当にありがたかったです。
恥ずかしいと思うかもしれない
――一部アフレコを見られたとのことですが、みなさんの演技はいかがでしたか。
志村:見ているだけなのに私も緊張してしまいました、目の前でセリフが読まれるのは恥ずかしかったです。音が乗ることでの感動はもちろんあるんですけど、それと同時にギャーって思うこともあって。
――(笑)。
志村:凄い上手なみなさんにネームを読み上げてもらうのを見ていて、ヤメテ―って(笑)。
――文章を目で読むのと、音として入ってくるのは違いますからね。
志村:本当にそのモノローグを読み上げないで、20年近く前に書いたポエムを読み上げないでって。恥ずかしい。過去の自分に向き合えないですね。恐る恐る読み返す形です。
――経験を重ねるとまた変わってくることもありますからね。
志村:だから、色々決めてくださったのがかえって良かったです。私がガッツリ入ってという事になると過去のものなので絶対に隠します。
――それは困りますね。
志村:なので、みなさんで作品を読んで一つずつ拾い上げていただけたのは逆にありがたかったです。
――音繋がりで行くとクリープハイプのみなさんに主題歌とともに劇伴も担当していただけていますね。
志村:はい。そこもビックリしました。
――作品音楽全般をという事で主題歌との統一感も出て魅力が増すのかなと思います。作品音楽を聴かれて如何でしたか。
志村:単純にかっこいいなと思いました。
――主題歌に関しても全てお任せした形なのですか。
志村:そうです。書き下ろしで主題歌も作って頂けるという事を伺って、「良い方! 凄い!」と思いました。
――もう完成した作品は見られたのですか。
志村:はい。
――自身の作品のアニメ映画を見られていかがでしたか。
志村:やはり、最初は恥ずかしいというのが前に出ます。でも、しんちゃん・みかちゃんの思春期真っ只中のやり取りを引いた視点で見れて微笑ましかったです。
――しんちゃんは本当にあの世代の男の子リアルな反応なので、実は実際にお会いするまで本当に志村先生が女性なのかなと思っていた部分もありました。この小学生の思春期手前の女性との距離感は心当たりがあるので、ここは私も読者として恥ずかしい思い出をくすぐられました(笑)。
志村:(笑)。
――そんな恥ずかしいだらけの作品がこれから公開されるわけですね。
志村:見ている人も大丈夫かなと心配になる部分もあります。恥ずかしいと思うかもしれないですけど、そうゆう作品でしょうがないので恥ずかしい作品だと思ってみていただいて、そこも含めて楽しんでいただければと思います。
――せっかくなのでロングランしてほしいですね。
志村:恥ずかしいですけどそうなってくれると嬉しいですね。