これからに向かって切り裂いていこう
──さて、アルバムの中身に迫っていきたいのですが、今作のアルバムタイトルは『R.I.P. CREAM』ですが、このタイトルに込めた意味はなんでしょうか?
MJM:響きが好きだなという部分と、中学ぐらいからロックとかパンクを聴いてきて自分がつくられたので、今まで好きだったものに感謝して振り返ろう、吐き出そうって思いがあって。あと、RIPって裂くって意味もあるんですけど、これからに向かって切り裂いていこうという感じ。はっきりこううまく言えないんですけど。
──塗る方のリップクリームだと思ってました…。ではアルバムの中でみんなが特に推したい1曲をセルフライナーノーツしてください!
NIKE:僕が凄く印象に残っているのは「UNITED」という曲を録音しているときに、今までのバロンドールにはあんまりない曲で、MJが弾き語りで持ってきてくれたときから凄く好きで。ただストレートな曲だからこそ、どんなフレーズにしていくか凄い悩んだんですけど、ギターの録音が終わって出来上がったオケを聴いたときに、エンジニアの方も凄いのってくれたのを見て、いろんなところに届く曲なんだろうなって思いました。
NANCY:私は、いっぱいあるんですけどひとつに絞るとしたら「DINER」って曲です。サウンド的にも色々新しい事に挑戦した曲で、ビート、サンプラーもだし、展開も面白くて。根本は変わってないんですけど、アウトプットしたときに日々進化して新しいものができたと感じた曲です。
AKAHIGE(Dr):今回ビートとかリズムを何回も作り直したんですけど、一番最初に取り掛かったのが「SCUM TRUCK」で、曲に対してのアプローチ、アルバムの全体像の断片だったのかなって。僕にとっては凄く重要な曲です。
NIKE:「SCUM TRUCK」は、とにかくリズムの印象を強くしたいって話をMJMとAKAHIGEがずっとしてたよね。
AKAHIGE:つくって、つくり直してを繰り返してましたね。
──スケボーのMVと、直球過ぎない気怠いリズムが格好良いですよね! MJMはどうですか?
MJM:僕は「PURPLE JUICE」って曲ですね。いろんなもの好きなんですけど、サウンドに関してはずっと聴いてきたもの、好きだったもの、例えばJoy DivisionとかPrimal Screamとかギターが鋭くくるものが好きで、それに自分の中のPOPとどう打つけようかと考えてたんですけど。あの曲は自分等だからできたかなって。
──ありがとうございます。歌詞にも迫っていきたいんですけど、MJMは映画は良く見るんですか?
MJM:そうですね。映画ばっか見てます。映画出身です。まだバンドやってなかったとき、高校生って金ないじゃないすか。これだめなんすけど、1回見て、トイレに隠れて3回見るってのをやってて(笑)。結局バレてめっちゃ怒られて追放されたんですけど。
──(笑)。いや、凄く歌詞が映画っぽいなと思って。
MJM:自分の中で、歌詞って自分の中に思い浮かんだ映像を、どういうふうに言葉にするかって事を考えてて。例えばソフィア・コッポラの映画とか、景色で伝わるものがあるって感覚になったりして。映画に影響されてる部分は多いかもしれません。
──映画のキャラクターも色々出てきますよね。例えばキキが出てきたり。
MJM:ジブリも大好きで、「DAYDREAM」って曲は確かにキキが入ってるんですけど。ひとつの気持ちを運ぶときに、荷物はキキみたいに簡単に運べるけど、気持ちって近い人にも凄く伝えるのが難しいなと思って、それでああいった歌詞が入ってきたんですけど。
──凄く曲に溶け込んでて良い歌詞ですよね!(「たった一つの思いもキキみたいに運べない」) メンバーはMJMが書いてくる歌詞をしっかり解釈してから臨むんですか?
NIKE:本当に序盤のころはまったく理解できない曲も多かったりしたんです。ただそれがどんどん骨組みができてきて、このビートで、このメロディを鳴らす意味ってのがちょっとずつ見えてきて、全貌が見えてから、それぞれのフレーズをつくって、レコーディングに望んでいった感じです。
NANCY:この歌詞はどういう意味って聞いたり、アルバムタイトルもですけど、ひとつの言葉でいろんな意味があるから、言葉で説明ってよりは風景とか、色とかで伝えられる事が多いので、それで挑むって事が多いです。
NIKE:「C.R.E.A.M」とかは凶暴で野生的な、MJMのそういった一面が出ていると思います。それと真逆で、「DAYDREAM」みたいな凄くノスタルジックな歌詞とメロディがのってたりするので、2つのものがアルバムの中で混在していて、MJM自体もひとつじゃない、たまに分裂しているように感じることがあって。
MJM:分裂というか自分の中に二人いるときがあって、「C.R.E.A.M」って曲は、自分の言いたい気持ちとか凄く感情的になる部分と、それを冷静に観察して客観視している自分、2人の自分で作っていて、それをミックスさせたいなと思って、NANCYと歌い分けているんですけど。
──もうひとりの自分役だったんだね?
NANCY:はい、がんばりました。「C.R.E.A.M」一番大変だった歌。
──歌詞をあらためて読むと剛柔な感じで、それが二面性に通じてるんですね。
NIKE:出会ったときから本当そうで、最初の印象が凄い暗い人だなって思ったんですけど、お互い音楽が好きたって話をし始めたときに全く止まらなくなる。かと思えば考え事して何もしゃべらなくなる。
MJM:ちょっとずれるんですけど、中学ぐらいの頃とかに、音楽とか好きなものが合う人がいなくて、あんまり好きじゃないけど、好きって言っとくというのを繰り返してる自分がいたんですよ。うちの中学は凄くヤンキーが多くて、ヤンキーたちが聴いてる音楽が格好良いみたいな文化があって、そこで話合わせないと痛めつけられるみたいな事がよくあって。そして高校の頃にNIKEくんと出会って、最初は気持ち悪いやつだなって思ってたんですけど、ある日NIKEくんの家に行ったときにBLANKEY JET CITYの『Harlem Jets』が飾ってあって、「あ、こいつは信用できる」と思って仲良くなりました。それで、2人で地元のコンサートみたいなやつに、ドラム入れてブランキーのインストの曲をやったんですけど、失笑みたいな感じで全然ウケなくて、めっちゃ落ち込んでバンド辞めようってなったんですけど、NIKEくんがもっかいちゃんとやろうぜって。それがスタートですねバンド初めたのは(笑)。
──今あるのはNIKEくんのおかげだね。
MJM:実はその後もひどい失恋をしちゃって、そのときも音楽辞めようってなったんですけど、またNIKEくんがやろうと言ってくれて。だから2回救われてます。
NIKE:2回とも救ったとは思ってなくて、変な風に思われるかもですけど、僕の片思いなんです(笑)。そもそもMJMは凄く声が良いなと思ったんですよ。この声の人とバンドを組んだら面白いんじゃないか、彼はきっとバンドをやるべき人なんじゃないかと。僕はメンバーとして一緒にいたいという思いからです。
──両思いだと思うよ。事故のとき2回とも来てくれてるじゃん(笑)。
NANCY:おぉ ほんとだ(笑)。