SPARTA LOCALSが2017年末より不定期に開催している2マン自主企画『TWO BEAT』。自身が責任と自信をもってかっこいいと推し、そこに何のしがらみもなく一緒に共演すべくバンドを、自ら声かけをし実現させてきた、武骨と気概が伺えるイベントだ。
これまでアナログフィッシュ、サンボマスター、KING BROTHERSといった自身の音楽性に一過言を持つバンドたちと共に一夜を作り出してきた同企画。その第4回目がeastern youthを迎え11月10日に 新宿ロフトにて行われる。この2マンはeastern youthによる2008年暮れの「極東最前線」にSPARTA LOCALSが呼ばれて以来11年ぶり。そのぶん期待値や待望感も高まっている。SPARTA LOCALS、eastern youth、新宿ロフト...この掛け合わせから、どんなストーリーが生まれ出ていくのか? 今はそんなワクワク感でいっぱいだ。そんな同イベントについてをSPARTA LOCALSの安部コウセイが語ってくれた。(interview 池田スカオ和宏)
余計なものは一切介在しない
──まずは改めて、この「TWO BEAT」の企画趣旨をご本人の口から教えてもらえますか?
安部:「自主企画」って世に沢山あるじゃないですか。でも自分からすると、その「自主企画」自体そんなに気軽に出来るものではない印象があるんです。それはeastern youthやfOUL等からの影響が自分の中では大きくて。
──いわゆる「極東最前線」(eastern youth主催)や「砂上の楼閣」(fOUL主催)ですね。
安部:これらの企画は主催側が「このバンドのことがかっこいい」と本気で真剣に思い、相手を誘っている、そんなイメージがあるんです。そこには、そのバンドが売れてようが売れていまいが関係なく、背景に政治的な絡みも一切ない。そんな一貫した意志やアティテュードみたいなものが滲み出ている。それが自分の中での自主企画の在り方だと常々感じていたんです。
──双方の企画からは、「純粋に俺はこのバンドと一緒にライヴが演りたい!!」「自分たちのお客さんにもこのバンドを観てもらいたい!!」的な想いを感じますもんね。それこそバンドに直接出演交渉するレベルの。
安部:そうです! そうです!! 余計なものは一切介在しない。それらが自分の自主企画の源流にあって。いわゆる、強い意志を持ってそのバンドをセレクトし、心意気もしっかりと伺え、それがお客さんにも伝わる。そして実際に観て、全く知らなかったバンドでも、そのかっこよさが伝わる。それこそが自主企画と呼べるものだろうと。そのような場所を自分でも作りたかったんです。が故に、なかなか腰が重くなっちゃってますが(笑)。
──生半可にできないし、体力もかなり使いそうです。
安部:一生懸命、真剣に考えて運営するぶん、毎度非常に疲れます(笑)。想い出すんですよね、fOULの「砂上の楼閣」に出せさせてもらった際のことを。その頃、僕らはまだ福岡で活動をしていて何者でもなくて。そんななか一度、fOULのツアーの際に僕ら地元のバンドとしてサポートさせてもらったことがあったんです。その際にライヴを観ていただき、気に入って下さったようで。その後、下北沢シェルターでの「砂上の楼閣」に出演させてもらったんです。僕らからするとそれは凄く感動的で。それこそ、「まだ何者でもないのに? いいんっすか、俺たちで?」って感覚でした。でも、そこにもの凄くfOULの美学を見たんです。政治とか集客とか一緒にやることでのメリット等の皮算用が一切存在しない何か、みたいな。
自分たちがかっこいいと思えるのが第一
──対してこの「TWO BEAT」では何か出演基準みたいなものがあるのでしょうか?
安部:自分たちがかっこいいと思えるのが第一です。メンバーの誰かひとりでもいいから深く思っていたり。イベントの良さって、そこで起こるストーリーだと自分は考えていて。そのバンドと、そこでしか見れないストーリーを作り出すことが出来るか? ですね。逆にその辺りがワンマン以外でのライヴの魅力だと自分では思ってますから。そこには当然、お互いのお客さんにとっても新たな出会いや発見があるだろうし。
──そんななか以前、彼らの企画にも呼んでもらった経緯も持つeastern youthと次の「TWO BEAT」では共演になります。その際以来、お互い色々とあったので、実に11年ぶりの2マンライヴになりますが。
安部:吉野さんは未だにお会いすると緊張する方の一人です。全力で自分なりのライヴを演るつもりですが、やはり肩に力は入るでしょうね。お客さんに関しては、「eastern youthとSPARTA LOCALSが一緒にやるなんてヤベえ!!」「しかもあの新宿ロフトで!?」と、その辺りのリテラシーのある方々が集いそうですよね。今回は「新宿ロフトでやる」そこもポイントなので。
──シチュエーションも重要だと。
安部:もちろん! 先程のストーリーじゃないけど、やる場所は非常に大事なことの一つです。元々今回の「TWO BEAT」自体、「今回は新宿ロフトでやりたい!!」との思いから始まり、「じゃあ、どなたとこのステージで一緒にやりたいか?」からパッと浮かんだのがeastern youthだったので。
これが僕の東京のライヴハウスの原風景
──ちなみにコウセイさんの中で新宿ロフトにはどのような思い入れが?
安部:まだ福岡に居た頃に自家用車で新宿ロフトにライヴをしに来ていたんです。その度に、「なんていかがわしい街なんだろう?(笑)」って。でもこれが僕の東京のライヴハウスの原風景だったりするんですよね。立地や猥雑さ、危うさや緊張感も含めて、未だに。なので自分らの中では勝手に濃いストーリーのある場所だったりします。
──では、そこにeastern youthと共に何かしらのストーリーを生み出せそうだぞと。
安部:もちろんそのストーリーはお客さんの中でのことになります。僕らはただ自分たちのライヴをお互い懸命にやるだけなので。ただ自分的にはこの上ないかっこいい一夜というストーリーが既にあります。
──以前の共演から日が経ち、よりお互い共通項も感じられますもんね? SPARTA LOCALSの新作『underground』からもどこか、eastern youthが醸し出してきた「暮らし」的な趣きも感じられたりしたし。
安部:おっ、鋭い!! 確かにそうなんです。その辺りがこれまでの自分たちでは描いてこなかった面だったりもして。特に理由はありませんでしたが、今回はそこを描こうと。そこは新しい側面ではありました。
──どうしてそこに行き着いたんでしょう?
安部:新しい歌詞や曲を作る際に、「自分は何に困窮していて、何に怒っていて、何に違和感を抱いているんだろう?」と改めて考え直してみたんです。それこそ若い時は全てに怒りを感じていての歌詞だったりしたので(笑)。対して今のリアリティって何だろう? を突き詰め至ったのが、今回の類いだったんです。大人になると、やはり生活や暮らし、それらと社会との関係性も無視できなくなるわけで。そこを無視しちゃうと怒りそのものの根源も無いに等しくなっちゃう。なのでその根源的なものを描いた結果です。
──根底にはきっちり怒りが伺えるけど、それらが何を経て、どうしての怒りなのか? が、やるせなさも含め今作では伝わってきます。その辺りもより、eastern youthとの共通項として伺えます。
安部:衝動的な怒りとは違うエネルギー、みたいな部分では共通項は、より増えたかもしれませんね。
何にも影響されず、何にも動揺せずにライヴを行う
──当日はどのような一夜にしたいですか?
安部:SPARTA LOCALSとeastern youthと新宿ロフト、この組み合わせは自分的には非常にドラマティックなものだと解釈していて。全体的に漂うその雰囲気をお客さんも楽しんでくれたら嬉しいです。ステージに関しては、いつもの自分たちのライヴを演るだけです。今の僕のライヴに臨む姿勢としては、「何にも影響されず、何にも動揺せずにライヴを行う」だったりするので。来られる方は感度が高く、ある意味色々なことを分かっている方々ばかりでしょうから。是非イベント全体が醸し出すストーリーを味わって欲しいです。