メレンゲのクボケンジ、ヒグチアイ、そして琴音......。世代も違い、音楽性や歌の趣向、用いる楽器やその活動スタンスも異なるシンガーソングライターたちだ。そんな三者の共演となるのが、来たる7/29に新宿ロフトにて行なわれる『LOFT三つ巴ライブ2019〜アコースティックの夕べ〜』。この機会ならではの共演も手伝い、集った方々が自身の目当てアーティスト以外にも、どのような発見をし、自身に何を持ち帰えるのか?も興味深い。そんな今年の『三つ巴ライブ』にて最年少で登場するのがこの女性シンガーソングライターの琴音だ。まだ現役の高校生ながらその歌声と表現力、実年齢にそぐわない多彩なソングライターセンスで既に多方面より評価の高い彼女がRooftopに登場。当イベントの企画者にして、過去に琴音を自身プロデュースのイベントへ出演させた経緯も持つ、新宿ロフトのブッカー樋口寛子も交え話を訊いた。[interview:池田スカオ和宏]
今までの自分がキチンと出せたらなって
──琴音さんはT『EEN'MUSIC CAMP』(2009年~毎年新宿ロフトで行なわれている22歳以下のバンドやシンガーソングライターが出演する音楽イベント)過去2回出演経験がおありだとお聞きしました。
琴音:そうなんです。そこで出会いや広がりも幾つかですが生まれました。バンドさんも多く出られて、みなさん固まって仲良く話していたんですが、基本、私凄く人見知りなので(笑)。当日は楽屋でも隅っこの方にいました(笑)。そんな中、同じく一人で出演されていたシンガーソングライターのお兄さんお姉さんとかが声をかけてきて下さったり。そこでお互いの作風や人柄等にも触れられたりと、それまで自分一人でやっていたこともあり、そこでこれまで知らなかった色々な発見や出会いがありました。
──当日のこととか覚えていますか
琴音:(『TEEN'MUSIC CAMP』には)2年連続で出たんですが、1回目は自分が最年少で。周りの方々が凄くキリッと立派に映りました。ちょっと近寄りがたいな…って(笑)。今振り返ると気負いしちゃってたんでしょうね。
──樋口さんはどうして彼女をイベントに出演してもらおうと?
樋口:そのイベントに応募してくれた音源を聴いていく中で出会いました。まずはその歌声に魅了されて。それこそ、「うわっ、凄い!!」って。是非ロフトのステージで歌っている姿を見たいな…と。で、その後、プロフィールを見たら、まだ15歳だったので二度驚きました。「15歳でこの才能は凄い!!」って。以来「一体どんな15歳なんだろう」と益々興味が湧いてきたんです。
琴音:出演が決まってからは、ライブもあるのでかなり緊張しました。しかも東京だったし…。私、それまで県外(新潟在住)に出ることもほぼなかったので。応募はしたものの「田舎者には恐れ多いでござる」状態でした(笑)。
──当日、何か印象深かったことってありましたか?
琴音:間違えないように、とかなり緊張してました。ステージがバンドさん用と私みたいな弾き語りの方々とで分かれていて。私は弾き語りの方々と一緒のステージでした。バンドさん目当てのお客さんも多い中、どれ位多くの方々をこちらに振り向かせたり、キチンと聴いてもらえるか? に注力していました。実際、歌い出したらみなさんけっこう集まって下さって。安心したり喜ばしかった記憶があります。
──8月7日には1stシングル「今」が出ますが、正直これまでと違ったタイプでかなり驚きました。
琴音:今回は自分の中で、「こんなことを表したい」的な世界観が当初からあったんです。それを基にアレンジャーの石崎光さんと色々と作っていきました。以前も何曲かご一緒させてもらっており、意志の疎通もキチンと出来、伝えたいことも尊重して下さいました。
──先程の「こんなことを表したい」についてもう少し詳しく。
琴音:今までは自分の曲の中でも比較的、温かみを重視してきました。もちろんそれは今でも保ちつつ、より強さや鋭さを表してみたいなって。ダイナミクスにもかなりこだわりたかったし、歌詞もかなりこれまで以上に具体的になっています。
自分的にも予想を超えたものが出来た
──今回はそれこそタイトルにも表れている「今」がキーワードにありそうです。
琴音:固い感じで言うと、人としての在り方だったりするんですが、実際に人と関わっていく中で、かつては自分でもあったんですが、仮面をかぶって自分をひた隠しにして周りに合わせるような方々も実際にいらっしゃるんじゃないかなって。そんな中、もがいているなら、ありのままでいた方がいいし、自分に正直になって生きてみたい。そんな自分にも戒めた歌だったりもします。人との関わりや自分の気持ちの面において考えるきっかけになったり、元気づけられたら嬉しいです。
──確かにこれまで以上に、楽曲が聴き手に委ねられている感はあります。
琴音:これまでのような情景描写等の具体物もあまり歌にはないですからね。その分、内面重視な曲ではあります。人それぞれで聴いていて思ったり、浮かんだりするものが違う、そんな歌を目指していたりもしたので。多くの方がみなさん自分の中に取り込み、自身の解釈や浮かんでくるビジョンを楽しんでもらう。そんな楽曲が理想でした。
──歌声による表現力や描写力も、これまでにも増して長けている印象を受けました。
琴音:ありがとうございます。これまでの楽曲の中で、もっともメリハリやコントラストがついていた楽曲になりました。自分で作っておきながら、実際、歌うとなると大変だったり難しい曲が私の中でも幾つかあって。この曲もかなりそっち寄りです(笑)。自分としてもかなりのチャレンジや冒険した曲だなと。
──サウンドアプローチも、これまでとは対照的でラップトップ方面だったので意外でした。
琴音:楽曲全体を海っぽい感じにしたくて。そのイメージを伝えました。爽やかでパーッと広がっている感じが欲しくて。石崎さんもより声を聴かせられるように、キチンとダイナミクスと高低差があるようなイメージを持って下さっていたようで。自分的にも予想を超えたものが出来たので非常に満足しています。
「こんな子がいるんだ…」と知っていただけたら嬉しい
──ライブの話に戻ると。7月29日にはクボケンジさん、ヒグチアイさんと『三つ巴ライブ』に共演されます。
琴音:非常に興味があります。お二人ともどんな音楽やステージをするのかが今から楽しみで。その時の自分を精いっぱいやらせてもらいます。私はそれこそあまり気負いせず、今までの自分がキチンと出せたらなって。
樋口:いつも通りのありのままの琴音ちゃんでやってもらいたいです。それだけできっとお客さんを魅了してくれるでしょうから。
──普段のイベント出演時よりも一人当たりのライブの尺も長そうですね。
琴音:実は私の中では時間は長くても短くても心持ち的には一緒だったりするんです。長い時間だと体力や集中力の持続も必要となってくるので、それが落ちずにキープできるよう頑張ります。実際、気持ちは持続できても体力がついていかない時もありましたから。そうならないように気をシッカリ持って挑みます。
──最後に、このイベントへの意気込みをお願いします。
琴音:自分としても今からとても楽しみにしているイベントです。お二人のお客さんも沢山来られると思うので、その方々にも「こんな子がいるんだ…」と知っていただけたら嬉しいですし。自分は自分でいつも通り精一杯出来たらなって。先輩のお二人とも今後、仲良くさせていただく機会でもあるでしょうから。自分も楽しみながら精一杯やれたら最高です!