2019.6.17、SHIT HAPPENINGとしての活動に終止符が打たれる。約10年間の奇蹟、彼らの目指す最初で最後のSHIT HAPPENINGとしてのゴール。4月某日、私はVo.小野﨑建太へ俗に言う"解散インタビュー"を行った。一見重苦しく堅い雰囲気、と想像しがちだが実際は終始笑いが絶えず、実に彼ならではのインタビューとなった。
彼の人間性、人生観、SHIT HAPPENINGとしての10年間の証、是非一つ一つの言葉から読み取り、併せて汲み取ってほしい。そして私には、言葉以上に彼らとファンの間には確かに絆があった気がしてならないのだ。[interview:ヨコミゾエリ(ROCK CAFE LOFT/新宿LOFT)photo:スギモトカズヒロ]
ずっと一緒に居てくれたからこそ、ちゃんと終わりにしたい
──続けることではなくて、今回解散を決めた理由は?
小野﨑:SHIT HAPPENINGとして約10年間、新作のリリースごとに全国ツアーを回って、作品を作って、そのサイクルの繰り返しで、ただ続けるためには結果に繋げないといけない。結果に繋げる為に、自分達らしく活動を続けていくために、2016年〜2017年に活動休止期間を設けた。活休明けからの約1年半、SHIT HAPPENINGをやり切るために自主レーベルを立ち上げて、2018年1月に『Stargazer』をリリースして、夏に10周年ツアーを回ってファイナルを渋谷クアトロで迎えたその後ぐらいからかな、「続けて行くためにどう続けていくのか」って話し合いをしたんだ。何度も話し合って、時間をかけて、続けるという選択ももちろん出たけど、4人で歩ける距離はここまでだったって結論が今回解散という答えに至った。ただ、このタイミングで解散という決断は最善の答えだった思う。
──自主レーベルに移り変わって約1年半、4人にとってどういう時間だった?
小野﨑:当たり前だけど様々なことを自分達でやる機会が増えたよ。それぞれ4人上手い具合にできることが分担されてる分、その部分がより特化されるようになったし、話し合いの時間も大幅に増えて、自分らのやりたいこと、すべきことをやり切る為の時間に充てられたかな。それに「彗星」のPVを映画監督の藤井道人さんが撮影してくれたり、この期に及んでもミラクルがたくさん起きた時間だった!
──それが公式の「この4人でやりたいこと、やれることは全てやり切った」という発表に繋がったんだね。
小野﨑:この約1年半、俺らの側にはいつもマネージャーの角田がいてくれて、この約1年半の活動で角田の存在は本当に重要だった。だから厳密に言うと「5人でやりたいこと、やれることは全てやり切った」だね。
──解散発表前と発表後、心境の変化はあった?
小野﨑:俺らの楽曲は前向きな楽曲が多い分、歌う度に拭えない影が付いてきて、「俺はこの気持ちを抱えながらお客さんに歌っていいのかな?」って思うことは正直あった。とはいえ、解散を発表してたから影が晴れるって訳でもなく、「こんな気持ちで歌うぐらいなら、ライブはやらずにこのまま終わらせた方がいいのかな?」って。でもお客さんと共有した約10年間を、このまま終わらせるわけにはいかないって気持ちの方が圧倒的に強かったんだよね。勝手だけど届けたい気持ちは解散しようとしまいと変わらないし、歌いたいし、俺らとずっと一緒に居てくれたからこそ、ちゃんと終わりにしたいって。
──なるほど、その変化が今回のツアータイトルに繋がったの?
小野﨑:今瀬(Ba)にツアータイトル悩んでるって相談された時に、「この気持ちがずっと色褪せないように、10年後、20年後の君にとってこの作品はどんな作品として残っているかな?」って想像しながら、1st ALBUM『THIS MEMORY TO ME...』の曲、一曲一曲書いたことを思い出して。だから今回のラストのツアータイトル”THIS MEMORY TO YOU...”になったんだ。約10年後、「君にとってのこの10年間はどうだった?」って。俺ら平成に生まれて、いろんな選択肢の先に今日があって、今回元号が変わるタイミングで区切り付いて、我ながら物語が上手く出来すぎててSHIT HAPPENINGっていう作品は本当に凄いなって思う!(笑)
ゴッホの人生にバンド人生を投影
──今回『幻燈/星月夜』の2曲、制作の上で意識したこととかあった?
小野﨑:ラストだからっていう特別意識したことはなくて、今まで通り今伝えたいメッセージを書いたかな。今まで俺らの作品は前向きになってもらいたいとかポジティブなものが多かったから、今回の『幻燈/星月夜』はポジティブな曲としてみんなに届けたい。あとは歌詞をタイトルに付けるってことをほとんどせずに、総称して気持ちをタイトルとして表現する事を一貫してきたから、そういう面も含めて最後まで俺ららしい作品が出来たって思う。
──今のSHIT HAPPENINGだから作れた曲、言葉が詰まっているね。
小野﨑:約10年間バンドとして夢とか理想とか抱きながら続けた結果として世でいう「成功」には繋がらなかったかもしれないけど、でも俺らだからこそ書ける作品、俺らにしか書けない作品になったって自負できる。俺らの作品として最後に作った「星月夜」はフィンセント・ファン・ゴッホの作品からインスピレーションを受けているんだ。
──ゴッホってあの画家の?
小野﨑:そう、ゴッホの作品で「星月夜」って作品があるんだけど、ゴッホの人生に俺らのSHIT HAPPENINGとしてのバンド人生を投影したんだ。ゴッホってあまり人と関わりを持たないまま病を患って一人寂しく生涯を終わらせてしまうんだけど、暗闇でもがいた人だからこそ描けた光が「星月夜」という作品を生み出したんだと思う。今回どんな曲にしようかなって考えた時に「彗星」のPV撮影で、夜空一面の星が空から溢れ落ちてくるんじゃないかってぐらいの情景を思い出して「星月夜」の2サビが思い浮かんだ、というよりも初めて歌詞が降りてきたという感覚が走ったんだ。俺らのバンド人生、正直、常に歯がゆい気持ちがつきまとってきたけど、ここまで続けてこられた勇気やパワーはいつだってお客さんが俺らを満たしてくれたからなんだ。目を瞑って真っ暗な闇に差し込む光って、すごく煌々と感じられるからこそ俺らは俺らにしか描けない光を描き続けることが出来たよ。あと、みんな絶対気付かないだろうけど、「星月夜」の曲中に隠されたメッセージがあるんだ。敢えて詳しく言わないけど、気付いてくれる人がいればそれでいい(笑)。
人生の中心だったSHIT HAPPENING
──ツアー目前、いよいよ一つ一つが最後となるわけだけど、ゴールまでどうやって走り切りたい?
小野﨑:発表してから実際目の前で泣いてくれるお客さんもいて、悲しんでくれる気持ちは本当に有難いなって思うんだけど、でもやっぱり笑わせてあげたいなって思う、勝手だけどね。俺らにとって人生の中心だったSHIT HAPPENINGが無い人生ってのはどうなるんだろう?って考えるけど、分からない。ただ変わらず俺は毎日が楽しいんだ。だから俺らとしても最後までライブを楽しみたいし、お客さんにもライブを楽しんで欲しい。多分みんなが俺らに求めてくれてる姿とかライブってきっと俺らが想像してるものと同じで、いつだって、どんな時だって、俺らは笑っていたいし、そういう俺ら4人の姿を見たいって思ってくれてるはずだから。なんならファイナル後も「最後なのにあいつまた歌詞間違えてた!」って笑いながら酒飲んで泥酔して寝てくれって思う(笑)。
──お客さんにとって、この先SHIT HAPPENINGはどうあってほしい?
小野﨑:人生は本当に出会い別れの繰り返しで、でも紛れもなくSHIT HAPPENINGとの時間があって、各々きっと楽曲だったりSHIT HAPPENINGへ思い出を持っていてくれていて。でも「Photograph」の歌詞の通りで、卒業アルバムを見返すみたいに「こんなこともあったな〜」ってたまに曲を聴いたりして笑いながら振り返るきっかけになってくれれば嬉しいかな。ほら、恋愛と一緒で、いい距離感っていうのかな?心配かけたくないし、嫌いになってほしくないし、でもこっちが好き!って言いすぎも良くないし、思いが強すぎると「重い」って思われちゃうから…。
──あはははは、重っ!(笑)