ASPARAGUS渡邊忍、初めてのソロ弾き語りワンマンライブ@下北沢SHELTER決定! 「自分らしさ」を追い求め、バンドメンバーという安心感から、自ら一歩前に出ることを決意した渡邊忍の新たなるスタート地点とも言える今回のライブ。様々な思いや葛藤の中で、何度も中止にしようかと悩んだというが、チケットはまさかの即日完売。待ちわびていた人は少なくなかったようである。"アザーワールド(?!)"前に彼がなにを刻むのか、この目で確かめずにはいられまい。[interview:川本俊・安佳夏(下北沢SHELTER)]
身一つ、裸一貫、男渡邊忍、ロックンロール、ありのまま
アザーワールド前に
——Rooftopは3P3Bの10周年の座談会以来、約10年ぶりになります。
渡邊:そうだよねぇ、だいぶ前だよあれは。3P3B、来年20周年だもん。空白の10年間。大人になりました(笑)。
——今回ASPARAGUSとしてではなく、ぼっちの渡邊忍さんとしてのインタビューになりますが、そもそもソロ活動自体はいつ頃から始めたんでしたっけ?
渡邊:ソロ活動っていうソロ活動は、Niw! Recordsのコンピ『PLAY THINGS』で、弾き語りみたいな感じでひとりで出してくれって頼まれて参加したのが、音源になってるのでは最初かな。他のバンドマンとか、わりと積極的に弾き語りやったりしてる人も多いけど、俺はどっちかっていうと前のめりにやってるんじゃなくて、誘ってもらえたらやりますって感じ。でも、そんな受身な態度でいるとあれよあれよという間にすぐニューワールドいっちゃうなと思って。他界ってことでいうとアザーワールドっていうのが正しいかな(笑)。で、そのアザーワールド前に刻んでおきたいなって思って、今回は自分で企画したんだよね。やっぱりバンドはメンバーがいると安心しちゃって、それはそれで楽しいんだけど、己ひとりでやるということをやってみたかった。俺こう見えてどっちかっていうと恥ずかしがり屋なの。人見知りだし。見えないでしょ。逆にそういう部分を隠すためにガンガン先手を打っていくタイプなのよ。
ありのままのしのぶ見せるのよ
——以前別のインタビューで、「ひとりでやる楽しみをいまいち見いだせてない」とおっしゃっていましたが。
渡邊:うん、音楽を始めたのも、バンドでみんなで演奏してニヤニヤしてるのが楽しいからで、俺はわりと自分ひとりで、「俺が俺が」っていう性格ではないんだよね。弾き語りのライブをしてても、言い方超悪いけど、のど自慢大会みたいに感じちゃって。卑屈なだけかもしれないけど。いや、他のアーティストに対してそう思ってるわけじゃないけど!(笑) カバーをやってても結局、本物を超えられるわけでもなく、そこに何も見いだせない感じはあって。だったらオリジナルで全部やりたいっていうのもあるんだけど、曲は全然かけないし。そういうこともあって、今回このワンマンを打てば、それまでに何か仕込むんじゃないかと思って。実はこれ、以前、横浜FADのブッキングの夏目くんに相談した時にもらったアドバイスで、俺が、「ソロで音源出したりとかしたいんだけどね〜、結局やらないんだよね〜」って言ってたら、「ハコ(ライブハウス)のスケジュール押さえちゃえばそれまでにやるんじゃない?」って言われて。なるほど! って思ってさ。それで今1ヶ月前ですけど、何も仕込めてないという。(笑)。
——1つの目標地点としてワンマンを設定したという感じですか?
渡邊:逆に言えばそこがスタートだから、それに対してあまりイキりすぎたり完璧に仕上げようとも思ってなくて。すごくいろいろ考えて、普通に弾き語りじゃ面白くないかな、ワンマンの長さだと飽きられちゃうかなとか思って、仕掛けじゃないけど例えばサンプラー用意してみようかなとか、ちょっとトリッキーなことやろうかとか考えてたんだけど、それは今回じゃなくて後々でもできることだし、逆にそういうことやる方がキモいなって自分の中で思って。まずは自分の歌とギターだけでどうにもできねぇような野郎が、サンプラーとかオートチューンで声ケロケロとかやったところでダメだろうなと。裸で、ネイキッドで、全裸でいってダメなやつが洒落たことやろうとしてもクソダサくなるだけと思ったから、まずはギターと歌だけでいこうというハラが決まったんだよね。ついこの前(笑)。しかも、こっちはイキってすごいことやってやろうとか思ったりもするけど、見に来てくれるお客さんってそれ期待してるかなぁと思って。ちょっと古い、アナ雪の話になるけどさぁ、まあやっぱり、「ありのままのしのぶ見せるのよ」ってことよね(笑)。いい意味でも恥かかないといけないし。動員もそうだけど。お客さんいっぱい入ってもらおうなんて思うこと自体おこがましいわけよ、いきなりのワンマンで。や、そりゃ入って欲しいけど。バンドだったら3人いるからそこまでは気にしないんだけど、俺1人のために、人間にとって大事なものランキングのトップに入る、「時間」「お金」! このツートップ! これを頂くってけっこうなわけよ。しかも昼! 昼のお時間とお金を頂くわけだから、そこで変なプレッシャーを感じそうになったんだけど、でもやっぱりさっきのアナ雪じゃないけど、ありのままやって、凹んだら凹んだで次をまたやればいいし、それが自分らしいかなって。中途半端って言い方は悪いけど、仕込みきれてないところも俺っぽいのかなって。例えばMCとかをさ、俺が流れを完璧にわかってたら、ちょっと、ぽくないでしょ。行き当たりばったり、その場の空気。たまに読み違えるんだけど、それもありとして(笑)。でも、来てもらうお客さんに対しては楽しんでもらえるような内容にしたいね。新しい曲も聞かせたいし、何かしらの音源みたいなものも当日リリースできたらなっていうのは、本当はあるんだけどね。どうかな、あと1ヶ月だからな(笑)。
「らしさ」が大事
——今年、結構ソロで対バンやりましたよね。おとぎ話の有馬さんや、以前カジヒデキさんともSHELTERでもやっていただきました。
渡邊:そうだね。有馬を見てて、自分に足りないところ持ってるなと思った。やっぱり有馬は有馬だったし、「ありま」の間に「の」いれたら「ありのまま」だし(笑)。「ま」が2個になってるけどね(笑)。でもやっぱりそういう、「有馬らしさ」みたいなところは勉強になった。あいつは結構ソロワンマンもやってるからいろいろ聞いたよ。自分で弾き語りを始めてからいろんな人の弾き語りを見ることも増えたけど、やっぱり自分らしさって大事なんだよね。上手いとか下手とかよりも、「らしく」することがいいなって。その、「らしさ」をお客さん求めに来てるじゃん。例えばカジくんが、すっごい落ち着いてたら嫌じゃん?
——嫌ですね…(笑)。
渡邊:ちょっとソワソワ…みたいなさ、あれが見たいんじゃん(笑)。例えばだけど(笑)。やっぱりその人らしさをお客さんも見に来てるし、まあ、成長した上で変わってくのはいいと思うけど、変に無理して作ると、この歳になると本当にバレるのよ。若い頃ってやっぱりまだ成長期でもあるし勢いもあるから、それで乗りきれるしそれでいいと思うんだけど、歳とるとなぜか嘘ついてるのバレちゃう。歳とるにつれて本心を求められてきてるのかもね。で、俺も見せ方とか考えたけど、ありのままがいちばんだね。アナ雪が先にありのまま流行らせたけど、俺はもっとその前から思ってたから(笑)。俺がパイオニアだよ(笑)。
何度も中止にしようと思った
——最近、有馬さん以外にちょっといいなっていう弾き語りは見ましたか?
渡邊:佐々木亮介(a flood of circle)かなぁ。この前やったんだよね。なんだろう…どっちかっていうと二の線なのよ、あの男。でもその「二」を貫いてるからいい。ずっと革ジャン着てる感じとか。別にお風呂も革ジャン着て入ってるわけじゃないと思うけど(笑)、でも貫いてるからあれはありのままなわけじゃん。絶対曲げないし周りに流されないから、ああいいな、と思って見てた。実際、俺は歌にもギターにもほんとは自信なくて、それを打破したいっていうのもあるし。あ、ちょっとここでネガティブトーク入れるけど(笑)、ライブやって、お客さんも悪気ないけど、「MC面白かったっすね〜」「あの時のあのMC最高でした! 」って、だいたい音楽の話されないことが結構多いのよ。本当は、「歌良かったです」とか、「ギター良かったです」とか言ってもらいたいんだけど、まぁ、MCが目立ってるからお客さんも悪気はないと思うけど、やっぱり取り上げられるのがそういう部分だったりして、それ以上に歌もギターも、もしかしたら曲も勝ってないのかな、とか自分の中で思ったり、葛藤もあるのよね。それでMCしたくなかった時もあったけど、でもやっぱり喋るの好きだから、ありのままMCはやる(笑)。今回のワンマンも、自信あるかって言われたら全くないけど、今やらなきゃいつやるんだと。今回この昼の部ずっと前から日取りだけ決めてて、全く詳細決めてなかったじゃん。あれ、中止にしようかなってちょっと思ってたの。これ決まってから何回も中止にしたいな、やっぱやだな、お腹痛いなって(笑)。で、連絡係りをしてくれているカケ(the band apartのマネージャー)に、「俺、自信ないんだけどなぁ〜」とかちょこちょこメール入れたりしてたんだけど、カケから、「やるなら今しかねぇって長渕さんも言ってます」ってメールがきて、決心した(笑)。生きてるわけだからここで失敗してもまだやり直しはきくし、むしろまたこれでいい意味でも恥ずかしい思いをしたとしてもそれはそれで肥やし、こやっし〜になるからね。こやっし! こやっしー!(ふなっしー風に)
しのぶれど どれみれど
——音源は間に合えばって感じですかね。なんとなくの構想などはあるんでしょうか。
渡邊:音源は間に合えばやるし、間に合わなければやらないし(笑)。例えばだけどiPhoneのメモとかで録ってそれを音にしたりとか、そういうスケッチっぽい、ラフな感じでもいいのかなって思ってる。がっちり曲キメていかないで、なんなら全部似てんな〜、あれ1曲目と2曲目繋がってない? くらいのラフさで、狙わないでいくのが面白いかなとは考えてたり。でも曲も何も決めてないし、何もアイディアはありまっせん!(笑)
——ワンマンのタイトルもまた忍さんぽいというか、すごくいいですね。
渡邊:あれいいでしょ、ゴキゲンだろぅ?(笑) かっこつけてもダメだし、ギャグすぎてもダメだから、絶妙でしょ。あと今後音源出したりするときとかに、レーベル名を「どれみれど(doeraymeraydoe)」にしようと思ってたの。だから、ここで伏線じゃないけど張っとく感じ。なにげに俺も考えてんだぜ。ロックンローーーール!(笑) 録れ高どう? オーケー? んじゃ帰って(笑)。
(Rooftop2018年11月号)