AV業界のお金事情
——私自身、AV大好きなんですが、今までDVDの売上次第で女優さんが潤うと思っていたので作品もたくさん買ってきましたが…その現状を知ると、DVDを買う意味とは? と少し思ってしまう部分もありますね。もちろん何度も見たい表情とか止めて観れるんで買っちゃうんですよね(笑)。
野田:キカタン(企画単体)女優さんは…。
小堺:日雇い労働者っすね(笑)。監督もどんなに作品が売れてもなんもないですからね。
——そうなんですか?!
小堺:ソフトオンデマンドさんは「ちょっと売れたら少し上げます」みたいなのはあるんですけど、基本的には監督も1本撮ったらいくらっていう額なんすよ。だから、女優も監督も日雇い労働者なんですよね。結局、給料じゃないし、今の現状単価がどんどん下がってくるので、なんでこんなにAVって出てんだろう? って感じなんすけど、AV監督も撮らないと食えないんすよね。今、AV業界は異常事態が起きてるんすよ。
——新作もどんどん出てくるので、漠然とAV業界ってめちゃくちゃ儲かってるんだなと思ってました!
野田:逆っすね! その経済圏を変えたい! っていうのが「キカタン2.0」! お金の回し方とか自転車操業ではないカタチ。だから、「キカタン2.0」では定額制にして、安定した収入で女優さんにもギャラ払えるようにして。
小堺:あと今は本当にメーカーだけが儲かるシステムなんすよ。要はゼネコンの仕組みに似てて…。
——あ~! ○○建設みたいな?
小堺:そうそう。あの人たちって実際には作らずに下請けの建設会社に依頼するんだけど、建設会社も「うちなら安くできますよ!」って、5年ぐらい前から安さ競争になっちゃったんすよ。僕らより少し上の世代がそうしちゃったんすけど。どんどん制作費を安くしていくと「え! こんなに安く作れんじゃん!」ってなるじゃないっすか。今までのって一体なんだったの? って、そうなると値段って上がることがないんすよね。
——一回でも価格を下げてしまうと、そこから上げるのは至難の業ですね。その低価格でできてしまってるんですもん。
小堺:そう。一回そこで売上もしっかり出ちゃうと、今までの高い価格でやってたことはなんだったの? って。予算は下げて、売上は出てて、利幅もしっかり出ているのに僕らには一切、還元はされないっすからね。僕らだけではなく、女優さんにも還元されない。
——そこですよね。もちろん、制作側にも還元されて欲しい。女優さんがいないと成り立たないはずなのに、その女優さんに還元されないって…。
小堺:売れたら次の作品から女優さんのギャラが上がるか? って聞かれたら、そうじゃないんすよ。女優さんのギャラは作品に出れば出るほどどんどん下がっていくんすよ。一番最初のデビュー作が一番高くて…。
野田:その後、上がることはない! 上がるとしたら…プレイの解禁したときに少し上がるくらいっすね。言葉のあやとして「次の作品では少しのっけるんで!」とかは言いますけど…ないっすね。
小堺:監督もどんなに売れる作品を作っても監督料が上がることはなくて、全く売れてない監督でも新人監督でもベテラン監督でもみんな基本同じ。だから、どんなに頑張っても…。
野田:意味がない。
タイガー小堺という監督
——それにも関わらずAV監督を続けてるって…。ねぇ?(笑)
野田:どういうモチベーションなの? ってところだよね(笑)。
小堺:(笑)。基本的に監督ってちょっと…お金の計算ができない人が多いんですよ。良い意味で「創ること以外に興味がない人」が多いんですよ。結局、値段が下がったのも創る楽しさが一番の監督が多いので。
——あ~、それは創る側の人間としてすごく共感しますね!
小堺:そうなんですよ。僕は制作会社なんで、結構自分の身入りは決まってるんで「これは使っちゃえ!」みたいな部分があって、「安いけどここは50,000円くらいの衣装買おうかな?」とか「朝まで撮るからスタジオ代かかるけど、俺の取り分少し減るくらいならいっか!」みたいな、そういうことをやりがちなんすよ。監督ってみんなAVが好きなんすよ。んで、女優さんもAVが好きなんすよ。
野田:そうそうそう! ある程度で回せてイケたらいいじゃんって!(笑)
小堺:「キカタン2.0」で女優さんにもギャラが入って、来てくれた人は8,000円で面白いことが見られたり、話せたりできたらいいな、とは思ってる。その数がどんどん増えていったら、数字ってやっぱり力なんで、100人になったら入場料をタダにして、それで面白いことをやっていけたらメーカーにも堂々と物を言えるなって。今まで誰も言えてないんすよ。みんな、メーカーの文句は言うんすよ。「なんだよ、安いだろ」とか「めっちゃキツイんだよ」とか言ってるのに、みんな言いなりなんすよ。それって、そこしかないから。今、一興産業みたいな感じで…そこからみんなお金貰ってるから。
一同:(笑)
小堺:そう…(笑)。もう言えないんすよ。そこに干されると、女優さんも制作会社もプロダクションもみんな食えなくなっちゃうんすよ。だから、言えないのに文句を言うってなんか嫌だなって思って。そういう人を見てきたからこそ、僕らはなんか変えないと無理なんすよね。
夢見る時代は終わった! 今のAV業界の真意
小堺:15年くらい前、僕がまだADやってた頃、みんな凄いぞ! ってなったわけですよ、●●●が。他のどのメーカーよりも金出してたんすよ。女優さんにも「どのメーカーよりも金出しますよ! いくらでも言ってください!」って。だから、みんな食いついたんすよ。みんな、あそこなら金くれるぞ! ってなって…先行投資がすごく上手くいったんすよね。AV作ってる人ってみんな目先のお金が好きだから。すぐにお金になるし、昔は取っ払いが普通だったから、監督も撮ったらお金貰える、女優さんも出たらその日に貰える、なんなら出る前に貰えるとか…そんで、今の倍、いや、3倍くらいのお金貰ってたからみんな喜ぶじゃないっすか! 「みんな、●●●にイケー!!!」って!(笑)そこから、少しすると一律で価格下げますんで…って。そうなるともうなんも言えないんすよ。丁度その頃が僕が監督を始めたくらいのときで…ヤラれたわけですよ。
野田:もう、一網打尽。ゴキブリホイホイですよ(笑)。
——搾取が凄いですね…。
小堺:本当に…。僕が監督を始めたときにはどんどん価格は下がって下がって…。
野田:そんで、撮影ルールもどんどん厳しくなっていって…。
小堺:華やかそうに見えているけど、実はもう底の底ってくらいのところまでこの業界はキテるんすよ。今のAV女優さんのギャラ聞いたらビビりますよ?(笑)
——私の中ではずっと、1作品につき最低数百万は貰ってるんだろうな、って。すごくお金持ってて優雅で豪華な生活を送ってるんだろうな~って思ってますね!(笑)
一同:(苦笑)。
小堺:全くだよ! みんな多分、数百万くらいは貰ってるって思ってると思うんだけど…。自分が服脱いで、売られるっていくらなんだろうな、とか思ったときに数百万だったらいいかな? とか思うじゃないっすか。もうね、現実はそんなレベルじゃないからね!