「許さなくていいよ。」
──家族の絆や親を大切にと言われがちな世の中ですが、この本の帯「許さなくていいよ。」は当時の自分にも効くすごい優しいフックだと思います。
菊池:良い家庭ばかりになるのは理想ですが、そうじゃなかったときには、あたり前のように、親から逃げるって選択ができる世の中になってほしいし、逃げてからさらに傷つけられたりしない世の中であってほしいです。もう十分傷ついてきたんだから、もう一切自分を責めたり傷つけたりしてほしくないんです。
──わたしは人の体験談に感情移入しやすいのですが、菊池さんは取材中、相手に気持ちがひっぱられすぎたりはしなかったですか?
菊池:わたしも、ものすごくひっぱられてしまうんだけど、わたしたちはそれでいいと思うんです。話を聞いていて、ずっとつらかったし、どんどん涙もろくなって困っています(笑)。講演会でも人の話しを聞いて泣いて、自分の話しをしながら思い出して泣くっていうのが続いていて。
──そのほうが受け止めてもらった感があって、当事者としては嬉しいような気もします。
菊池:でも話してくれた人、用事があってわたしの話の時はもう帰っちゃってたんですよ(笑)。
──ああ、肝心なときに(笑)。
ウチのフツウは変でした
──9/24には、阿佐ヶ谷ロフトでの出版イベント「サバイバーカフェ 〜ウチのフツウは変でした〜」を開催されますが、印象的なタイトルですよね。
菊池:ウチのフツウは変でしたというのは、実は今回の本のサブテーマなのですが、それぞれの家庭の常識って別の家では変なことってたくさんあるんですよね。うちは、母が新興宗教を信仰していて、休みの日は集会につれていかれるものだと思っていたし、父がアルコール依存だったので、他の男性に対して、「男のくせにお酒も飲まない」「男のくせにタバコも吸わない」って思っちゃって、なにかっこつけていい子ぶっているの? どういう家で育って来たの? って思っちゃって。……自分こそどういう家で育って来たんだよって感じですよね(笑)。
──育ったバックボーンで基準ってずれますからね(笑)。
菊池:そうなんですよね。男性は自分の健康なんて一切、気にしないものだと思っていたので、最近、男性も体重計に乗ったり健康を気にして運動をしたりすることにびっくりしました。だから今でも、無条件に好きになる人は、体重を計らないタイプです。
──そのしがらみすごくわかる気がします。わたしも、すごく嫌いな人でも、父親の影が見えてしまうと見放せなくなってしまいます。
菊池:不思議ですよね、人間の心って。だからわたしは父のことを結局、嫌いじゃないんだろうなって思います。10名にインタビューして印象的だったのは、親の嫌なところを聞くと「うーん」と考え込んで話しを始めるのですが、親のいいところを聞くと、みんなすぐにエピソードが出てくるんです、それはとても切なかったですね…。
──気持ちを捨てきることは難しいですよね。当日はどんなイベントになりそうですか?
菊池:明るく楽しくやるので、こわがらないで来てください(笑)。当日はアンケート用紙を配って、会場に来られない人には事前にネットで、質問や自分のエピソードを募集します。みなさんのエピソードをもとに、香山リカさんを交えてお話できたらいいなと思います。