バラエティに富んだ収録曲
――ではシングルに収録されている曲についてお訊きしたいと思います。まず1曲目の『血が走るのがわかった』。これは、どなた発案の曲なんでしょうか?
西田:ボクですね。もともと、どこでやるって訳でもなく、ガレージバンドでサビくらいまでのデモを作ってたんです。そのデモは空きっ腹っぽくなかったんですけど、「これを空きっ腹っぽくできるか?」と思ってやってみたら、予想通りできましたね。
――歌詞を読んでると、何にも考えないで生きてる人に怒ってる歌かなと思ったんですが。
幸輝:あー、どうかなー。怒りと言うより、「情けないよな、自分は……」ってなってる歌ですね。1番の「◎×つけて泣く泣くやる悪役が似合う でもホントは誰も悪くないから困ってるんでしょ」みたいなところは、みんなちょっと思ってるんじゃないかなと。だって別に悪役を泣く泣くやらんでもいいじゃないですか? でも自分で、「私って、こういう人間やから」みたいなこと言いがちよね、みんな。っていう。
シンディ:この歌詞については結構、メンバー内でやりとりをしたんです。幸輝が持ってくる歌詞はもとから完成されてるので、これは珍しいことなんですけど。
――それは、「これはどういう意味なんやろ?」みたいなやりとりですか?
幸輝:いや、意味はみんな一発で理解してくれたんです。だから「この言葉選びやと鋭さが足りん」とか、「分かるけど、言い過ぎ。この部分いらん」みたいな細かい部分を言われて。それで1回全部書き直しさせられて、まっさらになりました。
シンディ:最初はメッチャ暗い歌詞だったんですよ。音がハッピーな感じじゃないから、元の歌詞やと暗くなりすぎる。
幸輝:もうね、死んでました。死んでるヤツの歌でした。
――2曲目の『グッドラック飢渇』は、どなたキッカケの曲でしょうか?
西田:これもボクですね。1曲目は完成してて、3曲目も半分くらいできてたんですけど、「こんなシリアスなバンドって思われたくない」ってなって、バーっとやる曲を完全に狙って作りました。
シンディ:アホになれる曲やね。
西田:みんなそういう曲を持ってるじゃないですか? 空きっ腹にしかできへん、そういう曲を作ろうと思って、作りました。
――歌詞もバーっと勢いよく書けましたか?
幸輝:いや、これはもともと歌詞を書いてたんです。ECDさん主催のヒップホップイベント“さんピンCAMP”の冒頭で、ECDさんが叫んだ「J-Rapは死んだ オレが殺した」って言葉がスゴい好きで、この曲では「ロックは死んだオレが殺した それでもいいならついてこい」って引用してるんです。ボク、そこだけ聴いてくれたら良いと思ってるんです、この曲は。そこ以外は、うだうだ文句を言ってるだけなんで。
――3曲目の『Raw Like Sxxt! feat.森心言』は、どなたキッカケですか?
シンディ:これはボクですね。
西田:この曲も一転二転三転くらいしたよな。
シンディ:森心言(Alaska Jam / DALLJUB STEP CLUB)が歌ってくれることが、先に決まってたんですけど、曲の候補が2つあったんです。採用しなかった方は、ライブでやってもそんなに盛り上げられへんような……。
幸輝:メロウなヒップホップみたいな感じでしたね。
シンディ:そう、それでツルっと全部できた後に……。
西田:「これじゃあ暗ない?」ってなって。
幸輝:しかも歌詞は、今のままでしたから。
西田:アルバムなら、どん底みたいに暗い曲が入ってても大丈夫なんですけど、シングルだと一気に暗い印象になってしまうので……。
シンディ:割と最近の空きっ腹に酒は、オーソドックスな構成の曲が多かったんですけど、この曲に限ってはそうじゃなくて。ちょっと「ダサいな」と思う要素も入ってるんです。
――「ダサい」とは、どういうことですか?
幸輝:「ダサい」って言い方したらあれやけど、誰もが想像できる展開やパターン、ノリ方をやってるんですよね。これまでのボクら曲の〈ロック〉と〈ヒップホップ〉の配分って、みんなが想像するミクスチャーバンドとは違う配分なんです。Alaska Jamも同じようなことしてて、そこにお互いシンパシーを感じてたんですけど、いざ心言が入った時に、「がっつりミクスチャーっぽい感じの曲に、がっつりヒップホップっぽいラップを乗せたらどうなんねんやろ?」って思って。これまでオリジナリティを出すために、そういうのを避けてきたけど、原点に立ち返るとそういうのは好きなんですよね。結果、結構カッコいいラップも演奏もできたなと思ってますね。
――幸輝さんは、心言さんからリリックが届いた時、どう思われましたか?
幸輝:いや、ボク、レコーディングの本番で初めて聴いたんですよ。
――えっ!
幸輝:ボクは空きっ腹っぽさを残しつつ、自分なりに流行りっぽい感じにしてたんですけど、心言はバチバチに今風のラップで来たんです。あいつの個性もあるっちゃあるんですけどね。カッコ良くて、ちょっと悔しかったですね。
――幸輝さんは、自分のリリックを教えてたんですか?
幸輝:ボクは完全に聴かせてて。だから「縫ってきたな!」と思いました。
いのまた:もう言うてもええと思うけど、心言に会った時にそれを直接訊いたら、「幸輝があの感じで来たから、オレは違う感じでやろうと思って、ああなった」って言ってました。
――そもそもどうして、森心言さんをゲストに迎えたんですか?
幸輝:心言と一緒にやりたかったんですよ。単純にラップがメチャメチャ上手くて、リスペクトしてたっていうのもあるし、ちゃんとボクらのことを理解してくれてるので。
シンディ:森心言が大阪に来た時に、ボクらがバックバンドやったりとか、普段からライブでコラボレーションしてたんです。だからこれは、新しいこともしてるし、今までやってきたものの集約でもある1曲ですね。
ツアーの打ち上げは、ロフトプラスワンウエストで!
――『酔.ep』のリリースツアーについて、今回のツアーはどんなものになりそうですか?
幸輝:そんなにボクらとファンが被ってないところを狙って、対バンをブッキングしました。
シンディ:それは自分たちでブッキングしたからできたことですね。「自分たちとこのバンドがやったら、どんな感じになるんかな?」っていうのが大きいです。だから本当に挑戦的な意味合いが強いツアーになってます。
幸輝:空きっ腹のことをよく知ってる子は、「えっ?」ってなると思うんですけど、楽しめると思いますよ。
――楽しみです。そのツアーの打ち上げが、5月10日(木)にロフトプラスワンウエストで開催されますね。どんな内容になりそうですか?
シンディ:主にツアーの思い出話をしようかなと。
西田:ホンマに、お客さんを交えた打ち上げみたいな感じにしたいですね。
幸輝:トークライブって、アホみたいにずっと喋ってるだけのとこもあるんですけど、そういう部分を見てもらった上で、もう1回音を聴いてもらったり、ライブを観てもらうと、感じ方が深まるんじゃないかなって気がしてて。
シンディ:「酔.ep」のリリースツアーが、打ち上げで終われたら面白いよね。これもツアーの一環です。
幸輝: レーベル立ち上げたんも、シングル出すんも、ツアーに出るんも、なにもかも新しい空きっ腹の酒の第一歩なんです。ボクらにとって、その場にいてくれる人たちは心強いし、それを見られるのはみんなにとっても貴重な体験になれると思うんで、一緒に良い時間を共有できたらなと思ってます。