自身の活動を"お祀り"と称し、イラストやインスタレーション、音楽活動など多彩な表現を続けるよいまつり。ロフトプラスワンウエストとも縁深く、多い時には月に3回も出演していたのだとか。
そんな彼女が、次に当店で出演するイベントは、自身が所属する劇団の新作公演。正直驚きました。まさか演劇までやっているとは......。
活動が多岐に渡るため、どこか掴み所のない彼女。この際なので、今回の公演にかこつけインタビューを敢行。まつりさん、あなたっていったい何者なんですか?[interview:平松 克規(Loft PlusOne West)]
はたして何者? よいまつり
──本日はよろしくお願いします。まず単刀直入にお訊きしたいのですが、よいまつりさんって何者なんですか?
よいまつり(以下:まつり):好きなことをやっているクリエイターとか、アーティストの一種だと思います。自分では一応、「歩くトマソン」って定義してます。
──「歩くトマソン」?
まつり:意味のないところにある階段とか、壁についてるどこにも繋がってないドアとかあるじゃないですか? そんな無用な長物を芸術と捉える見方を、「超芸術トマソン」って言うんですけど、私も何かを作るときに、「誰かのために」とか、「これをやると自分にとって良いのでは?」って考えてやる訳じゃなくて、何も考えずに、ただやりたいことをやってるし、常にやりたいことを探してる状態なんです。そういう立ち位置が、トマソンっぽいなと思って。
──具体的には、どんな活動をされてるんですか?
まつり:今、私の名前を知っていただくキッカケになってるのは音楽なんですけど、それより前には“お祀り”っていう個展みたいなものをしてました。私、空間全体とか、人全部みたいなトータルコーディネートがめっちゃ好きなんです。だから私がアトリエにしてる風呂なしアパートを丸ごと装飾して、そこにいる自分を作品ってことにしたんです(初お祀り『据え膳』2015年10月開催)。それが、よいまつりとして始めた最初の活動ですね。
──よいまつりとして活動する以前に、創作活動はしてたんですか?
まつり:一応、絵は描いてたんですけど、どこかに展示するとか、誰かに知ってもらおうとか、そういう目的は持ってなかったですね。ほんとに趣味の一環というか、でもそれにしては多い量を描いてた気がします。ほかにも、小説や漫画を作ってる時期もありました。
──影響を受けたカルチャーはありますか?
まつり:すごい原点に返ると、嘉門達夫ですね。
──えっ、意外。
まつり:幼少期から、車で旅行する時はずっと嘉門達夫がかかってたんです。嘉門達夫って、よくある話を歌にするネタがあるじゃないですか? それに影響されて、弟と喋るときは、ふざけて会話を全部ミュージカル調にしたりしてましたね。そこでエンターテイメントを学んだ感じはします。でもカルチャーとかよりも、ものに心を打たれることが多いですね。
──もの?
まつり:古い町へ行って、錆びとかを見ると、そういう風になった歴史を感じて、エネルギーをドーン! って感じるんです。そういう古いものとか、よく分かんないけど力のあるものに惹かれるんです。だから小学生の頃から、ボロい民宿とかも好きだったんです。
──早熟ですね。
まつり:お父さんが、「良いホテルも好きだしボロい宿も好き」みたいな人だったんですよ。ボロい宿に泊まると、お父さんが「こういう宿だと、翌朝、階段ですれ違うお客さんが『おはようございます』って言ってくれるのが良いだろ?」とか、「キンキンに冷たい水しか出ない水道に、『なんでお湯が出ねえんだよ!』って思うのも良いだろ?」って言うんです。それをちっさい頃から押し付けられてると、すごい楽しいものだって認識するんです。実際に楽しかったんですけど。そこから私の物事への寛容性が身についた気がします。私の親戚は本来厳しい家柄なんですけど、古いものも悪いものも良いとか、そういう影響を強く受けてしまったので、全然業に従わずこんな「私、変でも良い!」って風になってしまったんです。
巡り合わせから始まった音楽活動
──今は音楽活動もされてますよね?
まつり:今の形式でライブをやるようになったのは、ロフトプラスワンウエストの『別世界BAR周年スペシャルvol.1 since 2015』(2016年2月開催)が最初ですね。
──なんでそこでライブをすることになったんですか?
まつり:キッカケは、そのイベントの主催者の1人だった金原みわさんなんです。最初のお祀りの前日のキワキワまで装飾の準備をしてた時、「当日は用事で行けないから……」って手伝いに来てくれたんですよ。でも私がいっぱいいっぱいで、終始無言になっちゃって……。それも悪いから、itunesのシャッフルで曲をかけたら、私が趣味で作った『チャーシューネギまみれ』っていう弾き語りの録音が流れたんです。
──あっ、元から曲は作ってたんですね。
まつり:はい。今やってる音楽とは全然違って、普通にお家にあるアコースティックギターで、片手分くらいしかコードを知らないんですけどそれで作れる曲をひたすら作ってました。それを聴いたみわさんがめちゃくちゃ褒めてくれて。私も調子に乗って、他に作った曲を聴かせてたら、「イベントに出てくれない?」って言って下さって。サポートギターをつけて、アコースティックライブをやったことが2回あったので、いけるやろと受けたんです。
──えっ、本番ではピコピコの電子音楽をされてましたよね?
まつり:アコースティックの形式でやろうと思ってたんですけど、私がサポートギターの人に口頭でお願いしたせいで、日にちを1日ずれて認識されてたんです。それが分かったのが本番の1週間前で……。「ギター録音しようか?」って言ってくれたんですけど、ギターの音源を流してカラオケするのは、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですか? そもそも私のミスだから、もう「MacのGarageBandでピコピコした音楽を作るしかない!」と思って、引きこもって作りました。それが『カルアミルク』って曲だったんです。
──実際のライブはどうだったんですか?
まつり:みわさんだけじゃなくて、別世界BAR周辺の人が、「めちゃくちゃ良かった!」って言ってくれました。でも、みわさんはいきなりピコピコした曲を持ってきたから、「全然違ってビックリした!」みたいな反応をしてました(笑)。
──それで自分の中で「これをやろう!」と。
まつり:褒められて嬉しくなったから、もうちょっとやってみようっていう感じですね。そのあとは、自分が好きな嘉門達夫や吉田拓郎とか、今流行ってるアイドルとかの曲を分析して、音楽を作り始めました。でもどんだけ頑張って作っても、最初に作った『カルアミルク』が1番人気なんですよね(笑)。
──難しいものですね(笑)。最近、新曲は作られてるんですか?
まつり:最近は、全然作れてないですね。私、暇がないと曲を作れないんですよ。悩んじゃう時って、時間があり余ってる時じゃないですか?
──そうですね。
まつり:やることがないから、暗いことばっかり考えてドンドン沈んだりする。でもそういう哲学する時間が多くなればなるほど、新しいものが生まれる。だからニートだった時期は本当に、ものが生まれてたんです。そういううだうだする時間がないことはとてもハッピーなことなんですけど、発想が熟れないんですよね。間に合わせのものはできるんですけど、そういうものをやる時は全然胸を張れないので。そろそろちゃんとやりたいなと思ってます。
劇団の新作公演をロフトプラスワンウエストで開催!
──3月3日(土)と4日(日)には、まつりさんが所属する劇団ウンウンウニウムの新作公演が、ロフトプラスワンウエストで開催されますね。
まつり:はい。私はそこで、テーマソングのリリックを担当しています。
──お芝居には出られないんですか?
まつり:私とそっくりな「あとのまつり」という人物が出演しています。
──あっ、なるほど(笑)。劇団は普段どのような芝居をしてるんですか?
まつり:うちの劇団のお芝居は、タイムパラドックスやパラレルワールドとか、回想してあの時に裏でこういうことが起きてたとか、何かが食い違って本当はこういう風になってたみたいなパズル的な要素が多いですね。
──今回の公演『虚構演劇』は、どんな内容なんでしょうか?
まつり:お芝居をしてる最中の楽屋って、常にバタバタじゃないですか? 早着替えとか、突如起こったハプニングにみんながどういう風に対応していくのかとか、その楽屋と舞台上の様子を全部見せるみたいなお芝居ですね。今回はわりとコメディ要素の多い内容です。
──楽しみです。それでは、公演に来ようか迷っている読者の皆様に、一言メッセージをお願いします。
まつり:お芝居も音楽ライブも、ひとつひとつ全部出会いだと思ってるので、ぜひ来て欲しいですね。私と出会って欲しいです!