大阪住吉区で育まれたゴリゴリの関西弁と、独特の言葉選びで、観る者を圧倒するAマッソのコントと漫才。『M-1』や『キングオブコント』など、賞レースではいい所までも行くも、今イチ"跳ね切らない"(と思われる)のはナゼか? Aマッソのお2人に、直接話を訊いてみた。【interview:石崎典夫(LOFT9 Shibuya)】
全然、丸くなってないじゃないですか
——いきなりでアレですけど、僕はLOFT9で芸人さんがただしゃべるだけのトークライブを、あまり増やしたくなかったんですよ。
加納:え、なんでですか?
——フォーマットが決まってるじゃないですか、ファンは喜ぶかもしれないですけど、それ以上の広がりはないというか……。そんな中で僕が唯一、芸人さんでイベントをやって欲しいと思ったのがAマッソなんですよ。
村上:えーー! そうなんですね!
——Aマッソを見てると、今までのお笑いの既成概念にとらわれない、何か今まで見たことないようなイベントをやってくれそうな気がして。それでこちらからオファーして、昨年8月に『クロストークロワイヤル』というイベントをやってもらったんですよね。
加納:はいはい、覚えてます。
——12人の芸人さんが、あらゆる人数と組み合わせの中でトークをして、誰が一番面白いかを競うという、なかなか実験的なイベントでしたけど、加納さんの緊張感あるMCも良かったですし、最後の村上さんも良かったですね。
村上:あー、最後にサンシャイン池崎さんと、虹の黄昏・野沢さんと、私でトークして、ただただ奇声を上げ続ける3分間のことですね。最下位でしたけど(笑)。
——それで、えらいポテンシャルを感じて、今でも定期的に出てもらっているわけですけど。でも、今年3月に行った単独ライブ(『買ったらお縄!ホンチャン・ヤルデ株』@ユーロ・ライブ)はチケット即完売で、DVDも出て、テレビにも呼ばれるようになって、加納さんもちょっと丸くなったかなと思って、最近のインタビュー読んだら、全然丸くなってないじゃないですか(笑)。
加納:全然、満足度は上がってないので、変わってないですね。
——どの辺りに、満足度が上がっていない原因があると思います?
加納:別にライブに来る客層も上がってないし、むしろ、しょーもないやつも来るようになったなとか(笑)。
——理想的な客層じゃないと。
加納:んー、確実にここで笑って欲しいという球を投げてるけど、取ってもらえるとは限らんなと。どこ捕っとるねんと思う時もあるんですけど、まぁその辺はずっと思うんでしょうけどね。
——加納さんは、いつからなんですか、そんなに尖っているのは?(笑)
加納:いや、本心なんです、尖りとかじゃなくて。まぁ10年やってますからね、10年やってまだこのポジションかという情けなさはあるんですけど……。
——理想としては、もっとテレビに出てとか。
加納:そうですね、冠番組やりたいし、コント番組やりたいし、っていうのはあります。
——どの辺で足りない所があるんだと思いますか?
加納:んー、なんか読む力かな、場とか、時代とか(笑)。
——時代を(笑)。
加納:なんか、あんま今ココって所で、乗れてなかったりしてますね……。なんで売れてないって言ったらいいかね?
村上:今じゃない、もっと先なのかも。
——もっと先?(笑) 何年後かですか。
村上:いや、今やな(笑)。なんでですかね?
——僕が最初にAマッソのことを知ったのは、プラスワン時代に担当していた大森靖子さんのイベントで、お客さんからのアンケートで「今後、呼んで欲しいゲストは?」の所に、何人かがAマッソって書いてたんですよ。あれが2年ぐらい前だったんで、新しいモノ好きな人のアンテナには届いてたんでしょうね。
加納:最近ほんまそうですよ、ミュージシャンの方と接点が出来るようになって、CDとかもらうんですよ、トリプルファイヤーとか。
——そういう異ジャンルの方と、積極的に絡んでいくのも、ひとつのやり方かもですね。
Aマッソには、何が足りないのか
——『M-1』も『キングオブコント』も準決勝まで残って、あと一歩の所まで来てると思うんですけど。
加納:そうでしょ、1ミリも売れてないですよ(笑)。
村上:なぜでしょうかね……。
加納:よくスタッフさんにも言われますよ。キャスティング会議で最後まで名前は残るんだけど、キャラとか他の演者との並びを考えた時に弾かれるって。ハメにくいんでしょうね、ひな壇とかに。
——全然違うかもしれないですけど、バナナマンさんもそういう時期があったらしくて、その時は売れてる放送作家とか、フリーのディレクターとかを呼んで、「バナナマンを売るためにはどうすればいいか会議」みたいなのをしていたそうですよ。Aマッソにも、そういうチームが出来るといいですよね。
加納:なるほど、お笑いに関しては割とM的な所があるので、これやってみろよと言われたら、やりたくなるというか、ワクワクするようなことをやりたいんですけどね。ネタライブとかほんまに飽きたんで(笑)。売れてもネタやりたいとか、そんなネタ職人でもないですし。
——そうなんでね、意外です。
加納:ライブは目新しさがないと楽しくないから、私は企画ライブの方がすきですね。ただそのライブでも、“やらされてる感”を出してる演者がおったら、ほんま進まんなと。キャスティングされて来てるのはわかるけど、その時点で呼ばれた感を出すなと思うんですよ。
——徐々に加納節が出てきましたね(笑)。
加納:これどうやったらいいの? とかスタッフに聞いてるのを見ると、聞くぐらいやったらお前がなんか起こせよと思うし、ロフト系のライブだと演者のやる気次第で、成功か不成功かが掛かってくるので特に思いますね。
——自分たちネタに関しては、客観的に見てどう思われますか? 前にインタビューで「演技力が足りない」という話もしてましたけど。
加納:ずっと足りてないですね。
村上:ウチはこうやってると思って動画を見たら、全然違うやり方やってる時があって。そこを思うようにできたら、ぶちぬけますね(笑)。
——「ネタがキャッチーではないから」という話もありましたけど。
加納:できればもっとわかりやすくしたいと思うんですけど、それができないということに気づいた所もありますね。世間に寄せる、寄せないというか、私たちがあまり世間のことを分かっていなかったというか……。
——世間を分かっていない?
加納:今回『キングオブコント』の準決勝でやった2本のコントも、元々番組で作れと言われたコントで、ほんまに肩の力入れんと作ったやつで、名作でも全くない。けど、ウチらがやりたいコントよりもウケるから、ウチらが世間のこと分かってへんなという感じですけどね。
——前に『冗談手帖』(BSフジにて放送中)で披露したリズムネタは、司会の鈴木おさむさんにもハマってて、すごく新鮮に映りましたけどね。
加納:あれね、リズムネタやと思ってたんですけど、リズムネタではないんですよ。
村上:違うって言われた時に、何がリズムネタかわからなくなりましたね(笑)。
——それもいいじゃないですか、見よう見まねでやってみたら、何か違うものが生まれちゃってる感じが。それで何か違うカテゴリーのものが生まれたら面白いですけどね。
加納:そうですね、ただ、逃げてると思われたくはないんですけどね……。