TVアニメ・ゲーム・舞台・コミックス...といろいろな形・ルートで楽しむことができる『Dance with Devils』。待望の劇場版が今年の秋に公開。多くのファンに待ち望まれた今回の劇場化はどのようにして実現し、制作されたのか。アニメーション版の監督を務める吉村愛さんにその一端と、ファンへの熱い思いを語っていただきました。[interview:柏木 聡(Asagaya/Loft A)]
ファンの方が育ててくれているんだと思います
——『Dance with Devils-Fortuna-(以下、ダンデビ)』の劇場化発表が今年の1/29でした。その情報を見たときは、秋だからまだ先だなと思っていたんですけど、気が付くと来月から…あっという間ですね。
吉村:そうですね(笑)。ファンの皆さんがずっと応援してくださったおかげでここまで来れているので、とてもありがたいです。
——劇場化のお話はいつごろから出ていたんですか。
吉村:最初にお話が出たのは春ごろだったと思います。本格的に動き出したのは夏ごろです。
——年明けに解禁されたわけですけど、その際のファンの反応は見られたのですか。
吉村:解禁が「ダブル・カーテンコール」というイベントの際だったんですけど、私は行けなかったのでイベントに行っていた偉い人から「発表になったよ、劇場が揺れたぜ」みたいなLINEをもらって「わぁ、嬉しいです」というやり取りをしたのを覚えています。わざわざLINEをもらうことはあまりないので、相当すごかったんだなと感じました。
——ファンにとっては念願の劇場化ですから。
吉村:本当に、ダンデビのファンはすごく熱い方が多いので。TVからずっと全てを応援してくださっている方も多いのだと思います。乙女ゲーム原作の作品は媒体が変わると「こうじゃない」という反応が出ることも多いと聞いているのですが、ダンデビはゲーム・アニメ・ミュージカル・コミックスで少しずつ違う性格さえも愛してくれて、ずっと応援してくれているので、本当に熱くてありがたいなと。ファンの方が育ててくださっているんだと思います。
——それだけ熱いファンが多いとプレッシャーになりそうですね。
吉村:いえ、そこまでプレッシャーを感じることはなかったです。楽しい遊び場に帰ってきたという感じです。ほかのスタッフのみんなもそういう気持ちでいてくれています。ただ、音楽の藤田淳平さんだけは、ゲームもミュージカルも全て楽曲を手がけられてるので、プレッシャーになっていたかもしれないです(笑)。
——ダンデビは音楽が重要な要素ですから媒体が変わってもブレないという安心感はありますけど、担当される側からすると大変ですね(笑)。
吉村:そうですね、音楽がメインの1つですから。
——私は、実はミュージカルが得意ではなかったんです。でも、ダンデビはそういうことが全然なくてすんなりと楽しめました。
吉村:ありがとうございます。それは楽曲が昔からのミュージカルと、2.5次元ミュージカルと言われるものの間をとっているのもあると思います。歌詞も単純に聞いてなるほどとなるより、少しアニメならではの崩した形をとっているので、聴きやすくなっているんじゃないかなと思います。
——私は30代男性なので、女性向け作品という面でも作品のメインターゲットとは違うとは思うんですけど、楽しめる作品でした。
吉村:ありがとうございます。作っている人も30代・40代が多くて、「ココは大仁田厚の電流爆破デスマッチだぜ」みたいな話をしながら作っているのでそれが良かったんでしょうか(笑)。
TVを元にして寄り添う形
——いいですね(笑)。TVシリーズも含めてダンデビをミュージカルにしようというのは吉村さんの発案だそうですが。
吉村:そうです。ミュージカルが好きで、いつかアニメでやりたいなと思っていたんです。一般的にミュージカルアニメと言えばディズニーなので、TVでは難しいかなと思っていました。
——確かに映画のイメージがありますね。
吉村:ミュージカルというと、言葉1つ1つにダンスを入れないといけないと思ってしまうんですけど。アニメだと踊らなくたって気持ちを歌にのせればミュージカルなるのでは…ということに気づいて、あとは映像表現をどう見せるかというところに気をつけてアニメは制作しました。
——確かにアニメだからこそ無理にダンスをしなくても歌がハマるという面はありますね。今回は劇場化ですから、ある意味で原点に戻ってきたという面もありますが。
吉村:そうですね。でも劇場化だからとあえて踊ったりということをしているわけではないので、TVと変わらないスタイルを取りつつゴージャスになるように作っています。
——そうなんですね。
吉村:今回はTVシリーズを元にして寄り添う形で新規のルートを、という作り方なので、劇場だからといって大きく変えていることはありません。
——今までのダンデビの延長として楽しめる形になっているんですね。
吉村:そうです。ただ、時間はどうしても劇場の方が短いので、スピード感・ライブ感はあると思います。さらにミュージカルアニメということで平均すると約5分に1回は歌っている計算になるので、私の中では “live musical「Dance with Devils-Fortuna-」”という感じです(笑)。
違う道が辿れるくらいの余白を残しています
——そうなんですね(笑)。ダンデビはTVアニメ・ゲーム・舞台・コミックスとすべてルートが違いますし、さきほど新規ルートとおっしゃられてましたが、やはりTVシリーズとも違うんですか。
吉村:メインキャッチ「選べる道が一つじゃなくても、今この道を選びたい」からも分かる通り、違うルートになります。そこは実際に見て確認していただければと。
——やっぱりそうなんですね、楽しみにしてます。
吉村:同じキャラクターのルートでもエンディングが違うものも存在するので、誰の何ルートなのかも含めて楽しみにしていてください。劇場では今回の(立華)リツカの道を応援してくださったら嬉しいです。劇場が終わったあとも、違う道が辿れるくらいの余白を残しています。
——想像が膨らみますね。イベントや楽曲という面でも今も続いている作品ですが、アニメのアフレコということではキャストの皆さんも久々に集合ですが、演技はいかがですか。
吉村:リツカ役の茜屋日海夏(ひみか)さんには、「ホームに帰ってきた感じだ」とおっしゃっていただけました。ダンデビの現場はどこのセクションもアットホームな雰囲気なので、帰ってきたなという思いをキャストのみなさんも感じていただけたようです。キャラクターの作り込みで言えば、アニメが終わったあとに色々と派生したドラマCDや楽曲などはみんなどんどんデレデレになっていくんですけど、もう一度劇場で最初からやりますよとなった時、演じるキャラクターの好きオーラがすごく出ているところがあったので、そこはもう一度アクマに戻ってくださいという注意はさせていただくことはありました(笑)。
——それは大変ですね(笑)。TVシリーズと違う点で言うと、今回は豊永利行さんが演じるマリウスが入ってきていますが。
吉村:そうですね。裏設定も作り込んでいるキャラクターなので、もしかするとデザインを見て気づかれているファンの方もいるかもしれないですけど、そこは劇場で楽しんでいただければと思っています。
——楽しみですね。道化師の姿をしているので、狂言回し的なキャラクターなのかなと予想しています。
吉村:ネタバレになってしまうので詳しくは言えないですけど、かなりシリアスな設定です。
——時間も短くなる中でプラスしたというのもすごいなと思いました。
吉村:新しいキャラクターを出したいという話はしていたんです。せっかく出すなら、今後も様々な展開で活躍して欲しいと考えているので練りこんでいます。そういう親目線ではマリウスが今後どう活躍するのか楽しみでもあります。
ご出演お待ちしておりますという感じです
——そうやってキャラクターが生まれてくるのはいいですね。
吉村:新キャラということではミュージカルからの逆輸入もあるので、そこもファンの方には楽しんでいただきたいと思っています。
——ご褒美がいっぱいですね。
吉村:この劇場版はファンの方が応援し続けてくれたおかげで実現したので、ファンの方に向けて作っているという面も大きいです。大事にしてくれた方に向けてのメッセージというイメージですね。
——楽しみですね。キャラクター以外にもミュージカルからインスパイアされたものはあるんですか。
吉村:ファンの皆さんにアンサンブルとして参加してもらえるようにしています。観劇というよりは出演者の一人として楽しんでもらえるようなイメージです。ミュージカルはアンサンブルの方まで含めて初めて成り立っていたと思うんですけど、劇場でのその部分は皆さんですよという形です。
——それも舞台や今の劇場作品の楽しみ方の1つでもありますね。前売りチケットのビジュアルで(楚神)ウリエがペンライトを持っているので、応援上映的なものがあるんだろうな、しないわけないよなって思っています。
吉村:私的にはご出演お待ちしておりますという感じです。観覧している皆さんが出演しているようなイメージのカットも作っています。
——そこまで盛りだくさんですと疲れてしまいそうですね。いや楽しみですけど(笑)。
吉村:ダイエットにもなると思います(笑)。みんなに楽しんでもらうために作りました。ミュージカルが好きな方は出演したい方もいるだろうなと考えたのもあります。
——そのための楽曲も作っているということですよね。
吉村:藤田さんには「こんなのはなかなかない」と言われました(笑)。難しいものではなく、参加してもらいやすい形にしているので、こういうことが苦手でない方は作品に参加していただきたいです。
——いいですね。また劇場が揺れるかもしれないですね。
吉村:もちろん通常の上映もありますから、苦手な方はこちらで楽しんでいただければと思います。私もまだまだ遊び足りないです。キャラクターたちの違う顔を描いていきたいとも思っています。次の夢に繋がるので、いろんな形で皆さんに楽しんでいただければ嬉しいです。