作詞と作曲方法
——景夕さんとNIKAさんは作詞をされてますが、どういう感じで作詞をされてますか?
NIKA:僕、それ聞きたいです。
景夕:手当たり次第(笑)。資料や小説や漫画やアニメだったり、もう手当たり次第に何でも観て、まず自分に引っかかるものを探して、そこから自分のテイストだとどういう変化を付けられるかを頭の中で探したり。あとはメロディの音符の個数と歌詞の個数を考えつつ、どういう言葉が当てはまるかとか。メロディ・ラインで、「この音からこの音に上がって繋がるような感じだから、これだったら、『わ』とか『ん』の音だったら、もう1音入れられて繋がって聴こえるから、この言葉にしよう」とか。あとは、「サビでこういうことを言いたいから、AメロやBメロでそこまでの物語をどういう風に作っていこうか、そのオチをどうしようか」っていうのを、一番最初に考えて。その後、どうしてもこの言葉を入れたいっていうのが出てきたら、「サビでこれを言ってるけど、これも核となる言葉だよな」って時に、「どこにその言葉を持っていこう、でもここに入れたいけども、メロディ的に数が合わない」とか、いろいろ作って消して、作って消しての本当に手当たり次第でやってますね、俺は。
NIKA:僕も、景夕さんがやられてるのの縮小版みたいな感じです。大体の流れは同じなんです。まずテーマを最初に決めるんですけど、そこが一番時間が掛かって。テーマが決まっちゃえば結構早いんですけど。テーマを決めてそれに使える言葉というか、言葉が意味する内容っていうのを絞って、それを僕も景夕さんと同じように、テレビだったり漫画だったりっていうのからちょっと摘んで探してみて、いいものがあればそれを使って自分なりに噛み砕いてって感じで。ただ前のバンドでもほとんど作詞をしてきていなくて、ミックスになってから書かせてもらうようになった感じなので、作詞経験としてはすごく浅いんです。他の人が書かれてる歌詞とかも、「この人はこういう流れで物語を組んでいるんだ」っていうのとかをすごい参考にさせてもらってっていう感じなので、まだ全然初心者です。
景夕:16年やってますけど、多分その感覚って何年やってもなくならないと思うんですよ。新しいのが出るってなった時に、「あの憂鬱な時間がまた来るんだ」ってなって(笑)。
一同:(笑)
景夕:変なものはやっぱり出したくないし、自分の中で納得したものを出したいし。拘らないんだったら、多分適当に書けばいいんでしょうけど、やっぱりそこは自分の名前が載って、うちらでいうと『Kra』っていうものの押し出すものになるから、適当には考えたくなくて。
keiji:やっぱり生む苦しみというか、作詞ってしんどい作業なんですか?
景夕:めっちゃしんどいっすね。
keiji:嫌いなんですか?
景夕:大嫌いですね(笑)。
一同:(笑)
景夕:作る時は嫌いなんですけど、出来上がった時は大好きなんですよ。
NIKA:分かります! 出来上がった時は、「今まで書いた中で、一番いいのが書けたわ」って毎回思います。
keiji:それはでも、いいことっすよね。
景夕:そうですね。アホみたいにずっと同じ曲を永遠にループするんですよ。そこで、この曲ってどういう性格なんだろうっていうのを探して。例えばメロディはきれいなんだけど、後ろは結構動いてるとかだと、表面上はすごく優しさがありつつも、言葉の中ではちょっとした激しさが垣間見えるっていうのだと、その言葉を選ぶのにも読んだ時にそれが分かり易い言葉を入れたいな、とか。
——すごい考えてるんですね。
景夕:考えてるよ!
——そうですよね(笑)。では結良さんとkeijiさんに、作曲方法をお聞きしたいです。
keiji:結良さんは、普段から曲を作るんですか? それとも選曲会とかがあったらやるみたいな感じなんですか?
結良:最近は、普段から作ってますね。
景夕:毎月あるんですよ、選曲会が!
NIKA&keiji:へー!
結良:去年の年末にちょっといろいろと決めごとをしたんですよ。これは僕がメンバーにノルマとして課したんですけど、「やりたいことがあるんだったら、曲で表現しよう。ミュージシャンなんだから」って。毎月選曲会をして、1曲でもいいから曲を出し合って、いい曲があればそれをプリプロで仕上げて、マネージャーにいろんなところに営業をかけてもらおうって。
keiji:じゃあ、リリースとかは関係なく?
結良:関係なくです。で、その中で「この曲をライブでやりたいね」ってなったら、「リリースしようよ」ってなるだろうし。それで今年の1月から毎月1回選曲会をするようになりましたね。
景夕:まあ、辛いっすね。
——選曲会だから歌詞はないんですよね?
景夕:歌詞はないんですけど、俺も曲を書いていかなきゃいけないんで。
NIKA:全員なんですね!
結良:全員です。なので、普段から家にいる時は作るようにはしてるんですけど。作曲方法は、僕はイントロ、Aメロ、Bメロ、サビっていう風に、頭から作らないと作れないんですよ。もしサビが出来ちゃったら、サビ始まりの曲なんですよ。まずはどういう曲を作るのか考えるんですけど、僕はノリがいい曲を作りたくて。ライブで使える曲がCDに入ってないと、CDの曲をやらなくなっちゃうんで。うちは結成10年前後くらいの時のCDが一番そうで、ライブでやらないんですよ。だからフル・アルバムですら、ライブでやる曲が1曲あるかなってくらいで、聴かせる曲がメインになった時が一時期ありまして。でもそうするとCDを出した時のインストアのための曲になっちゃうから。結局ライブの後半で盛り上げるゾーンが大体一緒みたいになって、それがちょっと嫌になって。「これってカップリングの曲だよね」みたいな曲ばっかりを作りたくなっちゃって。まずはイントロのドラムのテンポやノリとかを決めてから、そこにギターで曲を作ります。ベースでは作らないんですよ。
keiji:ベースのアレンジとかは、最終段階で?
結良:最終です。ルートしか入れないですね。で、ギターを入れた後に、ギターの上ものの方の音ですね。カッティングでジャカジャカ動いたり、リードっぽいものを弾いて曲の雰囲気を作ってから、Aメロに入って。Aメロもコード進行とドラムのパターンを決めてから、それに合わせてメロディを頭の中で歌いながらそれをギターで弾いて、音を確認してっていう風にして。最近ようやく景夕の音域が分かるようになってきたので、その中でなるべくメロディを作るようにして。
景夕:Aメロの中で、大体一回し、二回しみたいのがあるじゃないですか。で、一回し目と二回し目のメロディのお尻の辺りが若干違ったりとかして、覚えるのが難しいんですよ。「同じでいいじゃーん!」って。
一同:(笑)
keiji:それはあえて?
結良:同じだとつまんないかなって(笑)。
景夕:って思ってるんだろうなと思って(笑)。って思いつつも、こうしたいっていうのなのかなって思って、俺もそれ通りしっかりと覚えて歌うんですけど、まあ覚えにくいんですよ!
一同:(笑)
NIKA:そこがやっぱり、歌い手と作る側の違いですよね(笑)。
結良:2回目のAメロもまた違うメロディなんですよ(笑)。
景夕:もうね、本当にね、「こいつ、殺してやろうかな」って(笑)。
一同:(笑)
結良:メロディ・ラインをコピペしてて、「これでいいのかな?」って思っちゃうんですよね(笑)。
景夕:いいんだよ、それで!(笑) 何かあったら言うから。変えてって。
結良:(笑)最近はそういう流れで作ってますね。
——ではkeijiさんは?
keiji:曲によって作り方がすごいバラバラで。今は『トイドールの逆襲』っていうテーマでやってるんですけど、今回はそのテーマが決まってたから、自分がイメージするおもちゃってこういう感じかなとか、ちょっとおどおどろしいおもちゃの話の雰囲気が出るような曲を、例えばフレーズだったりとかから広げることもあるし。サビのメロディだけ出てきたら、そっから広げたりだとか、曲とか時期によって、作り方がバラバラで。だからここ数年、自分の趣味の曲を作ったことがないですね。こういう曲が今いるんじゃないかとか、ライブの中盤のオチ曲がマンネリ化してるなって思ったら使えそうな曲を書いたりだとかで、こういう音楽が好きで、こういう曲を作りますっていうのが、ここ数年ないかな。
景夕:逆にどういう曲とか音楽が好きなんですか?
keiji:元々ほんまに好きなのは、バンドサウンドじゃなくて、打ち込みバリバリな感じの曲の方ですね。
NIKA:意外だったのが、普通にでんぱ組.incとか聴くんですよ。そういうのを全然聴くイメージがなくて。移動中に イヤホンから漏れてきた音がでんぱ組.incで、すごく意外だったんですよ!
keiji:アイドル好きとかではないんですけど、音楽として格好いいなって。
景夕:でんぱ組.incの音楽は格好いいですよね。
keiji:テンポ感がある打ち込みの曲が好きなんですよ。元々はaccessが大好きで、打ち込みの音楽をやりたいって思ってやり始めた人だから。もちろんバンドも好きですけど、根本は打ち込みバリバリの曲が好きですね。
景夕:結良さん、access好きだったよね。
keiji:マジっすか!
結良:accessも好きだったね。バンドの中ではマニアックな方で、当時はPAMELAHとかPSY・Sとか。
keiji:いや、分からないっすね(笑)。
景夕:結良さんは、その世代の音楽をやってた人たちがめっちゃ好きで、accessは多分みんながよく知ってる人たちだからよく話に出てきたんだと思うんですよね。
keiji:俺、accessが好きだって人に初めて出会ったかもしれないです。中学生くらいの頃からaccessを聴き始めたんだけど、男の2人組だと「B’zでしょ!」っていうのが圧倒的で。B’zも格好いいし好きやけど、俺はaccessの方が音楽的にすごい好きで。ライブも行ったことがあるし、今だにツアーの移動中とかにaccessを聴きますね。だからまあ、趣味の曲は作らなくて、バンドに必要なんじゃないかなって思ったのを作ってメンバーに投げてますね。
NIKA:また、難解なんですよ。歌詞を乗せるのがすごく大変なんですよ、keiji曲は。
keiji:ボーカル・チームからは、よくクレームがきますね(笑)。
結良:何でですか?
NIKA:音符が細かく詰まってて、言い方を悪くそのまま言うと、歌詞を乗せづらいんですよ。1回、何でもいいから歌詞を乗せてメロディを考えてくれって思うんですよね(笑)。
keiji:逆に、楽器陣あるあるか分からないですけど、歌詞が分からないんですよね。さっき言ってた繋がりとかも。極端な話、1つの文があったとして、それがAメロに収まるんじゃなくて、Bメロの頭にきてもいいやんって思っちゃう。宇多田ヒカルさんとか、そういう感じが多かったりするし、あんまり気にしないというか。
結良:別にね、Aメロを1行で済ませなくてもいいじゃんって感じですよね(笑)。
景夕:うちらもやるんですよ、それ。ただ、最終手段なんですよね。
NIKA:収まりきらなくてって感じでですよね。分かります。
景夕:そう。で、そこの最後の言葉をAメロでもBメロでも、どっちでも取れるような形に置いていくんですよ。Aメロの最後に付いてる言葉なのかな、Bメロの最初の言葉なのかなっていうのが、どっちでも取れる形にするんですけど。結良さんもメロディを詰めるのが結構多くて、音符の音だけ聴いて、これを言葉にする時って結構な長文だなって。自分たちで作ってるとあんまり分かんないんですけど、人の曲を聴いた時に途中で言葉が途切れてると、結構気になるというか。例えば、「今日は朝からおふ」「ろの〜」とか。
keiji:それがあんまり気にならないんですよね。気になります?
結良:今の例えだったら、気になります(笑)。
一同:(笑)
景夕:メロディのタイプにもよるんですけど。
keiji:確かにバラードとかだったら、気になるかもしれないですね。
結良:何かその辺が作詞と作曲者の分からないあるあるがあると思うんですけど、詰めてる音符を別に全部言葉でいかなくていいっていうイメージがあって。8分音符で作ってると何か物足りない気がして。
景夕:やっぱそうだったの(笑)。
結良:そう。
一同:(笑)
景夕:何となくは感じてはいたけど(笑)。
結良:8分音符でMIDIで聴くと、何かこれ絶対物足りないよなって思われたら選曲会で漏れ易いなって考えると。
keiji:そういう裏事情もありますよね(笑)。聴こえがいいみたいな。
結良:だから付ける言葉によっては、そこがスラーとかで伸びちゃっても構わないんですよね。
景夕:結良さんの曲って、すごい切羽詰まってる感じがする(笑)。
一同:(笑)
景夕:でもこんだけやってるから何となくは分かってて、その部分を無視して、本当だったら歌詞を4つメロディがあるのを2つにしちゃっても、特に文句は言ってこないから(笑)。
結良:そう、別に何も。
NIKA:そうなんですね。keijiさんは、それを結構気にするんですよ。
keiji:割と気にする方かもしれないですね。
結良:僕は、作曲の段階で拘りがあるところは、ギターのフレーズとかドラムのパターンとか、はっきり作るんですよ。「これがなきゃ、この曲が成立しないよな」みたいな感じで作るんですね。ただそうじゃない場所に関しては、ベースだったらルートしか作らないし、ギターも単純なバッキングだけだし。バンドだし、各パートの人にアレンジして欲しいんですよ。僕の出ないものを出して欲しいから。だから編曲ではKraって表記になるんですけど。そこでその人の色を出してもらいたいなって。メロディに関しても、浮かんだ言葉とか、こっちの方がメロディが盛り上がるからとか、ボーカリストとしての経験があるから、そこを僕は強制はしないんですよ。タイゾ(Kraのギター)はカシっと決めてくるんですけど、僕は各パートに対しての経験がそこまでないので、むしろ各パートの経験に任せてこうした方がいいっていうのはどんどん入れてもらって。
NIKA:keijiさんはタイプとしては、タイゾさんタイプなのかもしれないです。
keiji:いやでも、結良くんタイプのような気がするけど。ここはこうして欲しいっていうのは、ちゃんとそれぞれのパートに伝えるけど、他はお好きにっていう感じの基本スタンスで、結構みんな変えてくるけどね。Sさんだけは、そのまんまみたいな感じで叩いてくるけど、別に俺的には変えてもいいよって思うけど。ミックスの前からずっと一緒やし、ドラムはSさんとしか高校生の頃からやってないくらいやからね。
結良:仮にkeijiさんが、すごい不可能なドラムのフィルを入れたら?
keiji:何とか頑張ってやってきますよ(笑)。
一同:(笑)
keiji:昔、何も分かってなかった頃は、「手が何本いるねん」みたいなフレーズとかあったけど、曲を長いこと作ってきたら分かるから、そういうフレーズは省くようになったし。昔はそういうのも入れてたけど、それも何とかやろうとしてて(笑)。Sさんからしたら、ドラマーの発想にはないフィルだったりフレーズで面白いからそのままやる、みたいな感じで。
景夕:その辺はのってぃとはちょっと違いますね。
keiji:どういう感じなんですか?
景夕:のってぃは、「ここは、こういう感じやろ」って、のってぃフレーズになる(笑)。
一同:(笑)
keiji:そういうそれぞれのスキルで変化があるのも面白いし、それがバンドなんやと思うから、それもいいとは思うんですけどね。
景夕:そうですね!
一同:(笑)
keiji:それが作曲者の意図してるとこじゃないとこやったら、直してってなるやろうけど。
結良:僕としては、ギターとベースのフレーズにドラムが合ってれば、別に全然。アクセントさえ合えば、何にも問題ないから。1人だけシンコペ(シンコペーション)してるとか、アクセントが違うと、それはちょっと違うし。ギターとベースのフレーズにドラムは同じアクセントでくるじゃないですか。そこはやっぱり揃わないと、聴いてる側がどっちでノればいいんだって思っちゃうからね。