「最終兵器になりたい」ーーーー突如マイクを握り、春ねむりとして活動を開始してから1年。早くもセカンドアルバム『アトム・ハート・マザー』を完成させた。彼女の特徴ともいえるヒリヒリと胸を締め付ける歌声は音楽プロデューサー蔦谷好位置や亀田誠治から声オバケと証される。これが新世代のJ-POP、こころはロックンロール。話題の絶えないポエトリーラッパー春ねむりはどういう人物なのか...これからたくさんの人を惹きつけるであろう柔らかくも鋭いその独特な人柄が伝わるインタビュー。[interview:須田舞未(LOFT9 Shibuya)/photograph:セトケンタ]
歌う最終兵器「春ねむり」です。
──Rooftop初登場です。よろしくお願いします。まず、なんてお呼びしたらいいですか?
春:苗字は春で名前がねむりなのでわたしは”ねむりちゃん”って呼んでほしいんですけど、”春さん”って呼ばれることが多いです(笑)。みんなあだ名があるのに自分は苗字で呼ばれていた高校時代を思い出します(笑)。
──これを機にねむりちゃんで浸透させましょう!では自己紹介お願いします。
春:歌う最終兵器「春ねむり」です。仕事は作詞、作曲、ロックンロールです。新しいJ-POPになりたいなと思って曲を作っています。
──いろんなジャンルの方と共演、イベント出演していますよね?
春:どこでもいけるけどどこでもアウェイというか、ちょっと浮きます。楽器持ってないし、見た目がHIPHOP!って感じじゃないし、踊らないしチェキ撮らないし(笑)。でもどこでもライブできるのはいいところだなって思います。現場によって文脈や常識が違っていておもしろいです。
──吸収できる部分がたくさんありそうですよね。お客さんはどういうジャンルが好きな方が多いんですか?
春:わりとバラバラなんですけど、元々ハードコアが好きなアイドルオタクが多いかもしれないです。あと、大森靖子さんが好きなひとも多い。実際のところどうかわからないですけど楽曲派って言ってるひとが多い気がします(笑)。
──ファンの方の愛称はあるんですか?
春:わたしはずっと”ねむらー”って言ってるんですけど、これもあまり浸透してない(笑)。
──じゃあこれもこれを機に浸透させましょう!
春:させたいです(笑)。
──様々なところで評価されていますがその中で独特な歌声を「声オバケ」って言われていると思うんですけど、話す声自体も独特ですよね。自分の声、好きですか?
春:あんまり好きじゃなくて…変な声だなって思いながら20年くらい過ごしてきたんですけど、結構そういう風に言ってくれるひとがいて「よかったなあ~」って思います(笑)。今好きかどうかっていわれると好きではないけど…トントンかな~。
──元々バンドをやられていて歌を歌おうと思ったけれど歌が下手だったからラップをやってみたっていう(笑)なんかその辺にもつながるというか、マイナスなところから始まっているというか。
春:言われてみたら全部そうかもしれない(笑)。トラックを作るようになったきっかけもバンド始める時に2人組だったのでドラムとベースいなくて、友達いないから無理だよねってなって打ち込みでやってみよう!って。
──それが今では強みになっていますよね。
春:がんばったらいいことある。
──すごくいいこと言いましたね。
春:やだ、なんかすごい単純なひとに思われちゃう(笑)。
──普段からお話していても全然そのマイナスな要素を感じさせないです。
春:高校生の時は初対面のひとに対して喋れない、声が出ない…みたいな感じだったので。音楽をやることによってちょっとずつ改善していってる感じはあります。それでもやや挙動不審な感じはあると思うんですけど。自分で歌詞を書くようになってからトラックも歌も全部自分でしかないから、それが褒められて少しずつ肯定的な気持ちになってきました。
100%誠実な思いで書いて100%誠実な思いで歌ったら本当のことになる。
──今作『アトム・ハート・マザー』聴かせていただいて「死」が多く出てきた前作『さよなら、ユースフォビア』とは真逆というか、今回は「いのち」がテーマになっています。どのように制作されたのですか?
春:次はどうしようかなと思っていたとき、すでにあったトラックが刺激の強い音色やビートの目立つ明るめの曲が多かったので、サウンド的にも歌詞的にも「一人の女の子が閉じこもって暗くてなんか言ってる」ではなくて、「訴えかけてきている」というのがもう少しわかりやすくいろんなひとに伝わるようにしようと思っていました。3曲目に収録されている「ぼくは最終兵器」という曲がそのアルバムの中で最初にできていて、「最終兵器になりたい!」と思って作って歌っていたらあるライブでファンの女の子が「ねむりさんはわたしの最終兵器です。」ってその子が泣き出しちゃって、その光景が尊すぎてわたしも泣くという出来事があって。最終兵器になるためにどうしたらいいかなと考えて曲を作っていたら、その出来事があって「このために曲を書いていたんだ!」ってわかった。100%誠実な思いで書いて100%誠実な思いで歌ったら本当のことになるんだなって思って、じゃあ「生きていこう」という思いを全部100%で書こうと思ったらこの感じになりました。
──ここを聴いてほしい、注目してほしいというポイントはありますか?
春:前作はすでに曲が作ってあってライブしてという感じだったんですが、今作は結構な回数いろんなところでライブをして録音したので「これがわたしだ」とわかって歌っているところですかね。そこが前作とは決定的に違います。
──前作を聴いているひとが今作を聴いたらより「春ねむりっぽい」って思うかもしれないですね。
春:ライブを観てCDを買ってくれるひとが多いので、「ライブと印象が違う。」って言われることが結構あります。今作も音源は綺麗にはなってますけど、でも今作は「ライブで聴いたやつだ」ってなってくれるんじゃないかなって思います。
マネ:「ライブの方がいい」って言われるもんね。
春:前作は歌うってどうやってやるのか知らないまま録音したので…(笑)今回ミックスもちゃんとやってもらったので圧倒的に音の迫力が違う。ライブを感じれると思います。