蟹工船ぐらい難航した
-まずは9枚目のアルバム-発売決定おめでとうございます。
一同:ありがとうございます。
-前作『DOOR』から約1年、昨年12月にはアコースティックアルバム『Stroll』も出してかなり積極的に活動してますね。今回の資料を見ると「血反吐を吐く思いで作りました」とありますが、アルバム制作は難航したんですか?
野村太一(Vo,Key以降、太一):難航しましたね。まぁ、蟹工船ぐらい…波に呑まれて誰かひとり帰ってこない、みたいな。
-蟹工船(笑)。それは曲作りや作詞をしていく上でということですか?
太一:リキッドの前に何かしらやっておかないと、と思って。レコーディングのスケジュールを結構タイトにしたんです。俺らは事務所さんもレーベルさんも、そういうアドバイスをしてくれる人がいないので、「アルバムを出す」みたいなアクションを起こして、何かしらファンへライブに来る意味や楽しみを作れたらいいなと-なるほど。メンバーの皆さんどうですか。今回のアルバムは自信作だと自負していますか?
野村良平(Gt以降、良平):そうですね、最初はどうなることかと思いましたが。今は大好きなアルバムですね。「こいつら売れる気あるのか?」ぐらい時代錯誤な曲もあるし、インドメタシンみたいな体にスーっと入るキャッチーな曲もあるし、いろんな意味でロックしてると思います。
-個人的には「CB750F」が好きでした。あれはバイクのことを書いてますよね?
太一:そうです、今もすぐそこに停めてます。(笑)
田中宏樹(Dr 以降、田中):珍しく明るい曲ですね。
良平:今までで一番マニアックなアルバムになったと思いますね。
-「ハイボール」や「ライブハウスポルカ」はライブハウス、ひいてはバンドマンのことを歌っていますよね。何か思うことがあるんですか?
太一:最近のライブハウスはキレイだなあって思います(笑)もちろん良いことだと思うんですが。昔のライブハウスの思い出を巡らせて作ったのが「ハイボール」ですね。食って食われての世界じゃないですか、正直。そんな歌です。今そういうハコとはもちろんお付き合いないんですけど。今すごい酷い言い方したんですけど、そういうハコはいまだに、いろんな所にあるんだろうなあと思うと…なくなればいいのにな、ってことですね。
-各々、このアルバムの中で好きな曲とかありますか?
太一:ちょっと曲見せてもらっていいですか。
良平:まだ曲名すら馴染んでないですからね(笑)。どの曲がどれだっけ、みたいな。
太一:どれもレベル同じですかね。
-まだライブではやってないんですか?
太一:やってないですね。CDジャケットの写真と中身のイメージは全然違うと思います。
田中:本当ですか?
太一:一緒?
田中:僕は割とイメージ近いですね。
太一:すいません。
田中:いえいえ(笑)。
植田大輔(Ba以降、植田):「ハイボール」は弾いてて楽しかったです。
田中:僕は「ロックが流れる」が好きですね。
良平:僕は全部好きです!(笑) まだ身体に馴染ませている途中ですけどね。早く馴染ませないと。
-今回のアルバムは、全体を通してどういうコンセプトで作ったんでしょう? 以前とは違う形でやっていくぞ! という感じなのか、それともさっき話に出たように制作の時間が少なかったからいつも通り淡々とレコーディングなりをしていたのか。
良平:「こういうアルバムにしよう」とか「こういう曲を作ろう」とか、そういう気持ちは特になかったですね。いつも通り体から滲み出た感じです。
-よりいつも通り、いい意味で作りこんでない曲が多いというか。
良平:全部出し切って8曲というわけじゃなくて、他にも曲はあったんですけどね。
太一:練習しながら「新しい曲をやろうか」っていうときにメンバーでジャムりながら作っていきました。大まかに俺や良平が作って、あとは皆で作っていった感じですね。
-自分はベーシストなので聞きたいんですが、植田さんは今回のレコーディング、ウッドベースとエレキはどのくらいの割合でした?
植田:ウッドベースが多いかな? エレキが3曲、ウッドが5曲かな。
太一:じゃウッドベース多めのアルバムですっていう推しで行きましょう。
田中:推せますかそれ(笑)。
植田:ウッドを推してるわけではないですからね。
良平:いい意味で、古臭い感じになったんじゃないですかね。
-今回ウッドベースが多くなったのはなぜですか?
植田:僕は基本的には全曲、一旦ウッドベースでやってみるんです。それでどうしてもエレキの方がいいと思ったら、しょうがないなとエレキでやります。
-今までの曲だと「ライブハウス」とかもエレキですかね。
植田:レコーディングはエレキで弾きましたね。「脱線」も「言葉にならない」もそうです。やっぱり曲がエレキを求めてる感じだったら、エレキにします。
-演奏で新しい試みはありましたか? ドラムやギターのパターンというか。
田中:ドラムが一番好きなのは「CB750F」ですね。今まで通りというか、シンプルなドラムパターンなんですけど、細かいところは凝ったというかチャレンジした気持ちはありますね。
-ギターはどうですか?
良平:「ライブハウスポルカ」は右手でとれちゃう、とかね。ギターはどれもいいんじゃないですかね(笑)。難しいんですよね、前に出すぎてもアレだし。空気を見ながら、古臭いことをいっぱいやったかな。
-古臭さがテーマだったんですか?
良平:テーマと言うか、気付いたらそうなってました。
-どういうギターが古臭いんでしょう?
良平:漠然と、イメージなんですけど(笑)。
-90年代というか?
太一:もっとさかのぼりますね。
良平:「一歩ずつ」とかめちゃくちゃじゃないですかね。
田中:古臭いというかルーツっぽいよね。
良平:「一歩ずつ」はJanis Joplinをイメージしたり、「ロックが流れる」は90年代のUKっぽいの弾こうとか。僕はカントリーが好きなので、「CB750F」は世間の人たちがやらないような曲だったりしますね。 「遠い栄光」なんかは「どう考えたってみんなこれ好きだろ」って気持ちでした。
-共通して好きなミュージシャンっているんですか?
植田:みんな好きってのはいないんじゃないですか。
太一:俺らの作品はいつもチャンポンで、ジャンルが定まってないじゃないですか。当然、好みが一致するはずもなく。
-ライブでの推し曲は何ですか? これはライブで盛り上がるだろうという。
太一:「ライブハウスポルカ」ですかね。
-「CB750F」は?
太一:CBは普通ですかね(笑)。良い曲だと思いますけど。
-今度のリキッドルームでのワンマンはこのアルバムを出す前から決めていたんですか?
太一:そうですね。
-リキッドに決めた理由はありますか?
良平:単純にやってみたい、ということで。ひとつの目標だったんで。全力出して集客もして、『TRIANGLE』も初お披露目と行けたらいいな、という感じですね。
-今までだとRENYが一番大きいハコでしたか。
良平:RENYはなんだっけ、何かのツアーだったっけ。
田中:『Door』のリリースファイナルですよ。
-『TRIANGLE』のツアーの本数はどんな予定ですか?
田中:まだ具体的ではないですが、いつも通り、主要都市と言いますか。
良平:前回は福岡と岐阜が入ったから、少し多かったですね。
-もちろんインストアライブも?
良平:そうですね、5月某日・某所から回っていく予定なのでHP等を随時チェックしていただければ。
-沖縄は行かないんですか?
良平:毎年呼んでもらってるんですけど今年はどうなんですかね(笑)。あ、台湾行くんですよ。初の海外公演を7月に控えてます。
-いいですね。大きな会場なんですか?
田中:もともと大学校舎の場所を使って、野外と屋内と…。10か所ぐらいでやるフェスですかね。
-メインで?
良平:まだ会場は決まってないですけど、うちとKING BROTHESが出演することは決まってます。
-リキッドのツアーファイナルに向けて、何か意気込みはありますか?
太一:俺は不安しかないです。…それまでに集客をどう伸ばせるかということですね。
良平:集大成ですからね。ぜひ遊びに来てください、という気持ちです。
-前回のインタビューで自分たちでバンドを運営するメリットデメリットを訊いて、太一さんが圧倒的なデメリットは「広報力」と仰っていたんですが、今後Yellow Studsにとってメジャーデビューという選択肢はありますか?
太一:超ありますね。俺の中では最近考えが変わって…メジャーだとどうやってやってるのか、ノウハウが見たいです。
植田:僕も「メジャー行きたくない」っていう強い信念があるわけではないので。
良平:そうですね。DIYって言ってますけど、好き好んでやってるわけじゃなし、やらざるを得なくてやってきた状況だったんで。声がかかるんであれば、という気持ちですね。
-メジャー行ってガンガンやっていきたいと。
良平:メジャーってどうなんですかね。
-僕もわからないですけど(笑)。
良平:入ってみないとわからないですよね。何を言われるか。