sleepy.ab(スリーピー)、アコースティックユニットsleepy.ac、そのsleepy.ab&acのギタリスト山内憲介とのギターデュオ・成山内、そして自身の弾き語りのソロ...。このロフトでも、これまでに様々な形態で出演してきている成山剛。抽象的で雰囲気溢れる、浮遊感や沈殿感を多擁した独特の音楽性につい耳を奪われがちだが、その本質は極めて美しいメロディと、心地良い歌声を持ったシンガーソングライターだ。
今年3月には待望の1stソロアルバム『novelette』をリリースした成山。そんな彼がソロにて9月25日の『DREAM MATCH 2016』にも出演する。
アコースティックギターを基調に、エフェクティブに楽曲にパースペクティブさをもたらせていく彼のステージは、その根本にあるメロディと歌と共に、きっとあなたをここではないどこかへと誘ってくれることだろう。
そんな成山剛を迎えての『DREAM MATCH 2016』の主催者である、新宿ロフトのスタッフ・樋口寛子との今回の対談。sleepy.abとして、既に15年前からロフトのステージには馴染のある成山だが、意外にも樋口と親密になったのは、ここ数年だとか。まずはその辺りから入り、成山の音楽性の魅力を浮き彫りにしていきたい。
━お二人の出会いが、ここ数年だったということを聞き、今の懇意具合からは少々意外でした。
樋口 :ライブの現場等では、昔からお会いしたりはしていたのですが、距離が縮まったのはここ数年のことでした。
成山 : 2~3年ぐらい前からですかね。
樋口 :そうですね。元々彼の作る音楽が好きだったので、お知り合いになれたのを機に熱心にロフト出演へのアプローチをしてきました。
━何がきっかけでお二人はお知り合いに?
樋口 :新宿ロフトの店長からの紹介でした。店長からsleepy.abのCDを勧められたのを覚えています。改めて聴いたらとても良かったんです。で、そこからどっぷりハマりました。
成山 :まだその頃はソロはやっていなく、主にsleepy.abとして、ロフトや樋口さんのブッキングするライブに出させてもらうようになったんです。
樋口 :sleepy.abから始まって、ユニットの成山内、そしてソロと、これまで本当に色々とお世話になっています。
成山 :最初に樋口さんに声を掛けてもらった時の嬉しさは、今でも覚えています。と言うのも、ちょうどその頃って、自分たちも独立をして、今後は自分たちだけでやらなくてはならない時期だったんです。そんなこともあり、「これからどうしよう…」との不安を抱えていた時で。そんな中、あの時の出演依頼には、その後の活動へと一旦も止まることなく進まざるをえない状況を作り出してくれたことも含め、かなり背中を押された感がありました。
━成山さん的にはロフトや樋口さんに何か思い入れ等は?
成山 :それこそsleepy.abが東京で初めてライブを演ったのが新宿ロフトでした。それこそ15年ぐらい前になるのですが、テレビの音楽番組の撮影があって。その会場が新宿ロフトで。もちろんロフトのことは、スピッツ等で知っていたし。「おおっ、俺たちもあのロフトでライブが出来るんだ!!」って感激しましたね。北海道から来たのでなおさらでした。
━その際のステージからの光景を覚えていますか?
成山 :景色的には覚えていないのですが、とてもしっかりとしたライブハウスという印象でした。スタッフの方もしっかりしていましたし、とても緊張感がありました。ライブで想い出深いのは、僕もPolarisとの共演ですね。
樋口 :Polarisの出演が決定し、そのPolaris側から、「対バンは樋口さんにお任せします」とおっしゃって頂いた事もあり、sleepy.abに声を掛けさせて頂きました。お陰様でライブ自体もお互いのお客さんに響いていたようで、嬉しかったです。sleepy.abにしろ、成山さんソロにしろ、自分の組み合わせるブッキングに関しては、結構どのアーティストともハマりがいいんです。
成山 : それ、他でもよく言われます。実はsleepy.abも、ああいった音楽性ですが、色々なアーティストと対バンしているんです。わりとスポッと入っちゃうんでしょうかね。地元の北海道では、イナズマ戦隊やBAZRAとよく演ってたり、企画を一緒にやったりしてましたから。
━バランスがいいんでしょうね。どのタイプのアーティストさんに挟まれても中和剤みたいな役割を果たしたり。
成山 :中には、ポカーンと僕たちを観ている人たちもいますが(笑)。予想だにしない出会いもあったりして、それも楽しみでもあるんです。
━今回の『DREAM MATCH 2016』への意気込みを聞かせて下さい。
成山 :この記念すべきイベントに参加できることを非常に光栄に思っています。出演する方々の凄さもですが、普段よく共演させてもらっている方々とも、また一緒に出来るんで非常に楽しみです。
樋口 :成山さんにはいつものようにそのまま演って欲しいです。初めて観る方も多いと思うので、そういった方々にどのような響き方をするのか、それが今から楽しみです。
成山 :もう、「ザ・樋口さんフェス」ですからね、これは。まさに主催者の顔が浮かんでくるフェスです。
━今後のお互いに望むものはありますか?
成山 : sleepy.ab、成山内、そしてソロと、毎度色々と声を掛けていただいて凄く嬉しいんです。この前もロフトで、ソロで9mm(9mm Parabellum Bullet)の(菅原)卓郎君と共演させてもらって。あれも面白かったし。
樋口 :あれもハマりましたね。お互いのバンドとしての音楽性は正反対なのに、いざアコースティックで弾き語りだと妙にマッチしていました。お互いの本質には、やはり歌とメロディがあることを改めて認識させてもらいました。
━今後の成山さんの活動は?
成山 : 今年の3月に初めてのソロアルバム(『novelette』)を出して、次はギターの山内のソロ作品のリリースが控えています。その後、いよいよバンドとしてsleppy.abの作品も出す予定で。冬の間には、そのsleepy.abの作品を出したいなと思ってはいるので、、、と言うか、既に「出します!」って言っちゃっいるので、出さなくちゃなと(笑)。
━やはり今度のsleepy.abの作品は、そのお互いのソロ活動からのフィードバックも何かしらありそうですね。
成山 : 多分にあると思います。逆に、それぞれの活動もそこに帰着させたいところもありましたからね。独立後、独自に色々なことをやりたい、色々なところに行きたいというのも、実は自分にしても、ソロ作品で、先ほど称してもらった通り、sleepy.abのメロディ的部分を一度はっきりとさせて、もう一つ山内ならではのサウンドの魅力も、それぞれで伝えたかったところもありますからね。で、それらをそれぞれ明示した後にsleepy.abを出したら、"ああ、なるほど!"と、自分たちの音楽性のメカニズムや成り立ちが、更に良く理解してもらえるんじゃないかな、との思いもあってのことなんです。「ソロとして!!」といった色気づいた感じでの活動では、一切ありませんから(笑)。
━最後に今年40周年を迎える新宿ロフトにメッセージをお願いします。
成山 :40周年おめでとうございます!樋口さんにもロフトにも、これまで以上に深くかかわっていきたいと思っているので、よろしくお願いいたします。これからも、この関係が長く続いていってくれたら嬉しいです。